注:かなり昔に作ったもので、かなりいい加減に作っているので、固有名詞などかなりいい加減なカタカナ表記になっているのでご注意ください・・・。固有名詞は一応は古アイスランド語のテキストから拾い出しはしていますが、カタカナ表記は・・・。信じないように・・・。

ハラルド美髪王の息子のビョルンの息子のグズレズの息子「グレンランド人の」ハラルドはアースタと結婚をした。しかし彼は彼女が妊娠している最中に、乳きょうだいの膨大な財産をもつ未亡人シグリーズに求婚しにスウェーデンへと妻を捨てて向かった。彼女はスウェーデンのエリク常勝王に嫁ぎ、「強い」シグリーズの名を持つ。サガでは特徴あるキャラクターとして登場します。しかしこの時、ハラルドは彼女にロシアからいいよってきたヴィッサガルドと共に宴会場で酔わされ館ごと燃やされて殺されてしまう。しかし彼女は後にオーラヴ・トリュグヴァッソンとの婚約の時に「異教徒のばあさん」とののしられて婚約が解消されてしまうという逸話の持ち主。ちなみに彼女とエリク常勝王との子供はオーラヴといい「ユングヴァルのサガ」にも登場している。
アースタは夫に捨てられ、涙涙に激怒しながら父のいるオプランドへ行き、そこで息子を産みオーラヴと名づける。そしてハラルドの死後、彼女はリンゲリーク王の「雌豚の」シグルズと結婚する。なぜこの王が「雌豚」といわれているかというと、不動産にこだわり、畑を耕したりと自分の土地のめんどうをせっせせっせと見ていたので、この当時の勇敢なヴァイキングたちにはどうやら雄雄しく見られたかったようで、こんなあだ名を付けられたようです。そして私が個人的に大好きな王「ハラルド苛烈王」のおとっちゃんでございます。シグルズ王の家系も見事なもので、ハラルド美髪王の息子の「巨人の」シグルズの息子ハールヴダンの息子である。もちろんこの当時、王であったオーラヴ・トリュグヴァッソンもハラルド美髪王の家系といわれています。そしてオーラヴが3歳の時に、オーラヴ・トリュグヴァッソンがリンゲリークに行き、そこでシグルズ王とアースタを改宗させ、オーラヴに洗礼を施したといわれています。違う説ではオーラヴはノルマンディで洗礼をしたという話もあるみたいです。
さてやっとここいらあたりから主人公であるオーラヴに話を向けると、彼は王のサガでは珍しく「長身の美男子」ではない王でございます。サガを読んでいると、本当にたくさんの美男子が出てきます。ノルウェイとアイスランドには美男子以外いないのかと思うほどに数多くでてきます。ちなみに上記のオーラヴ・トリュグヴァッソンもハラルド苛烈王も美男子であったりします。しかし不細工、いや美男子でなかった彼は背の高さは普通であったものの、幼くして聡明で気高い精神の持ち主であったようです。
ある日、彼の義理の父である「雌豚の」シグルズがオーラヴに馬小屋に行き、父のために馬に鞍をつけて用意するように命じた。これに対してオーラヴは山羊小屋に行き、そこで一番大きな山羊に鞍をつけて父に差し出した。それを見てシグルズ王は、
「お前はわしよりも誇り高いのだな。」と言った。
オーラヴが畑仕事に精を出す父をどう思っていたかというのが面白くかかれている場面である。
そして彼は成長したがやはり背の高さは中ぐらいでずんぐりとしており、髪の色は明るく、大顔の赤ら顔であった。目は鋭く激怒した時には誰もが震え上がったというほどである。全ての競技に長けており、弓が上手く、泳ぎも上手く、手先も器用で、鍛冶も得意であった。そして彼は「ディグリ」というあだなが付けられた。この単語はよく本では「肥満王」や「デブ」と訳されているんですが、こは英語のBIGに相当し、「がっしりしている」「大きい」「偉そう」「高慢」「誇りある」というような意味も内包しており、「デブ」の一言で片付けるのはかなり悲しいものがあるので私は「大きな」を使っていきたいと思っております。そして彼は人の率いるリーダーになることを常に欲し、それは彼の出生のなせる技だといわれていた。
そしてオーラヴが12歳の時に初めて軍船に乗り込んだのであった。この当時は領土を持っていなくても王族であればヴァイキングの襲撃に行く時には王の称号を冠するという風習のもと彼は軍船と家来を手に入れた時に「オーラヴ王」を名乗ったのであった。そして母アースタはオーラヴの養父であるヴァイキング行きの経験豊かなラニをオーラヴの従者としたのであった。そしてオーラヴが王ではあったが、実際には舵取り席にはラニが座ったため、オーラヴは「舵の少年」と呼ばれたのであった。彼らは岸に沿って東に船を進めてデンマークへと向かったのであった。そしてこの後、秋に彼の父の「グレンランドの」ハラルドを殺害したスウェーデン人に報いるために彼はスウェーデンに向かい、スウェーデンを略奪したのであった。そしてその時にソータの島々で初戦を行ったのであった。オーラヴの船は敵の船より大きかったのであったが、兵の数では劣っていたのであった。そして彼は岩礁の間に停泊し、一方、敵のヴァイキングたちは停泊が困難であった。そしてこの当時の海戦法にならって、フックで敵の船を捉えそれから船を引き寄せ、そして攻撃したのであった。敵は逃走し、たくさんの敵が倒されたのであった。
その後、どんどんとスウェーデン内を航行し、メーラレン湖に向かい、その両岸を略奪したのであった。そしてガムラ・シグチュナ(シグチュナはスウェーデンの重要な場所)に停泊したのであった。そしてこのことがスウェーデン王のオーラヴの耳に入り、彼は侵入者を封鎖撃破するために鎖をその場所へと運ばせたのであった。そして鎖で封鎖し、兵を置き、監視させたのであった。「大きな」オーラヴは兵が少なく、正面きっても仕方が無いと判断したのか、場所を移動し、西に砦南に敵陣という位置で静かに停泊していたのであった。そしてこの後にスウェーデン王オーラヴが大軍と大艦隊でやってきたので、「大きな」オーラヴは戦っても仕方ないとばかりに、海へ通じる水路を掘る計画を立てたのであった。激しい雨が降り、そのあたりの降った雨の水がそこに流れる仕組みになってたので水がどっと押し寄せ、強い風が吹いたので帆をあげて漕ぎ出して海に出て無事に逃げたのであった。違う説ではスウェーデン人が気づき、掘っている水路へと向かったところ、土手が崩れてたくさんのスウェーデン人がそこでおぼれてしまったという説もあるようだが、スウェーデン人たちがその話はうそであると否定している。そしてこの後に「大きな」オーラヴはゴトランドへと向かい略奪しようとしたが、そこは金持ちゴトランド、お金で平和を買い取ったのであった。オーラヴにいわゆる「税」を支払ったのであった。この冬は彼はゴトランドに滞在したのであった。オーラヴの家来のオッタルはゴトランド人を臆病者とあざける詩を作っている。
そしてこの後にエイシスラに向かい、そこも略奪した。ここにいた豪農達は「税を差し出す」と言っていたのだが、実際には差し出さず、会合に豪農達は完全武装でやってきて、結局、話合いの場所は戦いの場となり、豪農達が負けて倒されたのであった。
この後にフィンランドに向かい、略奪したのだが、そこに住む住人達が財産を持って森に逃げてしまったので、収穫は少なく、彼らは森へとその後を追ったのだが、森で待ち伏せしていた住人達が一斉に弓を射ったのであった。王はこりゃたまらんとばかりに家来達に盾で身を守るように命じ、攻撃したのだが、森がフィン人達を守ったのであった。そしてオーラヴの家来達はたくさん命を落とし、怪我をした。なんとか夕方に船までたどりついたのであるが、フィン人達は魔法に長けた人たちであったので、その夜に魔法で悪天候と嵐を作り出したのであった。反魂の術さえ使うフィン人たちには天候を変えることなどお茶の子さいさいであったのであろう。しかしこの悪天候の中、オーラヴは碇を上げ、帆を上げ、風に向かったのであった。オーラヴの幸運がフィン人の魔法に勝った瞬間であった。そして彼は海に出たのでた。しかしフィン人達もあきらめず、水上を行くオーラヴの船を陸上で追ったのだが、フィン人達の努力も空しく彼らは海に出たのであった。(01.04.18)
その後にオーラヴ王はデンマークに船で向かい、そこでヤールのシグヴァルディの兄弟の「背高」トルケルと会い、彼は仲間になった。その後にユトランドに沿ってヴァイキングの仲間と船をどんどんと増やした。そしてこの後に4度目の戦を行い沢山の戦利品を手に入れた。その後に南のフリースランドに向かったが、悪天候であったので現在のポーランドの西海岸に上陸したところ、その国の者達の騎士がやってきて戦となった。そしてこの5度目の戦も勝利を収めた。
その後にイングランドに向かった。デンマーク王スヴェン二又髭王がイングランドを征服したのだが、突然にベッドで急死したのであった。フランスに逃げていたエセルレッド王はすぐにイングランド戻った。そして彼は以前の彼の財産や領土を取り戻すために兵を集めたのであった。そしてこの徴兵にオーラヴ王はノルウェイ人を沢山ひきつれて加わったのであった。オーラヴ王は現在のロンドン近郊のテムズ川に停泊をした。そこにはデーン人はボルグ(城市)を守っていたのであった。彼らは対岸のサウスワークという市場のある町も占拠し、そこにはデーン人の大軍がいたのであった。エセルレッド王はそこを激しく攻撃したのだが、その周りに張り巡らされた堀などの防御策によって落とすことをなしえなかった。そのボルグとサウスワークの間には荷馬車がすれ違えるほど広い橋が架かっていた。その橋の上には楼と砦の要塞があったのであり、その橋の足はしっかりと川床に打ち込まれていたのであった。その橋はどうしても攻略することができなかったのであった。エセルレッドは単純に考えて正面切って無謀に突撃したからである。そしてどうやっても攻略できなかったので彼は仲間に助言を求めた。オーラヴ王は他の首領たちが協力するのであれば、この橋を攻略してみようと進言したのであった。
オーラヴ王はこの後に家の部材を取ってきたのであった。それは籐や柳といった曲げやすい部材で、それで敷物を作り、船に木枠を作り、その上に載せたのであった。それは非常にしっかしと作られていたので石などが投げ込まれても耐え得るほどのものであった。そして木枠の高さは敷物の下で十分に武器が振り回せるほど高いものであった。この装備で船々は橋に向かった。橋の上ではデーン人が両手でないと持ち上げられないほどの大きな石を投げつけてきた。そのためたくさんの船が損傷し、撤退した。しかしオーラヴとその家来達の乗った船は橋の足まで行き、そこに綱を巻いた。その後に下流に向かって全力で漕いだのであった。そしてその引っ張りに耐え切れず、橋の足は崩れ、橋はばらばらに崩れたのであった。(マザーグースの「ロンドン橋落ちた」の話はヴァイキングがロンドン橋を落としたことを言っているという説もあるみたいなんですが、マザーグースのHPを見たら、違うようなことも書いてありましたが・・・。)橋の上にいた敵は川に落ち、落ちなかった者はボルグやサウスワークに逃げ込んだ。その後にサウスワークは攻略され落とされ、そしてデーン人はボルグを守ることをあきらめて投降した。
オーラヴはその冬をエセルレッド王のもとで過ごし、ウルフケルが統治していたリングメール・ヒースで7度目の戦をウルフケルと行い勝利した。そしてこの領土は再びエセルレッドのものとなった。しかしまだ多くのシングメンとデーン人がたくさんの町を占拠し、たくさんの領土を保有していた。オーラヴはカンタベリーに向かい、そこを攻略するまでたくさんの市民を殺害した。これが8度目の戦であった。その後にオーラヴはイングランドの守備を任され、ニャー・モーダに上陸後そこでシングメンと9度目の戦を行い勝利した。こうして3年が過ぎた。
3度目の春にエセルレッドが崩御し、その息子のエドムンドとエドワードが王国を引きついた。そしてオーラヴは10度目の戦をすべく、南に向かいヴァイキングが占拠していた丘の上の城を落とした。そして11番目の戦い、それは西のアキテーヌの町の前でヴァイキングとのものであった。この後に12度目の戦、13度目の戦を行う。
この後にスペインに向かって略奪し、ジブラルタルを出て、そこからパレスチナに向かおうと風を待っていた。そして彼はここで夢を見た。
「己が国に戻れ。ノルウェイ王に永遠になるために。」と見知らぬ強そうな男がびびりながら彼に話し掛けたというビジョンを見たのであった。オーラヴはこれを「自らがノルウェイ王となり、自らの血筋が長くその地を支配する」と夢を理解したのであった。
しかし真っ直ぐ帰ればいいのに、フランスに行き、略奪、略奪、略奪、放火、放火、放火。夏・秋・冬・春・夏とそんなことで過ごしたのであった。この時、既にオーラヴ・トリュグヴァッソンが海中に消えてから13年が過ぎていた。この後の秋はノルマンディーに向かい、セーヌ川でおとなしく冬を過ごした。(01.04.23)
この頃ノルウェイでは前王のオーラヴ・トリュグヴァッソン王没後、前述の王と戦い勝利側についていたヤールのエリクがトロンヘイムの4つの州(部族区)を統治していたのであった。彼はオーラヴ・トリュグヴァッソン王の部下であった「太鼓腹振りの」エイナルを赦免しエイナルは平和を手に入れたのであった。エイナルはノルウェイで最も権力を有する者で、最高の射手であった。弓にはエピソードがあり、オーラヴ・トリュグヴァッソンの最終戦の時に弓で戦っていたところ、戦況はオーラヴ側に非常に不利になり、相手側の弓の名手に弓を打ち抜かれて弓が砕ける。その音を王が聞いて、
「なんだ今の大きな音は!」と訊ねたところ、エイナルは、
「ああ、王様の手からノルウェイが(逃げる音です)」と、うっかり答えてしまい、
「あほか、お前は!」と、しかられたという話がある。スキーは上手い、血統もよい、と、とにかく優秀な方です。
強大な土地を保有し莫大な財産を持つエルリング・スキャルグソンという者がおり、ヤールのエリクは彼にひがんでいた。しかし彼が皆から指示されていたので、彼とは戦わなかった。エルリングはオーラヴ・トリュグヴァッソンのように色々なスポーツに長け、強く、気前がよかった。エルリングは常に90名以上の自由民(武器が携帯できる身分)を抱えていて、ご近所さんのヤールが集まった時には200人以上の戦士がいたという話である。エルリングは在宅時には召使以外に(!)奴隷を30人おいていた。彼らは言いつけられた仕事の時間以外の時に、自分たちのために働くことが許されており、地所も与えていたというおっとこまえぶり。そして身代金を決めてその金額を払えば自由人になることを許したので、ほとんどの者が1〜2年で自由を手に入れることが出来、交易、農場経営など次のステップへ行くことができた。彼はその身代金で新しい奴隷を購入して、同じように数年で自由を与え、次の人生も与えたという、すっばらしいお方であったようです。
ヤールのエリクが12年間ノルウェイを統治していたところ、義兄弟であるデーン王のクヌートからお手紙がやってきた。それはイングランド遠征のお誘いであった。彼はその誘いに乗り、17歳の息子に後を託した。しかし息子が若かったので「太鼓腹振りの」エイナルをその摂政(?)として息子を任せた。エリクはクヌート王と共にイングランドで7戦して、ローマに行きたいな〜と思ったものの、イングランドで帰らぬ人となってしまった。クヌート王はエセルレッド崩御のその夏にイングランドに進軍、その後に女王エマと結婚。彼らの子供は、ハロルド、ハルデクヌート、グンヒルドである。クヌート王はエドムンド王と話をしてイングランドの半分を手に入れた。その後にエドムンド王はエドリック・ストレオナに殺害され、クヌート王はこりゃらっきーとばかりにエセルレッドの息子をイングランドから追い出してイングランドを手に入れた。
そんなこんなの時に、「大きな」オーラヴはのんきにノルマンディーにいた。そこへエセルレッドの息子達がイングランドから逃げてきた。
「もし、おぢさん(21才)がイングランドからデーン人を追い出したら、ノーサンブリアをあげる!(注・言ったのがエドワード告白王だったらこの時12歳)。」とのお誘いに乗ってしまう。
その秋にこそこそとオーラヴ王は養父のラニに金を持たせ、イングランドに行って仲間を集めるようにと命令し、彼はそれを遂行した。準備万端、春にオーラヴ王とエセルレッドの息子達はイングランドへ向けて船を出した。そして彼らがボルグを落としたところ、クヌートの家来達が軍隊を引き連れてやってきたが、デーン人に反感を持つイングランドの人々が集結し、それがえらくでっかい集団であったので、彼らはびびってしまって逃げってしまった。ここでオーラヴ王はお役目も終わっただろうと、彼らと別れヴァルランドには戻らずノーサンブリアに向けて北上し、その途中で略奪を行い沢山の金品を手に入れた。
オーラヴ王はロングシップを残し、2隻の小舟で220人の家来を引き連れて出帆した。運悪く嵐に遭ってしまうが、そこは聖オーラヴの幸運がラッキーてなことで万事上手くノルウェイに到着したのであった。オーラヴ王はノルウェイの中央あたりに到着し、彼らが上陸した島は「幸運」という名前が付けられた。
「いや〜これはラッキーな日だ。」とオーラヴはしみじみしたのであった。
そしてこの後に船でウルヴァスンドに向かい、ヤールのハーコンについて情報を得る。どうやらハーコンは1艘だけだったらしい。オーラヴは南に向かい入り江の両側に船を停泊させ、両船の間に綱を渡した。そこへのこのことハーコンが入り江に入ってきた。ヤールはうっかり小舟だったので「商船だろう〜」とのんきに航行していたところ、綱が竜骨の中央あたりにきた時に、巻き上げ機でおもいっきり綱を引き上げた。当然、船が持ち上がり、船首側が下に向き浸水、満水、転覆。オーラヴはヤールの家来達を殺害しつつ捕虜にした。ヤールのハーコンが王の船に連れてこられた。彼は髪も絹のように美しくふさふさしており、男前であった。とってもおしゃれな彼は額に黄金のフラズ帯を巻いていた。その男前ぶりにむっとしたオーラヴは、
「お前は男前と言われているが、お前の幸運も尽きたな〜」と、いやみたらたら。
「別にこのことは不幸なことではないわ。たまたま準備不足だっただけだ!次にはわれらに幸運がくるわ!」とヤール。
「それはどうかなぁ〜。お前は将来に勝利も敗北もできないようになるかもな〜。死んじゃったらどっしょうもないもんね〜」とオーラヴ。
「さっさとしろ!このデブ!」と業をを煮やしてしまうヤール。
「ん〜、ど〜しよっかな〜。もし、ここを無事に切り抜けたら、お前、どうする?」といぢわるオーラヴ。
「あんたの領土から出て行って、二度とあんたに刃を向けんよ!」
その言葉にオーラヴは納得し、彼に助命して行かせた。
そそくさとヤールはノルウェイから出て行ってイングランドに向かった。おじのクヌートに会いに行き、王の宮廷に身を寄せることになった。
(01.04.24)
<この時代のイングランドをぱらっと調べてみたら、スカンジナビア人がイングランドを侵略しまくっている時にエセルレッドが即位。その後オーラヴ・トリュグヴァッソンがイングランド攻撃。再度オーラヴはデンマーク王スヴェンと共にイングランド進攻。ノルマンディ公の妹のエマを後妻に迎え、1002年にデーン人の大殺害を行う。その中にスヴェンの妹がいたためスヴェンが報復を兼ねて進軍。1013年にエセルレッドはノルマンディに亡命。しかし次の年、スヴェン急死。この時、スヴェンの長男ハラルドがデンマーク王、クヌートがイングランド進攻の指導者。クヌートはエセルレッドに仕えた時期もあった「背高」トルケルを仲間にしてイングランド進攻。1016年エセルレッド急死、息子のエドモンド剛勇王が即位、クヌートと戦うが負け、クヌートがイングランドのテムズ川以北の王になる。しかしエドモンド死亡。息子エドワードは幼く、エセルレッドの双子のエドワード、アルフレッド12歳、エドモンドの弟エドウィも未成年。そのためクヌートが正式にイングランド王になる。クヌートはイングランドを4分割して、「背高」トルケルは東アングリア伯になる。
この後、幸運にもデンマーク王である兄のハラルドが1019年死亡。トルケルを送り込みデンマーク統治。1028年に息子のハルデクヌートをデンマーク王にする。この後、このサガの主人公のオーラヴ聖王撃破、北海大王になる。エドモンド剛勇王の弟のエドウィはすでに殺害され、エドモンド王の遺児のエドワードはハンガリー王廷に亡命。ノルマンディにエドワードとアルフレッドが亡命中。しかしクヌートは抜かりなく1017年にノルマンディ公の娘のエマを妻にしているため、ノルマンディにも影響力を及ぼす。と、とってもドラマチックです。イングランドの歴史はごちゃごちゃしている上に同じ名前ばっかりでかなりツライ・・・>
この後、オーラヴはノルウェイを進み、いたるところで豪農達と一緒にシングを行った。そして養父シグルズのもとへ行き、母アースタは室内で息子を歓迎した。
「んま〜ぁ、オーラヴちゃん、立派になって。あんたたちなにやってんの私のかわいいオーラヴちゃんをもてなす準備をなさい。ほらそこ、織物で壁を飾りなさい。ほら、そこベンチを用意なさい。床にもわらを敷くのよ。」
そう指示があると4人の侍女は壁を飾り付けし、2人が食器棚とエールの樽を運び込み、2人がテーブルを整え、2人が食事を運んだ。
「そこの2人。エールを運んで。そうそう、畑にいるシグルズを呼んで来て。そして、あなた達、私のかわいいオーラヴちゃんの家来ちゃんたちはとっておきの服に着替えるのよ。一張羅がない者には貸して上げるから。」とオーラヴママ。用意が整うと人払いをしたのであった。
使者がシグルズ王のもとへ行き、王にふさわしい衣装と、エナメルの石がはめ込まれた金で施された鞍をつけた馬を持っていったのだ。アースタの命で家来達が四方八方へと有力者達を宴に誘いに行かせた。
「なんじゃ?」と、シグルズ王。
彼は家来達がせっせせっせと畑仕事をしているのを見守り、畑の外側に立っており、灰色のマント、灰色の大きな前びさしのある帽子を被り、手には先が銀メッキされた軸受けのある銀の輪がついた棒を持っていた。
「アースタ様は王様のために大シングの準備をされておりまする。この王に相応しい衣装をまとい、この馬で参られよとおおせつかっておりまする。閣下は偉大な賢者さまである閣下の母君のご尊父の「細鼻の」ラニ様やヤールの老ネレイド様以上に閣下がハラルド美髪王閣下の家柄に相応しく振舞われよとおっしゃっておりまする。」
「はぁ、やれやれ。」
シグルズ王は虚飾を好まず、寡黙で、当時のノルウェイで最も賢く、豊かで、平和的であった。そして妻のアースタは寛容で高貴な魂の持ち主であった。
「わしを怒らせたようだな。デンマークやスウェーデンを敵に回してただで済むと思うなよ、アースタ、オーラヴ。」といいながら王はそこに座り靴を脱ぎ、使者が用意した衣装を身に着けた。そして緋色(高貴な色)のマントを羽織り、高価な剣を腰に下げ、頭に金メッキされた兜を着けて馬にまたがった。シグルズ王が家来を連れて家に戻った時、館でオーラヴ王の軍旗がたなびいているのを見た。そこにはオーラヴが立っており、彼と共に着飾った100名の家来達がいたのであった。シグルズ王は馬上からオーラヴの一団に挨拶をし、共に酒を飲むようにと言った。アースタはオーラヴに出来る限りの手助けをするといい、息子のオーラヴはそれに感謝し、そして彼女はオーラヴの手を取り高座へと導いたのであった。そしてシグルズ王は共に帰ってきた部下達に向かって
「お前達も着替えて来い、そして宴に来るのだ。っと、その前にお前達の馬にかいばを与えておくのだぞ。馬の世話を忘れるなよ。」と、シグルズ王は命じ、そして自身の高座へと行き祝宴が行われた。
(01.04.25)
ある日のこと、オーラヴ王はシグルズ王とその親族、アースタ、養父ラニを集めた。そして彼らを前に演説をしだした。
「私はこの国で生まれ、そして長い間、外国で暮らしておりました。町や村を襲撃し、そこで手に入れたものを糧に生きてきました。そして、それ以上のものは手に入れておりません。今、このハラルド美髪王に由来するこのノルウェイをデーン人どもが支配しております。デーン人どもはこのノルウェイの地での土地保有件をほとんどわれらノルウェイ人には認めておりませぬ。私は決心したのです。正当なる血筋である者がこの地をデーン人どもの手から取り戻すのです。そしてそれは戦いで手に入れることを意味しております。私には戦に勝利し、このノルウェイを取り戻すか、戦に破れ狼どもの餌となるかのどちらかしかありません。皆も立ち上がるのです、この侮辱された状態から脱すのです。」
そしてシグルズ王が答えた。
「それはお前の考えだ。お前の欲がそうさせるのだろう。お前はいつもそうだった。なにかにつけ大将になることを望み、そうした。お前はあまりに熱いのでわしの言葉なぞ届きはせぬかもしれんがの。だがハラルド美髪王の国が弱まるこの時に、お前の言葉は強くオプランドの者達に響くだろうな。よし、王族や領主達や民衆達と共にわしもお前に手助けするとするか。お前はクヌート大王と戦う前に沢山のものを手に入れなくてはならぬ。」
そうやって話がかなり進んだ時にアースタが口を開いた。
「さすがは我が息子。お前は最高の権力者になるのよ。例えオーラヴ・トリュグヴァッソンより長生きできなくても王になるのよ。シグルズを超えられなかったり、老衰で死ぬなんてはよくはないわね。」
そして会合は終了し、その後しばらくの間オーラヴは自身の家来達と共に滞在したのであった。
シグルズ王はオーラヴを連れて会合を行い、その出席者はオプランドを統治する多くがハラルド美髪王の家系である王達、ヘデマルクを統治するロウリクとリング兄弟。グドブランドダーレを統治するグズレズ、ラウマリク王、トーテとハデランドを所有する王、ヴァルデルの王、などの王達や有力者達であった。そしてシグルズ王は彼らにオーラヴに手助けするように要求をした。
「確かに、このノルウェイがハラルド美髪王の血族でないもの、ましてや外国のものが統治することはよくはないな。しかしどうやってデンマークやスウェーデンと戦うのだ。我等は前王のオーラヴ・トリュグヴァッソンには苦しめられた。彼は我等の土地の権利を縮小させ、自由な権利もわずかで、キリスト教の改宗にも高圧的であった。それを救ったのがデーン人だ。デーン人と友情を保ち、我等の今ある権利を守りたいのだ。」と、レリク王が言った。
「私は外国の支配者よりハラルド美髪王の血統である我が血族がこのノルウェイを支配すべきだ。そしてオーラヴ、君がそうだ。君の幸運がこの結果を左右するのだ。我らには父から受け継いだ国はあるが、君には我等が所有するような国はない。君がこのノルウェイの最高権力者になるために我らは手助けをしようではないか。」とその兄弟のリングが言ったのであった。
彼の演説に皆が立ち上がり、彼らのほとんどがオーラヴ王と同盟を結びたいと申し出た。オーラヴはもし自身がノルウェイの最高権力者になれば彼らに十分な友情と権利を約束すると言ったのであった。
この後にオーラヴはシングを開催し、民衆に彼の計画を皆に伝えた。そしてその場にいた豪農達に古の法を守り、外国からの危険から国を守ることを約束した。そしてこのシングの終わりにオーラヴは全領土の王の名を与えられ、オプランドの古い法に従ってその領土を認められたのであった。
そしてこの後にオーラヴは様々な土地を訪れ、彼のもとにたくさんの者達が協力者としてやってきたのであった。その王の旅の情報が「太鼓腹振りの」エイナルの耳に入ることとなった。彼はすぐに「戦の矢」を切り、全州に送った。彼は武装した者達を集め、オーラヴ王からこの領土を守らなくてはならぬと伝えたのであった。その命はオルケダール、グルダールへ伝わり、その全ての地から多くの戦士たちが集まってきたのであった。
(01.04.26)
オーラヴ王は軍隊と共にオルケダールに平和的に進んでいった。しかしグリョタルに到着した時、そこには豪農達が7〜800人の戦士を引き連れて集まっていた。オーラヴは戦になると判断し、軍隊を引き出した。それを見た豪農達の軍隊には動揺が走った。というのは彼らはその軍の指揮官を決定していなかったからである。その同様をオーラヴは読み取り、部下のトーレ・グドブランドソンを豪農達のもとへ行かせ、オーラヴ王が戦を望んでいないことを伝えた。それから彼らの中から12名の男がオーラヴ王のもとへ向かった。
「君たちが賢明であったので、戦は回避でき、こうやって話し合いの場が持てた。私はヤールのハーコンと出会い、彼から彼の領土を譲り受けた。そのことは承知しておるな?その地はオルケダーレ、グルダーレ、ストリンド、エイナ州だ。」と、オーラヴ王は切り出した。その後に彼は彼らに王に従うか、もしくは戦うかのどちらかを選択させ、彼らは王に従うことを決定した。
この後の旅を続ける前に豪農達は王のために宴を催した。オルケダーレ州のゲルミンのグンナルという者から王は1隻の20漕手席のあるロングシップを譲り受けた。それ以外にもヴィッグのロディンから、ネスのアングラルで数隻の船を手に入れ総数4〜5隻になった。
ヤールのスヴェンはトロンヘイムにおり、宴の準備が行われていた。「太鼓腹振りの」エイナルはオルケダールの民がオーラヴの手中に落ちたことを知り、スヴェンに使者を送り出した。ヤールにそのことが伝えられ、彼はその夕方にもてるだけの財産や日用品や食料を船に積み込み、夜に速やかに漕ぎ出した。スカルンスンドに到着した時に、そこでオーラヴ王がフィヨルドに沿って航行しているのを見つけ、陸地にへと進路を変えた。そこには大きな木があり、その葉と枝が覆っている崖に近づき木を切り、それで船を覆い隠した。その時、暗かったのでオーラヴ王は彼らを発見するに至らなかった。そしてヤールは無事にフロスタへ行き、そこで上陸した。そこは彼の領土であった。
この後にヤールのスヴェンのもとに「太鼓腹振りの」エイナルは使者を送り出し、彼を呼び寄せて話し合いした。
「オーラヴは我らが同志を集めていると知ればすぐに軍隊を引き出し向かってくるだろうが、我らのその動きを悟られなければやつはのうのうとユールの間はステインケルに居座るだろう。」とエイナルが言った。
そのように取り計らわれ、ヤールはステョルダーレに豪農達と共に宴に行った。オーラヴ王がステインケルに到着した時、王は宴の品々を全て手に入れて船に運んだ。それ以外に貨物船も所有しており、そこに食料と酒を積み込んだ。この後にニダロスに向かった。ヤールのエリクもニダロスに向かい、父の土地であるラーデに行った。その地のニドにオーラヴ・トリュグヴァッソンが建設した数軒の館は今や廃屋となり荒れ果てていたのだが、オーラヴ王はそれを修繕してその館に食料と酒を持ち込み、ユールの間はそこに滞在していたのだた。それをヤールのスヴェンとエイナルは聞き知った。
アイスランド人のスカルドのトルドはヤールのシグヴァルディに仕え、その後は「背高」トルケルのそばにいた。ヤールの死後トルドは商人になり、西方でのヴァイキングを行っている時にオーラヴと出会い、王の家来になった。トルドの息子はシグヴァットと言い、成人した時に商人達を連れて船をどした。秋にトロンヘイムに行き、彼らは船に張った天幕を用意した。しかし父が王のそばに居ることを知って彼は父に会いに行った。シグヴァットは若い頃はよき詩人でオーラヴ王のために詩を歌い、その報酬に黄金の環を貰い、親衛隊の一人になった。この時、彼はアイスランドの税金の負担がつらいと王に直訴した。
ヤールのスヴェンとエイナルは約2000人の兵を連れてトロンヘイムに向かった。トロンヘイム郊外で警戒をしていたオーラヴ王の部下が気づき王に伝えた。そして王は手に出来るものを船に持ち込んで海へと漕ぎ出した。その後にヤール達が到着し、館から物品を取り出すと館に火を放った。オーラヴは南のヘデマルクに向かった。そこで王は宴三昧。しかし我に返って春に兵を引き出してヴィクに向かった。王はヘデマルクで諸王が提供したたくさんの兵を手に入れた。そこにたくさんの州の首領たちがやってきて仲間になり、その中にリンガネスのケテル・カルヴがおり、ラウマリク出身の戦士たちもいた。義理の父のシグルズ王も兵を連れてやってきて、船へでる準備をした。
ユール直後にヤールのスヴェンは傾倒する有力者や権力者達を集結させた。彼の血族の「太鼓腹振りの」エイナルもその中にいた。準備が整うと海に出て、その途中でたくさんの人を集め、彼らはヴィクに向かった。グレンマルを過ぎてネスヤル付近に停泊した。オーラヴ王と彼らの間はわずかで、「シュロの主日」前日の土曜日に互いに認識した。オーラヴ王は「益荒男の頭」号を所有し、王の頭が船首に彫られていた。日曜日にオーラヴ王は上陸の角笛を吹き、軍隊に向けて演説をはじめた。
「戦はすぐだ。準備しろ。船は陣形を守り、まず盾で身を守り、時を待つ。あらゆる武器を海中に落とすなどという無駄はしてはいけない。白兵戦が始まり、船が接触した時、雄雄しく戦うのだ。」と王は言った。この当時の海戦は見方の船を互いに綱で結び付けて陣形を作り、敵の船にむかって鉤を投げて引き寄せ、乗り込んで戦う。白兵戦になる前に槍や矢を投げることである程度の攻撃を行うというのがパターンであった。
オーラヴ王の船の上にはチェーンメールとフランス製の兜を身につけた100人の戦士がいた。王の家来のほとんどは黄金の聖十字架が描かれている白の盾を持っていた。その一方、赤や青で塗られた盾をもつ者もいた。そして王は白の十字架を兜にも描かせていた。王の軍旗は白地に龍が描かれていた。王の角笛で出帆した。ヤール達は王の船を目にした時に船を綱で縛り、軍旗を立てた。そして王はヤールの船のそばに停泊し、戦が始まった。その戦は長く激しく、ヤール側の戦士に負傷者が出だした時に、王の家来達はヤールの船に王の軍旗、王と最も近づいた。そしてヤールの武運も傾き、ヤールは船を繋いでいる綱を切り落とすように命じた。王軍がヤールの竜頭に鉤を投げつけ、それがしっかりと食いついたので、ヤールは船首の竜頭を切り落とすように命じた。「太鼓腹振りの」エイナルはヤールのそばに船を近づけて、船首に碇を投げ入れさせた。こうして共に行き、ヤール軍は背走した。ベルシ・スカルドトルフソンはヤールのスヴェンの船の前部にいて王に見つけられた。ベルシは男前でいい衣装と武器を身につけていた。そしてベルシは王軍に取り囲まれ捕らえられた。
「終わりだな、ベルシよ。」と、オーラヴ。あくまでも色男がにくいだろうか。
「優雅にやるさ。」とおくびもなく鎖に繋がれたベルシは答えた。
ヤールの部下達は逃走したり、命乞いしたりした。ヤールのスヴェンとその家来達はフィヨルドを出て、仲間内で話し合いをした。エルリング・スキャルグソンは北に行ってオーラヴ王と再戦することを薦めた。しかしそれ以外の多くの者達は兵の数が減ったので、スウェーデン王の武力の助太刀を求めた方がいいと言った。この計画をエイナルは支持し、ヤールと共に南に向かったが、エルリングは北に戻った。
オーラヴ王はヤールの一団を目にし、シグルズ王は攻撃するように煽ったが、オーラヴは彼らの動きをいま一歩つかめなかったので攻撃しなかった。
「今、たたいておいた方がいいと思うがな。」とシグルズ王はつぶやいたのであった。
そしてこの後、戦死者を略奪しまくり、戦利品を山分けして戦は集結した。
(01.04.27)
オーラヴ王はヤールを偵察するためにスパイを送り出した。そしてヤールがその地を出たと知るとすぐにヴィクに沿って西方に向かった。人々が王のもとへ集いシングを行い、シングで王として認められたのであった。その後にリンダンディネスに向かい、エルリング・スキャルグソンが人を集めていると知った。王はヤールが領土外に居るその隙にたくさんの土地を支配下にするために北のトロンヘイムに向けて出発した。トロンヘイムでの民衆の反対はなくそこでも王として認められた。秋の間はニダロスに滞在し、冬越えの準備を整え、王の敷地の中にクレメンス教会を建てた。
ヤールのスヴェンはその後に親族のスウェーデン王オーラヴのもとを訊ねて助言を求めた。スウェーデンのオーラヴ王は協力することを約束し、トロンヘイムに行くことに同意した。
「まずその前に必要なもんを用意しよう。夏にバルト海にでも略奪に行こう。」と、両者。
ヤールのスヴェンは部下をつれてガルダリークに向かい略奪する。夏にそんな旅をしたヤールも秋には部下をつれてスウェーデンに向かった矢先、ヤールは死に至る病に陥り、藁の(ベッド)死を迎えてしまう。ヤールの死後、その家来達はスウェーデンに向かったり、トロンヘイムに戻ったりした。
「太鼓腹振りの」エイナルは軍隊を連れてスウェーデンに向かい、王に歓迎を受けた。スウェーデン王オーラヴは「大きな(ディグリ)」オーラヴに絶大なる敵意を持っていた。というのは従属するスヴェンの領土を奪い、ヤールを領土から追いやったからである。
「「デブ(ディグリ)の」オーラヴはノルウェイを支配する器ではないわ。」とスウェーデン王がはき捨てるのに同意するスヴェンの部下達とエイナル軍団。しかし彼らの思いとはうらはらにトロンド人達はヤールの死を聞き知ると「大きな」オーラヴに益々傾倒したのであった。その秋にオーラヴはトロンヘイムに行き、豪農達とシングを行った。そして彼は全州で王として認められたのであった。
オーラヴ王はニダロスに行き、そこに王宮(王のガルズ)を建てさせた。玉座が中央にあり、つづいてグリムケル司教、その司祭達と座し、その外側に相談役が座った。その他の王達、対峙席の高座にはビョルン元帥、彼の隣に客人が座った。そして王は役割分担をして、60名の親衛隊、30名の家令を迎え、給金を支払い、彼らのために法を制定した。それ以外に30名のガルズで勤務するフスカールがおり、それ以外にたくさんの奴隷がいた。
いつもオーラヴ王は朝早く起きて、マーティン(早朝の祈り)と朝のミサを欠かさなかった。彼は正しいと思うことを行った。様々な見識者を呼び寄せて、アセルスタンの養い子ハーコンがトロンヘイムに制定した法に手を加えて新しい法を作り、それに豪農達は同意した。
その冬にスウェーデン王オーラヴのもとから、「ウサギ口の」トルガウトと世話役のアスガウトの2人の豪農が24名の部下を連れてノルウェイに使いでやって来た。ヴェルダーレにキョーレを越えて向かい、そこで豪農達とシングを行い、スウェーデン王の名のもとに税を要求した。
「そうだなぁ〜ノルウェイ王のオーラヴが税を徴収しないんだったら、そっちのスウェーデンにお支払いしましょうか。」と豪農達は答えた。
といいながらずるがしこい豪農達はどっちの王にも支払っていなかったのであった。その後に使者達はあちこちでシングを行って税を徴収しようとしたが、何も手に入れることができなかった。挙句の果てにはステョルダーレにおいてはシングに豪農達がこなかったという事態まで発生した。やけになった使者達は、
「なんかやる気なくしたなぁ。いっそのこと「大きな」オーラヴ王のところに行こうか。」と言い、彼らはそのようにした。
彼らはオーラヴ王を尋ね、歓迎されて食事までご馳走になった。彼らはスウェーデン王の命で来たと伝えた。次の日にまた王を尋ねてくるように言われ、次の日そうした。王はミサを済ませてフスシングに向かった。
「トロンドの者達は外国の支配者のもとにいるより、ハラルド美髪王の正当なる血筋の者が王になることを望んでいるのだ。」とオーラヴ王は口を開いた。
「ま〜あそうおっしゃるのも判るんですが、貴殿も怖いが、我らの王にしかられたくないんでな〜。どうです、スウェーデン王オーラヴ様とお話をしてみませんぁのう。正式にスウェーデン王からこの土地を譲ってもらったらどうじゃろうでしょうかのう。」とアスガウトが言った。
「お前達の王に伝えろ。早春に私はノルウェイとスウェーデンの国境地帯に向かう。そうすればやつもおのずとその場所にくるだろう。そして生得の領土について話し合うのだ。合意ができるはずだ。」とオーラヴ王は言った。
その後にトルガウトは帰路に着こうとしたが、アスガウトは本来の命を実行すべき12名の部下を連れてグルダーレに向かい、メーレに向かって南下したが、オーラヴ王にそれが気づかれ王は家来を送り出し、彼らを捕らえガウララスに連れてゆき、フィヨルドや航路から遠く見える絞首台でつるし首にした。そして帰路の途中のトルガウトがそのことを知り、スウェーデン王オーラヴに伝えた。王はその事実をしるやいなや罵声の嵐を巻き起こしたのであった。
次の春にオーラヴ王はトロンヘイムから軍隊を連れて東方に行く支度をした。その時、アイスランドの船がニダロスを出ようとしていた。王はヒャルティ・スケッギャソンを呼び寄せ、アイスランド等でキリスト教を保持するためにと選出した法律家のスカフティ、アイスランドの法のために尽力をつくしてもらうそれ以外の者達に激励をして送り出した。それから王は様々な地に行きシングを行い、キリスト教の保持について力を入れた。キリスト教を受け入れてはいたものの古い習慣を行っていたり、キリスト教の法をしらなかったりした者達が少なくなかったからである。そしてより山や谷の奥深い土地では、未だにオーディンやトールといった古の神々を信仰していたのであった。
王がカルムトスンドにいた時に、エルリング・スキャルグソンに使者を派遣した。その伝言は、両者が和解し、フヴィテング島で会合を行うというものであった。エルリングがそれ以前に所有していた借地権を保持できるというので王の家来になった。オーラヴ王はさらに東に向かい、ヴィクに入った。デンマークの王達の命できていたデーン人達はその土地から去った。その夏はヴィクで過ごし、ツンスベルグを抜け、スヴィナスンドを抜けて東に船で向かった。すでにそこではスウェーデン王の主権が発動されており、保安官が置かれていた。北部には「ガウト人の」エイリヴ、エルヴ川までの東部にはロエ・スキャルギが置かれていた。ロエはエルヴ川の両側に家族がおり、ヒシングに大きな館を持ち、富豪であった。エイリヴも家柄がよかった。
オーラヴ王がランリークに軍隊を連れてやって来た時にその地の人々とシングを行った。シングでビョルン元帥が話しをして、他のノルウェイの土地で受け入れられたようにするように言い、豪農達と話し合いをした。エイリヴが王がそこにいると知ると偵察するために家来を送り出した。豪農達がオーラヴ王とエイリヴの間に入り長い間話し合いをした。シングが行われることになり、オーラヴ王は家令頭の「長い」トーレを11名の家来たちとともに派遣、ブリュニュルヴのもとへ行かせた。彼らは上着のしたに鎧を着け、帽子の下には兜を被っていた。次の日に豪農達がエイリヴと共にやってきた。その中にはブリュニュルヴがおり、彼の従者の中にトーレがいた。海に突き出した岬に王は船を近づけた。そこに豪農達の集団がおり、家来達が盾で守る背後にエイリヴがいた。ビョルン元帥は王の代弁として語り、彼が座った時に、エイリヴが立ち上がって話そうとした。しかし「長い」トーレが立ち上がり剣を抜き剣を抜きエイリヴの首を落とした。その後に豪農達の軍隊が飛び出し、ガウト人がそこから逃げ、トーレと彼の家来達のうち数名が殺害された。その騒ぎが治まった時に王が立ち上がって豪農達に座るように命じた。その後、長い間話し合いが行われ、彼らが王に服従することを約束した。
その後、夏が終わり秋になろうとしている時に、王は北のヴィクに向かい、サルプという大滝があるラウメルヴに行った。オーラヴ王は石と泥と木材で土塁を作り、外側に堀を作った。その内側に市場のある町の基礎を作り、王のガルズを建てさせ、聖母マリアに捧げる教会を建てた。家来達の館も建造した。冬はそこで過ごした。王はガウトランドの者達が気を悪くしないようにヴィクからガウトランドにタラや塩を輸送することを禁じた。王はユールの大祭を行い、たくさんの豪農達にそれを命じた。
その冬に「白の」トランドはトロンヘイムから東のイェムートランドに「大きな」オーラヴ王の名のもと税を徴収しに行った。しかし徴収後にスウェーデン王の家来達がそこに来てトランドと共に11名の部下を殺害し、徴収した税をスウェーデン王のもとに持って行った。
オーラヴ王はヴィク中にキリスト教を布教した。それはスムーズに行われた。そのヴィクには冬と夏の両季節にたくさんのデーン人やサクソ人の商人がいたからである。そしてヴィクの者達もまたイングランド、ザクセン、フランドル、デンマークへと交易の旅を頻繁に行ったり、ヴァイキングの襲撃についたりして、冬をキリスト教の国々で過ごしていたからであった。
その春にオーラヴ王はエイヴィンドに王のもとへやってくるようにと使いをよこして、彼はやって来た。彼らは長く話し合い、その後にエイヴィンドはヴァイキングの襲撃に行き、ヴィクに沿って南に航行していた。ヒシング外のエイケレイエル付近に停泊し、そこで彼はロエ・スキャルギという者がオルドストに向かって軍隊と共に北進し、土地税を徴収し、今その時は南にいるであろうとの話を耳にした。それからエイヴィンドはハウゲスンドへ、ロエは南へ行き、彼らは南で出くわし、そこで戦った。そしてロエと約30名の部下の首を取り、エイヴィンドは彼らが持っていた金品を全てもって行った。その後にエイヴィンドはバルト海に行き、夏の間ヴァイキングの襲撃を行っていた。
アグデル出身の親族を持つガルダリーク(ロシア)人のグドレイクという船乗りで大商人の男がいた。彼は様々な国と交易を行っており、しばしば東のガルダリークに行った。オーラヴ王は彼と友達になり、彼からノルウェイで手に入れにくい高価な品々を王のために買い付けるように命じた。グドレイクは了承し、王は彼にそれを遂行できるに足るような莫大なお金を託した。その夏にグドレイクはバルト海に出て、ゴトランドに停泊した。その話が漏れ、その地の人々が船上の1人の男がオーラヴ王の息のかかったものだと知った。夏の間にグドレイクはホルムガルド(ノブゴロド)に向けてバルト海に出て、そして彼は高価な王の相応しいローブの材料になる良品の革を購入し、それ以外に高価な革やすばらしい食器を購入した。その秋にグドレイクは西に向かったが、逆風であったのでエーランド島に長らく留まった。「ウサギ口の」トルガウトは秋の間にグドレイクの旅を偵察した。そして彼らは見つかり戦った。長い間、防御したが、彼らに向かってきた敵の数が余りに多かったのでグドレイクと彼の沢山の船乗り達は命を落とし、たくさんの者達が負傷した。トルガウトは全ての積荷を持ち去った。彼は彼と家来達で平等に戦利品を分けたが、彼はスウェーデン王に高価な品々を渡すべきだといった。
「これは閣下がノルウェイから徴収すべき税の一部だ。」と彼は言った。
トルガウトは東のスウェーデンに戻り、この話をすばやく知らしめた。少し遅れてエイヴィンド・ウラルホルンはエーランド島に向かい、そこで事件を知り、トルガウトを追った。彼らはスウェーデンの岩礁の間で出くわし、戦って、トルガウトとその家来達のほとんどが命を落とし、エイヴィンドがグドレイクの積荷を取り戻し、ノルウェイに戻り、王に渡した。王は彼に感謝し、再び熱き友情を固めた。そんなこんなでその時、オーラヴは王になって3度の冬を越していたのであった。
その夏にオーラヴ王は軍船を準備させ、東のエルヴに戻り、夏の間そこに滞在した。オーラヴ王とヤールのラグンヴァルドとその妻のトリュヴィの娘のインゲビョルグの間を使者が行き来した。彼女はオーラヴ王と親族関係であること、スウェーデン王が彼女の弟を撃破したことに加担し、命まで奪ったという私怨のために、全力を持ってオーラヴ王を支援したいと望み、力を入れていた。ヤールは妻が熱心に勧めるのでオーラヴ王と友情を結び、王とエルヴのそばで会合することを了承した。そこで彼らはたくさんの問題を提起し、ノルウェイとスウェーデンの王たちの間にあるうらみごとについて話し合った。そして彼らはラヴィクの人々とガウトの人々がその理由のために自由交易がないことが最大のネックであると言った。別れの時に贈物を互いに贈り、友情に同意した。
ヴィクの豪農達は平和は両王が折り合いをつけることが一番で、戦をすれば悲惨なことになると判っていたが、誰もあえて王に口を開くものはいなかった。彼らはビョルン元帥に王にこの事柄を伝えるように頼み、彼は王に代わって平和にするためにスウェーデン王のもとへ家来達を送り出した。
「あ〜やだやだ。このことをどうやって「大きな」オーラヴに伝えりゃいいんだ。」と気に病むビョルン元帥。
しかし彼は決意をしてオーラヴに伝えた。しかしスウェーデン王へのあらゆる妥協を王に申し出ることを上手く話すことはできなかった。
その夏にアイスランドからノルウェイにオーラヴ王の命でヒャルティ・スケッギャソンがやって来た。彼は歓迎されビョルン元帥の隣に席を設けられた。彼らは友情を固め、その後に長く話し合いを行った。ビョルンは王に民衆は困っていると伝えた。
「そこまで言うんなら、お前がスウェーデン王と話をつけてこい。」とオーラヴ王。
その言葉に反泣きのビョルン元帥であった。
そして王は教会に行って盛式ミサを歌わせた。それから食卓についた。次の日、ヒャルティはビョルンに言った。
「どうした?うかない顔をして。」とヒャルティは訊ねた。
「困ったことになった。大役を命ぜられた。大役につくには名誉な事だ。しかしそれを遂行するには命の危険が伴う。しかしなぁ・・・」とビョルンが困りながら言い、昨日あったことを彼に伝えた。
「お前はこの使命を軽くみているんじゃないのか?恐らく、私はお前と共にその旅路につく事になるだろう。王がそんなことをほのめかしていたんでな。」とビョルンの困り顔に相反してさわやかなヒャルティ。まだ踏ん切りがつかないビョルン、それを見越したかのようにヒャルティが口を開いた。
「もしお前と別れたら、私はお前以上の友を手に入れることは難しいからな、お前が望むならお前と共に行こう。」と、あくまで前向きなヒャルティ。こんなへたれのビョルンのどこに惚れたんだろうか疑問である。
数日後、オーラヴ王が会合に行った時、ビョルンが11名の家来と共にやって来た。彼は使命につく準備が整い、馬は鞍を置かれ主人を待っていると伝えた。
「スウェーデン王に伝える事柄をお教えください。それと、あ、あの、閣下、何かよいお言葉を・・・」とビョルン。
「スウェーデン王に伝えておけ。オーラヴ・トリュグヴァッソン王が保持していた国境線にしたがって平和裏に国を分け、互いの国の国境を脅かさないということに同意するようにと伝えておけ。」
そして王は立ち上がりビョルンとその家来達と共に外に出て、黄金で飾られた剣と黄金の指輪を手にとってビョルンに渡した。
「これらはこの夏にヤールのラグンヴァルドが私に譲ったものだ。剣はお前にやろう。そして彼のところへ行き、指輪を見せるのだ。彼は役に立ってくれるだろう。」とオーラヴが言った。
ヒャルティは王の前に進み王に挨拶をした。
「閣下、我らはこの旅路における閣下の「幸運」を必要としております。」とヒャルティが言った。
そして王は幸運が彼らを再会できるようにしてくれると言い、そしてこう付け加えた。
「ヒャルティ、お前もこの旅に行くのか?」
おいおいお前が命じたんだろうと思いながら、
「ビョルンと共に。」とヒャルティがきっぱりと言った。
「この旅路に幸運あれ。」とオーラヴはこの難しい旅の成功を祈ったのであった。
ビョルンとその仲間は馬で行き、ヤールのラグンヴァルドのもとへ行った。彼らは大変歓迎された。ビョルンはその容貌と演説のやり方の両方で有名であった。ビョルンは全ての事柄に立って演説したからである。ヤールの妻のインゲビョルグはヒャルティのそばに行き、彼に話し掛けた。彼女の兄弟がオーラヴ・トリュグヴァッソンに仕え、彼がその同志であったので彼を見知っていた。そして共にヴォスの地主のヴァイキングのカリの息子である「丸いはげ頭の」エリク(オーラヴ・トリュグヴァッソンの母方祖父)とボドヴァル(ヴィルボルグの父の「白の」ギッスルの母のアロヴの父)が兄弟であったので、彼女は王とヒャルティの妻のヴィルボルグの親族関係を主張した。彼らはご機嫌であった。
ある日、ビョルンとその家来達がヤールとインゲビョルグと話をするために会いに行った。それからビョルンはやっと使命を彼らに伝え、ヤールに黄金の指輪の王の印を見せた。
「ビョルン、王はお前の死を望んでおるのか?そんな話をスウェーデン王オーラヴに言ってみろ、ただでは済まぬぞ。スウェーデン王は許すような方ではないぞ。」とヤールが言った。
「その通りでしょう。スウェーデン王が激怒する以外になにも起こらぬでしょう。しかし良い方向になるだろうと王の幸運を信じています。私は決意したのです、これをスウェーデン王に伝えると。」とビョルンが言った。それを聞いてインゲビョルグが自分の考えを言った。
「たとえ我らがスウェーデン王の怒りを買い、財産や全てを失うことになっても、それはスウェーデン王に伝えられるでしょう。」と彼女がいい、それを聞いたヤールは反論した。
「何をいっておるんだ、インゲビョルグ。お前はこいつらをそそのかしておるのだ。私は彼らが確実にこの使命を進めることができると自信がつくまでここで我らのもとで過ごすのがよいと思う。私はお前達を出来る限り支援しよう。」とヤールは言った。
ビョルンはヤールに感謝し、彼の助言に従うと言い、彼らと共に長い間を過ごした。
(01.04.30)
インゲビョルグは彼らと仲良くした。ビョルンと彼女はしばしばこの使命について話し合った。そしてヒャルティも彼らと話し合いをよくした。
「もしお前達が望むのであれば、私がスウェーデン王を尋ねよう。私はノルウェイの民ではないので、スウェーデン王は私が不利になるようなことはしないだろう。スウェーデン王のもとにスカルドの「黒の」ギッスルや「黒の」オッタルというアイスランド人が身を寄せており、彼らとは旧知の仲だ。彼らがよき助言をくれるだろう。私がこれを遂行するに相応しいと思わないか?」とヒャルティは言った。
こんなカッコの良いヒャルティを感激しながら見るインゲビョルグとビョルン。そして彼らは彼の賢明な案に乗る事にした。インゲビョルグはヒャルティの旅の準備をし、2人のガウト人の従者、銀20マルクを準備した。インゲビョルグはスウェーデン王オーラヴの娘のインゲゲルドに手助けを求めるために必要な伝言とその印となるもの彼に託したのであった。ヒャルティは準備が済むとすばやく出発した。スウェーデンに到着すると彼はスカルドのギッスルとオッタルに出会った。彼らは彼を歓迎し、大喜びであった。そして彼らはヒャルティを連れてスウェーデン王オーラヴのもとへ行った。彼らはヒャルティが同郷人で、郷里では非常に栄誉ある者であると伝えた。ヒャルティは王のもとにいる事を許され、歓迎されたのであった。
ある日、ヒャルティとスカルド達は王に会いに行った。王を賞賛した後に続けてヒャルティは言った。
「アイスランド人がノルウェイを訪れた時、土地税を払うという取り決めがアイスランドとノルウェイ間で取り決められております。しかし私は閣下の力がノルウェイに及んでいると知ったので閣下に土地税を支払いましょう。」と彼は言いながら王に銀10マルクを見せ、それを「黒の」ギッスルの膝に流し込んだ。
「ノルウェイからこんなものが来るのはしばらくぶりだな。私はお前の好意を喜ばしく思うぞ。」と王は感激して言った。
ヒャルティは王から友情を受け、王としばしば話をする仲になった。ヒャルティはギッスルとオッタルに王女インゲゲルドに口を利いてもらえないか訊ねた。それは難しいことではなかった。ある日、たくさんの者達が酒を飲んでいる館にいた彼女に会いに行った。彼女はスカルド達をよく知っていたので彼らを歓迎し、ヒャルティはヤールの妻のインゲビョルグの言付けを彼女に伝え、その印を見せた。そして彼女はヒャルティに話をするために訊ねてくるように言った。ヒャルティは彼女をしばしば訊ね、彼はビョルンとの旅のその使命を彼女にそっと打ち明けた。そして彼女に王たちが平和に折り合いをつけるために協力して欲しいと頼んだ。
「父上が「大きな」オーラヴと折り合いをつけるなんてことは考えられません。恐らく大変お怒りになるでしょう。」と彼女は困った顔で言った。
ある日、ヒャルティは王の前に座って話をした。王はたくさん酒を飲んでいたので大変ご機嫌であった。そしてヒャルティは王を賞賛して王を喜ばせ、その後に切り出した。
「民衆はスウェーデンとノルウェイが折り合いをつけることを望んでおります。そしてノルウェイ王もそう思われております。彼は自身の権力が閣下に劣っておることを承知しているはずです。ノルウェイ王は閣下のご息女のインゲゲルド様に求婚されることを考えておられるでしょう。そしてそれは永遠の平和を保障するものです。」と言った。
「お前はそのようなことを口にすべきではない。よいか、ヒャルティ、高慢な者はこのスウェーデンの宮廷では王を名乗ることは許されず、やつの言い分はなんら価値のない事だ。私は10代目のウプサラ王であり、それは正当に受け継がれたもので、スウェーデンやそれ以外の広い領土の単独王であるゆえ、やつと私はつりあわぬのじゃ。ヒャルティ、お前は頭がよいので理解できるな?ノルウェイはわずかな者しか住んではおらず、ハーラル美髪王が最高権力者だったといっても、そこにはまだ小王達がたくさんおる。そして彼は賢明にも己が領分を心得ており、スウェーデンを欲するなどということは無かった。だからスウェーデン王は彼に力を見せつけるようなことはせなんだのだ。そしてその上に我々には親族関係を結ぶ事となったのだ。しかしアセルスタンの養い子のハーコンがノルウェイを統治した時、彼はガウトランドとデンマークで戦をするまで平和に過ごしていた。その後に彼は軍を引き連れて進軍した。グンヒルドの息子達はデンマーク王に服従することを止めた時が人生の終わりとなり、ハーラル・ゴルムソン(青歯王)がノルウェイをデンマークに取り込み、税を課したのだ。しかし我らの親族のスティルビヨルンが彼を脅かし、ハーラルが家来となったので彼らはウプサラ王の足元にも及ばぬ存在であると認識したのだ。しかし我が父であるエリク常勝王はスティルビヨルンと力比べをした時、彼を超えたのだ。そしてオーラヴ・トリュグヴァッソンがノルウェイにやって来て、自身を王と称した時、デンマーク王スヴェンと私が共に行き、やつをその座から退き下ろした。わかるか、それほどまでに我が力はノルウェイを凌駕しておるのだ。わかるなヒャルティ。」と王はくどくどと言ったのであった。
ヒャルティはこれ以上はなにをしても無駄と思い、立ち去った。少し後に彼は王女に会いに行き、彼女にことの成り行きを伝えた。
「予想した通りです。」と王女はあきらめながら言った。
「どうか王女から王に話をしてはくれませぬでしょうか?」
「父上は耳を貸さないでしょうが、やるだけはやってみます。」と彼女は了承したのであった。
ある日、インゲゲルドは父の機嫌がよいと見て話を切り出した。
「お父様は父上と「大きな」オーラヴ王の間にある敵意をどうお考えなのでしょうか?民衆は皆、悲しんでおります。お父様の家来達はノルウェイに行く事が出来ぬとほとほと困っております。どうですか、お父様、そろそろノルウェイを欲することをやめて、その目をバルト海に向けては如何でしょうか?かの地は以前はスウェーデン王の領土であり、スティルビヨルン(エリク常勝王の兄弟の息子)がバルト海を荒らし、ヨムスボルグを征服し自らの支配下にした土地です。「大きな」オーラヴにノルウェイを統治させ、彼とかの国を平和にさせてはいかがなものでしょうか?」と賢明な彼女は言った。
「このわしにノルウェイをあきらめ、お前をデブに嫁がせるのがお前の望みというのか!そんなことはさせぬ。むしろ冬のウプサラでシングを行い、わしがノルウェイに行き、かの地を荒らし全てのものを灰に変えるであろうと氷が水に姿を変える前に全スウェーデン人に知らしめるだろう。」と、王はまっかに激怒しながら言ったのであった。
それ以上、彼女は何も言葉を発することができず、立ち去った。ヒャルティは彼女が出てくるのを見ており、すぐに彼女のそばに行きことの成り行きを尋ねた。
「予想した通りです。もうあなたも父上にこの事でお話をなされぬ方がよいと思います。」と彼女は答えた。
(01.05.01)
この後もヒャルティと王女は「大きな」オーラヴの事柄を話し合った。そしてヒャルティのクセなのか人をよく見てしまうのが彼のいいところなのか、彼は彼女にオーラヴ王について様々な事柄を話した。すると王女はすっかり勘違いしたのか「大きな」オーラヴに惚れ込んでしまったのであった。そしてヒャルティは一言王女に言った。
「インゲゲルド様。私が思っていることを敢えて口にすることをお許しください。」
「どうぞ。どんなことでも気軽に話して。」
「もし、ノルウェイ王オーラヴが貴女様にプロポーズするために家来を遣わせたとしたら、どうなさいますか?」とヒャルティは言った。
その言葉に彼女は頬を赤らめ、ゆっくりと答えた。
「私にはわかりませぬわ。」と彼女は言った。確かにこの時代、王が娘の嫁ぎ先を決めるもので、王女の一存では決められないというのが正直な所であった。そしてヒャルティはこのことをおし進めようと益々「大きな」オーラヴ王を賞賛したのであった。
「でもこのことは他の方の耳に入らぬようにしてください。父上の耳に入るとまたお怒りになるでしょうから。」と彼女はヒャルティに言い聞かせたのであった。
ヒャルティはスカルドのオッタルにこの事を打ち明け、彼もこの事柄に賛成し、彼はガウト人の家来をヤールやその妻にも相談するために派遣し、家来はユール前にヤールの館に到着した。
「大きな」オーラヴがビョルンとヒャルティを送り出した同じ時期に、他の家来達をオプランドに遣わせた。その冬はオプランド中で宴の接待を受けるつもりであった。それ以前の王は3年ごとに冬にオプランド中の宴の接待を受けるのを常としていたからである。オーラヴのその旅はボルグから始まり、ヴィングマルクに行った。宴に遠くからも人々を呼び寄せ、その場で彼はキリスト教の重要性を説き、未だ古の神々の信仰を捨てない者たちには罰を与えた。罰とは手足を切り落としたり、目をえぐったりといったものであった。王はあちこちに行き、富めるもの貧しきもののどちらも罰した。そして王はラウマリークに行き、その地ではキリスト教が守られていないのが判り、もっと奥では益々そうであった。そして王は厳しく罰を与えたのであった。
ラウマリークを支配していた王がこの状況を知り、彼のもとにたくさんの者達が直訴しにやって来た。そして王はその辺りで一番の見識者であったレリク王の助言を求めてヘデマルクに行こうと計画した。そして王たちが集い話し合いをした結果、北のグドブランスダーレのグドレド王に使者を遣わせて、会合に誘った。そして5人の小王がヘデマルクのエイングサケルで会合を行った。5人の中にはレリク王の兄弟のリングがいた。そして王は「大きな」オーラヴのラウマリークでのやり方についてあれやこれやと話し合った。そして不注意にもダーレの王のグドレドが言ってしまった。
「5対1だ!こてんぱんにやつをのしてしまおう!」
「そうだな、それにはまず我らの結束だ大事だ。」とレリク王が口を開いた。
そして彼らはオーラヴの動きを探るためにスパイを放ったのであった。オーラヴはあちこちで宴の接待を受けていた。リンガネスのケテルはその集団の中にいた。彼は夕方にやってきて、夕食を取り、その後に彼と彼のフスカールは服を整えて水辺に行った。オーラヴ王から譲り受けた彼の船を水上に押し出した。ケテルには40名の武装した家来がいた。ある日の早朝にヴァセンダに行った。そして半分の20名を連れて上陸し、残りの20名に船を見張らせた。その時、オーラヴ王は高地ラウマリクのエイドにいた王がマティンから来た時にケテルはそこからやって来て、王は彼を快く迎えた。そしてケテルが王に会いに来たその重要な事柄を伝えた。
「む、小王たちがそんなことを考えているとは。家来達を集めるのだ。誰か馬を探して来い。」と王は家来達に命じた。家来達は農場に馬を求めて行き、船を捜しに水辺に行き、手配した。そして彼らは教会に行きミサを行わせ、その後に食事を取って、水辺に向かったのであった。そしてその夕方に出帆した。王には400〜480名の家来がいた。夕暮れにリングサケルに到着したのだが、見張りは近づくまでそのことに気がつかなかった。ケテルと彼の家来達は王たちが寝ている場所を正確に把握しており、王軍は館を包囲してねずみ一匹たりとも見逃さぬようにした。そして彼らは昼になるのを待った。王たちは抵抗できずに捕虜として捕らえられた。5人の小王達はオーラヴの目前に引き出された。レリク王は見識者で、厳しい人であったので、信用できないと思ったのでその両目をつぶした。ダーレ王のグドレドは舌を切り取られ、それ以外の3名の小王にはノルウェイ追放を命じたのであった。そしてオーラヴ王は5人の小王が所有していた領土を取り込み、小王たちに加担した地主、豪農から人質を取った。そして王はラウマリクへ行き、その後にハデランドに行った。
その冬にオーラヴ王の義理の父の「雌豚の」シグルド王がなくなった。そして王はリンゲリークに戻り、母アスタは葬儀の宴を盛大に行った。そして「大きな」オーラヴは全ノルウェイの王として宣言したのであった。
この宴にオーラヴがいた時のおもしろいエピソードがあります。王母アスタはオーラヴに3人の息子を合わせた。彼らはシグルド王とアスタの間に生まれた「大きな」オーラヴの義兄弟で、グソルム、ハールヴダン、ハーラルである。王は方膝にグソルムを乗せ、もう方膝にハールヴダンを乗せ、彼らを睨み付けた。目の鋭いオーラヴににらまれた彼らは怖がった。そしてそれからアスタは末っ子の3歳のハーラル(後のハーラル苛烈王)を連れて行った。オーラヴはハーラルをにらみつけたが、ハーラルは怖がることなくオーラヴをにらみかえしたのであった。それからオーラヴは弟の髪を引っ張ったが、弟は王の髭を引っ張り返したのであった。オーラヴは彼が見込みある若者であると思った。
次の日、王は王母アスタと村へ向かい、グソルムとハールヴダンの弟達が遊ぶ湖水に向かった。弟達は遊びでたくさんの羊や牛を作り、農場を作り、農場経営ごっこをしていた。そして湖水に沿って小道があり、そこはぬかるんだちょっとした小川があり、そこにハーラルがおり、彼は木片を浮かべて遊んでいた。王は末弟に何をしているか訊ねた。
「軍船だよ。」
「ほう、お前は軍船を指揮する者になるだろう。」とオーラヴ王は言った。
そして王はハールヴダンとグソルムを呼び寄せて訊ねた。
「グソルム、お前が最も手に入れたいものはなんだ?」
「土地。」
「どれぐらいの土地だ?」
「水辺までのここの全ての岬の土地が欲しい。夏にいつも種をそこにまくんだ。」
「それはそれはたくさんの穀物が育つのだろうな。」と王は言った。
そこには農場が10個あったからである。そして王は同じようにハールヴダンに尋ねた。
「牛。」とハールヴダンは答えた。
「何頭ぐらいなんだ?それは。」
「たくさん。この水辺を埋め尽くすほどの牛。」
「随分とたくさんだな。お前の父のシグルドのようだな。」と王は答えた。
そしてオーラヴが見込みありそうだと思っているハーラルに訊ねた。
「お前はどうなんだ?」
「フスカール、家臣さ。」と答えた。
「何人ぐらいかな?」
「ハールヴダンの牛を一度の食事に食べ尽くすほどの人数。」
さすがのオーラヴもこれには感心し声高らかに笑ったのであった。実に見事な弟であった。
「母上、あなたは確かに”王”を育てておられる!」
北海の巨星ハーラルのエピソードである。
スウェーデンでは2月中旬〜3月中旬までウプサラで血の供儀を行っており、いまだに古の神々を信仰していたのであった。そしてウプサラはスウェーデンでも最大の聖地で様々なところから供儀を行うために人々が集ったのであった。そしてその時、全スウェーデンのシングが行われ、市場も立ち、それは1週間続くのであった。キリスト教が到来してもなおそうであった。しかしスウェーデンが完全に改宗された時、玉座はウプサラから移され、市場はキャンドルマスに移された。そしてスウェーデンは様々な統治区、教区に分けられ、それらの区では独自の法が制定され、法律家が置かれていたのであった。
(01.05.06)
スウェーデンの州のチュンダランドにトルグニィという法律家がいた。彼の父はトルグニィ・トルグニィソンで、彼の先祖は先立つ時代のチュンダランドの法律家であった。トルグニィは老齢で、たくさんの親衛隊を抱え、スウェーデン随一の賢者であった。そして彼はヤールのラグンヴァルドの親族で養父であった。そしてそのラグンヴァルドのもとへ王女インゲゲルドとヒャルティが送り出した家来達が訪れた。彼らはヤールとその妻にその使命を伝え、ノルウェイとの和平をどのように考えているかを伝えた。そしてそれに対する否定的なスウェーデン王オーラヴの態度も伝えた。そしてそれが絶望的なことを知り、その旨、親友がせっせせっせと頑張っている一方こんなところでぼーっとしていたビョルンに伝えた。
「無理ですね。ノルウェイとスウェーデンの和平なんて。」とビョルンはヤールに言った。
「スウェーデン王オーラヴと直接話しをしましょう。王に謁見するまではここには戻らない。そして君も私と共に行くのだ。」とヤールはきっぱりと言った。
彼らはユール後に支度を整え、60人の家来と元帥のビョルンとビョルンの同志と共に出発した。スウェーデンの地を踏んだ時、ヤールは前もってウプサラの王女インゲゲルドとの謁見の許しを得るために家来を向かわせていた。会合の地は彼女が保有していた広大な地でウッララケルであった。そして彼女は家来の数が不十分ではあったが、それに戸惑わず出発した。そしてヒャルティは彼女のお供をすることを希望し、出発前にスウェーデン王に向かって言った。
「閣下、お別れです。私はこの地で受けた栄光を忘れはしないでしょう。そして私は今よりずっと閣下を褒め称えるでしょう。」と、ヒャルティがいった。
「どこへ行くのだ?」
「閣下のご息女と共にウッララケルへ馬で向かいます。」
「そうか、お別れだな。お前は、見識ある者で、礼儀正しく、分別をわきまえておる者であった。」と王は言った。
つくづく、なぜビョルンにほれ込んでいるのだろうか、疑問である。そして彼らは出発し、その地に着くとヤールのために盛大な宴の用意を整えた。ヤールは歓迎され、数日間、彼は彼女の世話になったのであった。そして彼らはノルウェイとスウェーデンの運命について深く話し合った。
「もし、ノルウェイ王オーラヴがあなたに求婚するとすれば、あなたはどうなさいますか?この和平を推し進めるにはそれが大切だと思われます。」とヤールは王女に訊ねた。
「私の夫は父王がお決めになることでしょう。その計画はあなたはどれぐらい有効だと考えておられるのでしょうか?」とインゲゲルドは言った。
そしてヤールはそのことを推し進めるために、彼女にノルウェイ王オーラヴのいいところをいいまくったのであった。彼が先日オプランドの5人の王達から王国を取り上げて自分のものにしたこと、それ以外のことでも誉めて誉めて褒めちぎったのであった。そしてしばらくしてヤールは支度を整えてあるところに向かい、ヒャルティも彼に従い出発したのでった。その場所とは法律家トルグニィであった。
ある日の夕方、ヤールのラグンヴァルドはすばらしい館に住み、たくさんの家来を抱えている法律家トルグニィのところへ到着した。彼は歓迎され館の中に通された。館の中にもたくさんの人がいた。トルグニィは立派な髭と携え、それは膝に達するほど長かった。
「ラグンヴァルド、好きなところに座るがよい。」とトルグニィが言った。
ヤールは高座に座る養父トルグニィの反対側の中央に席を取った。ヤールが心のうちを語るまで数日が過ぎたのであった。夕食の席でやっと彼は使命を伝えた。
「トルグニィ殿、私の手には余る問題です。賢者である貴殿の助言を頂きたい。」とヤールは言った。そして長くヤールはことの次第を語ったのであるが、彼の話が終わってもトルグニィは口を閉ざしたままであった。
「変じゃのう、ラグンヴァルドよ。お前はヤールの職についてから長い時間が経っただろう。どうやらお前はヤールの器ではないのだなあ。お前は今までどうやって問題を解決してきたのかな?不思議じゃのう。お前はスウェーデン王に会う度胸もないくせに、この旅についたんだなぁ、困ったことじゃ。この使命を名誉あることだと考える者もおろうに。ウプサラのシングに行こう。そこではたとえ王であろうとも発言の自由を剥奪することはできぬからなぁ。お前はそこで恐れずに王に伝えるのだ。」と大賢者のトルグニィは正論をヤールにたたきつけたのであった。そしてこの助言にヤールは感謝し、その後にウプサラのシングに向かったのであった。
(01.05.10)
彼らが到着すると、大群衆がそこにあり、すでにオーラヴ王が回りを親衛隊で固めていた。初日にシングが行われ、オーラヴ王は自らの席につき、その周りに親衛隊がつき、その反対側には親衛隊で囲まれているヤールのラグンヴァルドとトルグニィのフスカール達が席を取ったのであった。席の周りには地主達が背後、左右を取り囲んでいた。ある者たちは土手や丘に登りその動向を見守ろうとしたのであった。そしてシングは始まり、元帥のビョルンがヤールのそばに立って大声で言った。
「オーラヴ王はスウェーデン王と折り合いをつけたいと申し出ており、ノルウェイとスウェーデンの古からの境界線に同意して欲しいと申しております。」と王にはっきりと聞こえるように大きな声で言った。
しかしスウェーデン王オーラヴはぼーとしており、オーラヴという単語に自分の事が述べられていると勘違いしたが、すぐに不愉快な男のノルウェイ王オーラヴのことであると判ったのであった。そして立ち上がり、その話をさえぎるために大声で叫んだ。その後にヤールが立ち上がり、演説した。ヤールはスウェーデン王オーラヴへの「大きな」オーラヴからの言付けを伝え、西ガウト人はノルウェイとの平和を望んで彼に懇願していると伝えた。西ガウト人の厳しい境遇であるが、もしノルウェイ王が進軍してくるのであれば、毅然とした態度で戦うとも言っていると伝えた。そしてヤールはノルウェイ王オーラヴがスウェーデン王女インゲゲルドの助けを求めるために使者を送り出したとも語った。しかしながらヤールが演説を終えた時、スウェーデン王は立ち上がり、この平和についての話に熱くなって応え、ヤールの意見に反対した。ヤールは自らの王に対する背信行為によって追われる立場となろうということが判ったのであった。王は長い演説を終えて席についたのであった。
(01.07.16)
スウェーデン王オーラヴは長い演説を終えて着席し、最初のうちは沈黙していた。そしてそれからトルグニィが立ち上がり、彼が立ち上がると前に座っていた地主達も立ち上がり、皆彼の話に注目したのであった。人々がいる場所では身に付けている武器ががちゃがちゃと音を立てたのであった。そしてその音が止む前にトルグニィは口を開いた。
「スウェーデンの王達は以前に増して国のことを心にかけておられる。我が祖父のトルグニィはウプサラ王エリク・エムンドソンのことをよく知っており、王が最も活躍した時期の毎夏に軍隊を率いて多くの国々へ向かったと祖父から聞いたものだ。王はフィンランドのキリアラー(フィンランド北東部)、エストランド、クーラランド、東方の国々とたくさんの地を手中に納められ、王が建造された土塁やそれ以外の見事な功績というものは今も目にすることが出来る。王は人々と話し合いをする時、民衆の話に耳を傾けられ、決して高慢ではなかった。我が父のトルグニィはビョルン王と長い時を共に過ごし、王の振る舞いをよく知っていた。ビョルン王の時代は国力は強く、王は友人達に寛容で、それゆえ失うものは何もなかった。エリク常勝王の事を私はよく知っている。私は王と共に数多くの襲撃に出た。王はスウェーデンの国土を増やし、力でそれらを守ったのであった。我らは王に助言をする事は容易い事である。しかし王は自身が抱えるであろう1つの事柄を除いて、誰にも意見をさせはせぬだろう。王は背信行為のために自らの領地を手放した。それ以前のスウェーデン王は誰も欲さなかった事、支配下のノルウェイの領地を守りつづけ、その事は多くの者達に問題を与えることになった。今、我ら地主どもは閣下がノルウェイ王「大きな」オーラヴと和解し、王女インゲゲルドとの婚姻を認める事を望んでおります。もし閣下の御先祖様、親族様が所有したバルト海の国々をご自身のものに再び手中に納めるのであれば、我らは閣下に喜んで従いましょう。しかし閣下が我らの助言を受け入れないというのであれば、我らは閣下に剣を向け、首を取ります。閣下の不穏や無法にこれ以上我慢は致しませぬ。我らの先祖もこのような方法を取ってきたのだ。ムーラ・シングで、今、閣下が我らに行っているような高慢を行った5人の王達を泉に投げ入れて沈めた。閣下、すぐに決定を下していただきたい。」と、トルグニィは言った。
そして群集は武器をバンバンと打ち鳴らし、激しい音を立てた。それから王は立ち上がり、口を開いた。王は地主達が要求することを全て受け入れると言ったのであった。
「こんな風に全てのスウェーデンの王達は行ってきたのである。王達は地主達と対等に話をしてきたのである。」
それから地主達の叫びが収まり、その後に王やヤールといった統治者達とトルグニィは話し合い、そして彼らはノルウェイ王が前もって言っていた事柄について折り合いをつけ、スウェーデン王の振る舞いをおさめたのであった。このシングでノルウェイ王とスウェーデン王女の結婚が取り決められたのであった。王はヤールにこの婚約を整えさせ、この結婚にまつわる事柄の全ての準備を命じた。そしてシングはしばらく続き、その後に彼らは解散したのであった。そしてヤールが家路に就いた時に、王女インゲゲルドに会い、その事柄について話し合いをした。彼女はオーラヴ王に黄金で刺繍され絹で飾られた毛皮のマントを贈った。ヤールはガウトランドに戻り、ビョルンは彼と共に行った。ビョルンはそこにしばらく滞在し、それから従者と共にノルウェイに戻った。そして彼はオーラヴ王と会った時に、結果を伝え、王は彼に感謝し、ビョルンがこのような不穏の真っ只中でその使命を果たすことができた幸運をビョルンが持っていたと言ったのであった。確かにへたれビョルンは人に恵まれ幸運であった。
時は流れ春になった。オーラヴ王は海に出るために船の準備を整えさせ、家来を招集し、リンダンディネスほど遠くへヴィクに沿って船を進め、北のホルダランドに向かった。王はその地の者達に命を送り、権力者達を招集した。王は王女を花嫁として迎えに行くための準備をした。婚礼の宴は国境地帯(ヨータ川付近のノルウェイとスウェーデンの国境地帯)のそばの東のエルヴの近くで秋に催された。
オーラヴ王は盲目のレリク王をそばに置いていた。レリクの傷が治ったときに、オーラヴ王はレリク王に仕えるための2人の家来をつけ、オーラヴと共に高座にレリクを座らせた。レリクは以前と同じように酒を飲み、相応しい服をまとっていた。レリクは言葉少なく、話かけられた時は端的に応えていた。レリクは日中は常に自身の小間使い少年に命じて他の者達から離れて外に連れ出させていたのであった。ある日、レリクは召使少年をぶった。その少年は王のもとから去り、レリクはオーラヴに少年はもう仕えないだろうといった。それからオーラヴはレリクのために新しい召使と交代させたのだが、どの少年もレリクの振る舞いに耐えられなかった。そしてオーラヴはレリク王にスヴェンという者をつけた。この男はレリク王の親族で、以前は彼の家来であった。レリクはいつも不機嫌で、あいかわらず一人で時を過ごしていたのだが、レリク王がスヴェンと一緒にいた時は機嫌よくおしゃべりであった。レリク王は昔あった事柄や、自身が王であった時の事柄を覚えており、以前の権力、自らの運命、現在の囚われの状態を語った。
「お前や我が親族達は屈しておる。そして我ら血族に行われた恥に復讐するということはわしの責務じゃ。」と彼は言った。
このような危険な話を彼はしばしば口にした。スヴェンは、彼らには今はわずかな力しかなく、大きな力の差で戦わなくてはならないと賢明にも応えたのであった。
「なぜ恥じを傷を抱えて生き長らえなくてはならぬのだ。我らの幸運を試し、「大きな」オーラヴを殺害するのだ。やつは今は何も恐れておらぬ。どうだ1つの計画をたてようじゃないか。わしはどんな事も惜しまぬ。しかしわしは盲目ゆえ何も出来ぬ。お前はわしの代わりにやつに武器を向けることができるじゃろう。オーラヴが殺害されると、やつの領土はやつの敵どものものになろう。予言しよう。そしてわしが王に君臨し、お前はヤールになるのだ。」とレリクは言った。
おいおい何を世迷言を言っておるのだとスヴェンは当初思ったものの、あまりにレリクが熱弁するのでうっかりとこの愚かな計画に首を立てに振ってしまったのである。それから王がエヴェンソングに行った時、スヴェンは彼の前の外側のポーチでマントの下で引き抜いた剣を持って立つことが許された。しかし王がその教会にやって来た時に、彼はスヴェンが予想するよりはるかに早くやって来て、そして彼は王の顔を見た。それから彼は顔を青くして、死者のように白くなり、両手は垂れ下がった。王は彼のおびえに気がついた。
「スヴェンどうした?私に刃向かうというのか?」
スヴェンはマントを投げ捨て、剣を抜き、王の足元に落としてそして口を開いた。
「閣下に栄光あれ。」
王は家来達にスヴェンを捕らえるように命じ、そして彼は鎖に繋がれた。それから王は、以前はレリクは玉座に座っていたのであるが、レリクの席を玉座の反対側にある第二位の席に移し、スヴェンを許し、スヴェンはその地を去っていった。王はレリクに館を与えた。その館ではたくさんの親衛隊が寝たのであった。王はレリクに四六時中付き添うための家来を2人つけたのであった。この2名はオーラヴ王に長く仕え、オーラヴに忠実であった。レリク王はこのような状況下に置かれ、長らく沈黙を保ったので、彼が言葉を発するのを耳にしたものはいなかった。そして口にしたことは機嫌よく愉快なことばかりなので、皆は彼が愉快に過ごしていると思っていたのだが、口にしたことは忌まわしき事柄ばかりであった。彼は酒を勧め、彼のそばにいた者たちを泥酔させた。しかし彼はほとんど酒を口にしていなかったのである。レリクは蜂蜜酒の大樽をいくつか運ばせ、同居人に勧め、それゆえ彼は大変好かれたのであった。
(01.07.29)
オプランド出身のフィン人の「小さなフィン」という名の男がいた。彼は小柄であったが、どんな馬も追いつくことができぬほど非常に足が早かった。スキーと弓の腕前はぴか一であった。彼は長らくレリク王に仕えており、信頼されていた。彼はオプランドの様々な道を知っており、そしてその地の有力者達に知られていた。彼はできる限り監視下にあるレリク王のそばにおり、彼は王に話し掛けた。しかし王は一度にたくさんの会話はせず、回りには悪巧みをしていると思わせたのであった。春が過ぎ、彼らはヴィクに行き、フィンは数日間軍隊から抜けていた。それから彼は戻り、しばらく滞在した。そして軍隊では多くの脱落者がいたので、そのことを気にかける者はいなかった。
オーラヴ王はイースター(1018年4月6日)前にツンスベルグに行き、春をそこで過ごした。そしてその町にはサクソン人、デーン人のたくさんの商船、ヴィクの東部やそれ以外の場所からたくさんの人々がやって来ていた。非常に多くの人々がそこにいたのであった。季節もよく、たくさん酒宴が行われていた。ある夜遅くにレリク王は寝室に入った。彼は酔っ払っており、愉快にしていた。そこへ蜂蜜酒の大樽を持って「小さなフィン」が入ってきた。その酒はスパイスが効いており、非常に強い酒であった。王はそこにいた者たちにどんどん振るまい、そこにいた者は全て酒に酔って寝込んでしまった。その後にフィンは逃げ去ったが、部屋の光はともされたままであった。それからレリク王は彼の家来達を起こし、庭に出たいと言った。夜の帳も下り、火のついたランプを手に出たのであった。庭には入り口の扉まで階段のある大きな母屋があった。レリク王とその家来達が座っていた時に彼らは一人の男が叫ぶのを聞いた。
「バケモノを倒すのだ!」
その叫びの後に衝突音と何かが倒れたような音が耳に入った。
「酔っ払いが騒ぎを起こしておる。行って止めて来い。」とレリク王が命じた。
彼ら2人は走って行き、階段のところまで来た時に、後から来た者がまず攻撃を受け、両者は殺害された。レリク王の家来達がそれからそこにやって来た。しこには彼の軍旗持ちであった「打撃の」シグルドとそれ以外の11名、そしてフィンがいた。彼らは館と館の間に死体を引きずって行き、彼らは王と共に行き、彼らが用意していた小舟で逃げ去った。スカルドのシグヴァットはオーラヴ王の館で寝ていた。その晩に目がさめた彼と彼の召使の少年は大きな母屋に向かった。そして彼らが戻ってきて階段を下りたところ、シグヴァットは足を滑らせ膝を打った。彼は両手を下げた時、何かが下に垂れているのを感じた。
「やれやれ、誰だこんなところで粗相をするのは。だいぶ酒が多かったようだな。」と彼は笑った。
しかし彼らが火のともされた部屋に入った時、召使の少年が言った。
「ご主人、お体が血だらけです。」
「俺は怪我なんぞしておらん。これは悪い知らせだ。」と彼は答えた。
それから彼は仲間の軍旗持ちのトルド・フォラソンを起こし、ランプを手に外に出て、血溜まりを見た。その後すぐに死体を見つけ出した。彼らはすぐに少年をレリク王がいる場所に向かわせた。その館の者達は寝込んでいたが、王はそこにいなかった。彼はその館の者達を起こし、事の次第を伝えたが、だれもレリク王を追おうとしていなかった。
「トルドよ、お前はレリク王を追うか、オーラヴ王に事の次第を報告すべきじゃないのか?」とシグヴァットは言った。
「王を追う気はないな。俺がオーラヴ王に報告してくる。」とトルドが言った。
「朝までかなり時間がある。夜明けまでにレリクは身を隠す場所を見つけるだろう。それからだとレリクを見つけるのは困難だ。死体はまだ暖かい。やつらはまだ遠くに行っていないはずだ。こんな失態を王に報告できぬ。レリクの背信行為を王に伝えるな。お前は部屋でじっとしていろ。」
それからシグヴァットは教会に入り、鐘の打ち手を起こして命を落とした者たちのために鐘を鳴らすように言い、殺害された者達の名前を伝えた。鐘がなり、王がそれゆえに起きてしまった。王は早祷の時間かどうか尋ねた。
「悪い知らせです。レリク王が逃亡し、親衛隊の2名が殺害されました。」とトルドは言った。
そして報告を受け、王は親衛隊を呼び寄せた。そして海路、陸路とありとあらゆる道に派遣した。背高トーレは30名の部下を連れて快走船で行き、日が昇った時に2艘の小さな快速船が行くのを見た。レリク王が30名の部下と共にいた。そしてトーレの船が近づくとレリクは陸に向かって方向を転じ、岸に飛び降りた。しかし盲目の王は船尾に座っていた。その後にトーレの部下は岸に向かって漕ぎ出したが、「小さなフィン」は弓を引き、その矢はトーレの体の真中に突き刺さって絶命した。シグルドと彼の家来達は森の中に逃げた。トーレの家来達は主人の亡骸とレリク王を連れてツンスベルグに戻った。そしてさらに厳しい監視下にレリク王は置かれることになったのだ。
昇天日(1018年5月15日)にオーラヴ王が大ミサに向かった。司教は王を導きながら教会の周りを列を組んで進んだ。そして彼らが教会に戻って来た時に、司教は聖歌隊の北側の玉座に王を導いた。レリク王はいつものように王の隣に席を取り、彼の顔に布をかけた。オーラヴ王が座った時に、レリク王は肩に手を置いて、手探りして話し掛けた。
「随分と立派な布をお持ちのようだな、我が親族よ。」
「大地から天に主が昇天した大事な日だからな。」とオーラヴが答えた。
「お前はキリストに取り付かれているようだが、わしにはお前が言った奇跡の数々なんぞ信じられぬわ。」とレリクが答えた。
そしてミサが厳かに執り行われ、オーラヴ王が立ち上がり、頭上に両手を持ち上げて祭壇に向かってお辞儀をすると肩からマントが垂れ下がった。そしてレリク王はすぐに立ち上がり、ナイフでオーラヴに襲い掛かった。王は頭を下げていたので肩付近のマントにそれは突き刺さった。マントは大きく裂けたが王は怪我1つなかった。オーラヴ王がそのことに気づきひらりと身を返した。レリク王が2度目の攻撃をしたが、それは空を切った。
「「大きな」オーラヴよ。主は目のみえぬわしの前から逃げたか。」とレリクが言った。
オーラヴは家来達にレリク王を教会から連れ出すように命じた。この一件の後に、周りの者はレリク王を処刑することを薦めた。
「今こそレリク王の邪悪なる事に対して、閣下の幸運を確かめる時です。レリク王は閣下のお命を四六時中狙います。もしレリク王を自由にさせると軍隊を連れて閣下に向かうことでしょう。」
「お前の意見はもっともだ。レリクのために命を落とした者は少なくない。しかし私はオプランドの5人の王達を捕らえ、誰一人首を取ることなしに彼らの領土を手中に収めた。彼らは皆、私の親族だ。レリクの首を取ることが正しいことかどうか私は決めあぐねるのだ。」
レリクは話を聞いて、オーラヴ王の肩に手を置いた。なんてことはない、彼はオーラヴがブリニャ鎧を身に付けているかどうか確かめたかっただけであった。とことんこりないレリクであった。
(01.07.30)
そこにはアイスランド人でアイスランド北部のノースランド系のトラレン・ネヴィオルソンという男がいた。家柄はよくはなかったが、頭がよく、演説がうまく、王侯達と対等に話ができた。彼はすぐれた旅行者でもあり、長い間海外で過ごしていた。しかし彼の容姿は醜く、手足の形が悪く、特に足が醜かった。こんな状況下で彼はツンスベルグにいた。彼はオーラヴの知人であった。彼は商船を準備して、その夏にアイスランドに向かおうとしていた。オーラヴ王はトラレンを客人として迎え、彼と会話をした。トラレンは王の部屋で寝泊まりした。ある朝早くに王は目を覚ました時、トラレンの足が片方布団から出ているのを目にした。それから周りの者が目を覚ました。
「いやこれはまたすごいものを見た。この町で一番と思われるぐらい醜い足だ。」とオーラヴ王が言った。
そしてそのことが正しいかどうか回りの者に聞いたところ、周りの者達は同意した。
「これ以上に醜い足を知っております。」とトラレンが答えた。
「ほう、おもしろい。証明してみせよ。」とオーラヴ王が言った。
「これでございます。」とトラレンは言いながら、もう片方の彼の足を布団から突き出したのであった。
その足はやや醜く、つめ先がなかった。
「ほら閣下、こっちの足はつめ先がないのでずっと醜いでしょう。この賭けは私の勝ちですなぁ。」とトラレンが言った。
「どうかな。最初の足には醜い指が5本ついていた。だがこれには4本しかついておらぬ。」と王はまけじと言った。
「これはこれは閣下。では閣下は私から賭けの勝ちとして何をお望みでしょうか?」
「そうだな。レリク王をグリーンランドのレイフ・エリクソンの下へ連れて行くのだ。お前のようなすばらしい旅行者に相応しき仕事だ。」
「では閣下。私が勝った場合時の望みを話させていただきましょう。私は閣下の親衛隊に入りたかったのです。もしこの願いが叶うのであれば閣下の命に従いましょう。」
王はこのことに同意し、彼を親衛隊の一員に任命した。トラレンは旅の支度を整え、レリク王を迎えた。
「オーラヴ閣下。もしグリーンランドにたどり着くことが出来ず、アイスランド等に到着したのであれば、如何すれば宜しいのでしょうか?」
「アイスランドにたどり着いたのであれば、グドムンド・エヨルフソンか法律家のスカフティ、もしくはそれ以外の私の友情を受け入れるゴジ(首領)に彼を引き渡すのだ。もしそれより近い島にたどり着いたのであれば、決してレリク王がノルウェイに戻ることのないように確実に処理するのだ。」
トラレンは海に出て、陸地に向かわぬように細心の注意を払い、アイスランド南部を航行した。その後にグリーンランドへ向かい、嵐に遭遇した。夏の終わり頃に彼はアイスランドのブレイダフィヨルドに上陸した。彼らのもとに最初にトルギルス・アラソンというゴジがやって来た。トラレンはオーラヴ王の命を伝え、彼は受け入れた。その冬、レリク王はトルギルス・アラソンのもとで過ごした。レリクはそこにいることを快く思わず、トルギルスにグドムンドのところへ行きたいと伝えた。彼はメドルヴェッリルのグドムンドのもとへレリク王を連れてゆくために従者をつけた。レリクは彼に歓迎され、2度目の冬を彼のもとで過ごした。しかしまたまたわがままレリクはそこも快く思わなかったので、あまり人がいないカルヴスキンという場所に住まいを与えた。レリクは3度目の冬をそこで過ごした。彼が王位を失ってから最も彼が好きだった場所であったと言われている。次の夏に命に関わる病気に陥り、亡くなった。彼はアイスランドで永眠した唯一の王であると言われている。
トラレンがレリクを連れてアイスランドに行ったその夏に、ヒャルティ・スケッギャソンもアイスランドに向かった。同じ夏にエイヴィンド・ウラルホルンは西方に襲撃に行き、その秋にアイルランドのコノフォゴル王のもとへ向かった。アイルランド王とオークニーのヤールのエイナルはその秋にウルヴレクスフィヨルドで会戦し、それは激戦であった。コノフォゴル王はより多い武力であったので勝利し、ヤールのエリクはたった1隻で命かながら背走した。その秋に彼はオークニー諸島に戻ったが、彼は家来や勝利品の全てを失っていた。ヤールは心中穏やかでなく、アイルランド王に荷担したノルウェイ人を非難したのであった。
さて、やっとここいらで主人公であるオーラヴに話を戻すと、彼はスウェーデン王オーラヴの娘のインゲゲルドを妻に迎える旅につこうとしていた。えり抜きの家来を連れ、有力者、親族を同行させた。一行はコヌンガヘッラに向かった。しかし到着してみたものの、スウェーデン王の姿どころか代理人の姿もなかった。いわゆるすっぽぬかされたのであった。そしてことの詳細を知っているかどうかをヤールのラグンヴァルドに尋ねるために家来を派遣した。
「私はこのことは全く存じませぬ。しかしお望みであれば、お調べいたしましょう。」と彼は誠意を見せたのであった。
スウェーデン王オーラヴ・エリクソンは最初にヴェンドランドのヤールの娘のエドラを妻とした。彼女は以前は囚われの身分で王の女奴隷であった。彼らの子供は、エムンド、アストリド、ホルムフリドである。そしてその後に王は女王との間に1人の息子をもうけ、その子は聖ジェイムスの日に誕生した。その子供の洗礼の時に、司教は彼をヤコブと呼んだが、スウェーデン人はこの名を好まず、決してスウェーデン王はヤコブとは呼ばなかった。全ての王の子供達は容姿がよく、目立つ存在であった。女王は傲慢で、継子たちにつらくあたったのであった。王は息子のエムンドをヴェンドランドに送り出し、彼は母の血族の下で育てられ、キリスト教を守り通すことはなかった。王女アストリドは西ガウトランドのエギルという身分の高い者のもとで育った。彼女は美人で、お話上手で、謙虚で寛容であった。彼女は大きくなってからしばしば父王を尋ねたが、王は傲慢で冷たかった。彼はウプサラのシングで軍隊が王にたてついた時に、頭にきて、このことでヤールのラグンヴァルドを最も責め立てたのであった。彼はその冬のインゲゲルドの婚礼の旅に出る支度をせずにしていたところ、家来達がノルウェイ王との約束を守るのかどうか心配をした。しかしあえてこのことをスウェーデン王オーラヴに尋ねることができるほど勇気がある者はいなかった。そしてまた王女インゲゲルドは頭の痛い問題を抱えることになった。
ある日の早朝、王は自身の鷹と猟犬を連れて馬の背に乗り出かけた。鷹が放たれ、鷹は2羽の黒い鳥を一撃で仕留めた。そしてその後に再び急降下して3羽目を仕留めた。猟犬が走り寄り、地面に落ちた鳥を咥え上げた。王は猟犬に近寄り獲物を取り上げて、自慢気に言った。
「お前達はわしよりも早く獲物を仕留めることはできぬだろう。」
「もっともでございますぅ〜」と太鼓もちの家来達は王の意見に同意した。
王はご機嫌で家路についた。王女インゲゲルドは彼女の東屋から出て、王がガルズに入ってくるのを目にした。王は娘を笑って迎え、すぐに獲物を見せた。
「こんな短時間で獲物を仕留めることができる王が他におらんだろう。」
「ええ、父上が5羽の鳥を捕らえたすばらしき朝ですが、それ以上の偉業がありました。ノルウェイ王オーラヴはある朝に5人の小王を捕らえ、その領土を手に入れました。」と彼女はうっかり言ってしまった。
王はこれを聞いて当然激怒し、馬から飛び降り娘に向かっていった。
「インゲゲルド、お前がお前の望むようにはさせぬ。お前はわしと友情を持つやつ以外の者に嫁がせる。わが国を略奪し、この国を踏みにじったやつなどと友情は持たぬわ。」
こんな風に最悪の状態にことは進んでしまったのであった。
インゲゲルドはこのことを西ガウトランドのヤールのラグンヴァルドに伝えるために家来を遣わせた。そしてつらい中間管理職のヤールはこの事実を知り、最悪の事態が起こらぬように国中に言葉を送り出した。ヤールはまたこのことをノルウェイ王オーラヴに伝えるために家来を送り出した。つくづくついていないラグンヴァルドである。しかし彼の努力とは裏腹にノルウェイ王オーラヴはこのことに激怒して数日間誰も王に話し掛けることができなかった。その後に彼は家来達とフスシングを開催した。元帥のビョルンが最初に立ち上がり、折り合いをつけるためにスウェーデンに向かいたいと言った。彼はヤールのラグンヴァルドが以前に彼に行った好意を伝え、それと同時にその時、スウェーデン王オーラヴがどれほど機嫌が悪かったかも伝えた。
「スウェーデンのヤールのラグンヴァルドや法律家のトルグニィは協力を惜しまず、彼らの助けなしに折り合いをつけることはできませぬでした。同意を破ったのはスウェーデン王自身であります。ヤールを責めないでください。軍隊を率いて進軍するのはどうかと思います。」とビョルンは言った。
多くの者が彼に同意した。戦を望まず、彼らは家路に着く許しを得たのであるが、オーラヴ王は次の夏にノルウェイ全土から徴兵しスウェーデンに向かうと言った。この後に王は北のヴィクに戻り、その秋はボルグにとどまった。彼は冬の支度をさせ、多くの家来達と共にそこで冬を過ごした。
人々はヤールのラグンヴァルドについて様々な話をした。ある者は彼をオーラヴ王の真の友と言い、またある者はその逆であると言った。スカルドのシグヴァットはラグンヴァルドの友でオーラヴ王に彼の話をした。冬の始まりにシグヴァットは2名の男達と共に東のガウトランドに向かった。あれやこれやで途中、さんざんな目に会いやっと彼らはラグンヴァルドのもとにたどり着いた。ヤールは彼に金の環を与えた。その後にシグヴァットはスウェーデン王オーラヴのもとへ行った。その後でシグヴァットはヤールのラグンヴァルドのところへ戻り、しばらく機嫌よくしていた。それからヤールは王女インゲゲルドの言葉を聞いた。ホルムガルド(ノブゴロド)のヤリスレイヴ王からの使者がスウェーデン王のもとへやって来て、ヤリスレイヴ王の代理として王に王女を嫁がせるように要求した。スウェーデン王オーラヴはこの話を快く受け入れた。この時、オーラヴ王の娘のアストリドがヤールのラグンヴァルドの家族のもとへ来ていた。そこですばらしい宴が開催され、スカルドのシグヴァットはすぐにオーラヴ王の事を知った。彼女はまた彼と面識があり、彼の血族のオッタルのためにシグヴァットの姉妹の息子は長い間、スウェーデン王オーラヴと友好関係にあった。そこでたくさん話し合い、ヤールのラグンヴァルドはノルウェイ王オーラヴがアストリドと結婚するかどうかを尋ねた。
「もしノルウェイ王が承諾するのであれば、この結婚についてスウェーデン王に意見を求めることはなかろう。」と彼は今までの経験上賢明な答えをした。
王の娘のアストリドも同じ意見であった。この後にシグヴァットとその一行は岐路につき、ユール前にボルグのオーラヴ王の前に姿をあらわした。シグヴァットはことの次第を王に報告した。シグヴァットは王の娘のアストリドの容姿の美しさと性格を伝え、決して姉妹のインゲゲルドに劣らぬと言った。これは王の心を動かした。しかしこのことをどうスウェーデン王に納得させるかが頭の痛いところであった。
ユール後にスカルドのシグヴァットの女きょうだいの息子のトルド・スコタッコルとシグヴァットの召使少年は宮殿から隠密裏に東のガウトランドに向けて出発した。彼らはヤールの館に到着するとしるしを見せた。すぐにヤールは出発の準備を整え、王の娘のアストリドを従えて、親衛隊と優れた地主達の息子から選ばれた従者100(120)名と共に出発した。その隊列は武器、衣装、軍馬ともにすばらしいものであった。彼らは馬で北上してキャンドルマス(1019年2月2日)に到着した。
オーラヴ王は逸品の品々を用意させ、有力者達を呼び寄せた。ヤールは王に快く迎えられ、すばらしい宴が数日間始まることとなった。王とヤールとアストリドは話し合い、同意がなされた。婚礼の宴の後でヤールはオーラヴ王からたくさんの贈物を受け取り岐路についたのであった。
春が終わって新しい季節に入ろうとしていた時、東方よりヤリスレイヴ王の使者がインゲゲルドの用向きでやってきた。
「もし私がヤリスレイヴ王と結婚した場合、アイデイギャボルグとそれに伴うヤールの領土の権利をいただきたい。」とインゲゲルドが言った。
ホルムガルドの使者はこのことに王の代理として了承した。
「そして私が選んだ者を連れて行き、彼はかの地で栄光を持って迎えられるように望みます。」と彼女は続けた。
スウェーデン王はこれに承諾し、使者もそうした。
「その者は誰だ?」と王が尋ねた。
「親族のラグンヴァルド・ウルフソンです。」と彼女は答えた。
「やつはノルウェイ王に荷担し、わしに背信行為を行った。やつは娘のアストリドをノルウェイ王にさしだしよった。」と王はその意見に反対した。
彼女は王を説得した。ヤールのラグンヴァルドがスウェーデン王オーラヴの目の黒いうちはスウェーデンに入ってはならぬとの条件でそのことが承諾された。ヤールのラグンヴァルドはインゲゲルドがロシアで女王として君臨している時、頼りになる家来であった。それは彼女の救われたからの恩か、別のサガでは彼はロシアでのインゲゲルドの情夫であったと人々は言っていたという話もあったりします。それから彼らは夏にガルダリークに向かい、ヤリスレイヴ王とインゲゲルドは結婚をした。彼らの子供は、ヴァルデマール(ウラジミール)、ヴィッサヴァルド(ヴセヴォルド)、勇ましきホルテである。インゲゲルド女王はヤールのラグンヴァルドにアルデイギャボルグとそれに伴うヤールの領土を与えた。ヤールはそこに長く住むことになり、ヤールとその妻のインゲビェルグの子供はヤールのウルフ、ヤールのエイリヴである。
(01.08,16)
「禿頭の」エムンドという者がいた。西ガウトランドの法律家で、家柄もよく、金持ちであった。ヤールがいなくなった後の最高権力者であった。ヤールのラグンヴァルドがガウトランドから戻って来たその春にシングが行われ様々な問題が話し合われた。彼らがノルウェイ王と和平を結んだためにスウェーデン王が憤慨していることをヤールは知った。ある者はスウェーデンにたてついた時の戦力不足を指摘した。そして結局、ノルウェイ王に助けを求めるという取り決めがなされた。地主達はエムンドにこの使命を託し、彼は30名の家来達と共に西ガウトランドに向かった。そこには彼の親族や友がたくさんいたのであった。彼は事の次第を説明し、皆の同意を得た。その後も旅を続けウプサラに到着するまで同じようなことを行った。
ウプサラで彼は王と謁見した。そして彼は王に話し掛けた。
「ガウト人にまつわる話はこれと言ってございませぬが、ヴェルムランドのアッティがスキーを履き矢を持って森に入りました。彼は最高の狩人です。彼は山でたくさんのリスの毛皮を手に入れてそりを一杯にしました。そして彼は家路についたのですが、そこへ1匹のリスが姿をあらわしました。彼は矢を放ちましたが、それはリスから外れてしまいました。そして彼はどうしてもそのリスを仕留めたいと欲しそりを置いて追いました。リスは身を隠し、アッティはやみくもに矢を放ちましたが決してリスにはあたりませぬ出した。そして彼は暗くなるまでリスを探しましたが、結局捕らえることは出来ずその晩は吹き溜まりで寝ることにしました。次の日、そりへ戻ると、そりはなく、探しましたが見つかりませんでした。そして彼はそのままとぼとぼと家に戻りました。こんな話しかありませんが、如何でしょうか。」と彼は取りとめもない話をした。
「他に報告することはないのか?」と王が応えた。
「ないこともないのですが、ガウティ・トファソンが5隻の船で出帆し、エイケレイェルに停泊していたところ、そこへデーン人が5隻の船でやってまいりました。1隻の船は逃がしたものの4隻の商船とその積荷を手に入れました。ガウティは1隻の船で逃げた船を追いました。運悪く海が荒れ、デーンの船を取り逃がしました。そしてガウティは海が荒れたため座礁し、ほとんどの家来と積荷を失ったのです。後に残されていた彼の家来達は、そこに現れた15隻のデーン人の商船に襲われて全て奪われてしまいました。まぁ、なんと申しますか、欲張りの代償と申しますか・・・」とエムンドは言った。
「それは大変な話で、腹立たしい話だな。そしてお前の使命とやらを聞かせてもらおうか。」と王はむっとして答えた。
「ウプサラの法とわれらの法がどれほど違えるかを王に説明するという大変難しい使命でございます。」
「話してみろ。」と王がご機嫌斜めでエムンドに言った。
「同じような家柄の出で、財産と考えが異なる2人がいまして、彼らは領土について争いあい、互いに悪く言っております。そしてシングで判決が下されるまで一番の権力者であった彼は賠償を支払わなくてはならなかったのです。最初にガチョウへの代償としてガチョウの雛を、年老いた雌豚の代償として子豚を支払いました。焼けた黄金1マルクの代償には黄金半マルクを支払いましたが、もう半分は粘土と泥でございました。我が主、これをどう思われますか?」とエムンドは言った。
「判決に従うまでだ。もし1年以内に行わなければその者は追放され、土地の半分は王が没収し、もう半分は償うべき者への代償となろう。」と王が言った。
エムンドはこの王の言葉の証人としてその場にいた者たちになってもらい、ウプサラのシングで公示された。その後に彼は王のもとから立ち去った。しかしある者たちが王に不満を漏らした。王はエムンドがどこにいるかと訊ねた。
「エムンドを客人として連れて来い。」と王が言った。
そしてその後に食事と楽団が用意された。王は非常に機嫌がよく、その宴には有力者達もいた。次の日、王は賢者達を呼び寄せた。そして会議が行われ、助言を与えるべく12名の賢者が席についていた。
「昨日、エムンドがわしに話した話のことだ。やつは一体、なにを言わんとしていたのだ?恐らく、わしとオーラヴの事だろう。」
「まこと、その通りです。」と賢者達が言った。
「閣下はオーラヴに神々の子孫であられまする王女インゲゲルトとの婚姻を約束なされたが、今、彼は王の娘とは言え、ヴェンドの奴隷の出です。」と盲目のアルンヴィドが言った。
そこには3人の兄弟がいた。長男は盲目のアルンヴィドで、次男はどもりのトルヴィドで、三男は耳の遠いフレイヴィドであった。
「エムンドが言ったアッティは何を意味するのだ。」と王が訊ねた。
「アッティ、喧嘩好き、欲深い、悪い考え、愚か者、口がきけない。」とどもりのトルヴィドが答えた。
「なんだと。」と王が怒ったので耳の聴けないフレイヴィドが口を開いた。
「お許しあれば答えて差し上げましょう。閣下がノルウェイ王との約束を守らなかったということを示しております。最大の悪は閣下がウプサラのシングで下された判決に従わなかったということでございます。スウェーデンの強き軍隊が閣下に従う限り、なんら外国を恐れる必要はございません。しかし国民が閣下に刃向かえばどうなりましょうか?」
「その反乱軍の首領は誰だ?」と王が訊ねた。
「全てのスウェーデンの民は自らの法と権利を持つことになるでしょう。ここにいる首領の数なんぞたかが知れておりまする。それ以外の有力者達はすでに馬を駆っていることでしょう。」とフレイヴィドが言った。
「よき助言を与えよ。わしは全スウェーデンの民を敵に回す気はない。」と王が答えた。
「閣下がアロス(現ウプサラ)へ下り、船でレグリンへ向かうのです。そしてそこで人々を平和裏に集めるのです。」と盲目のアルンヴィドが言った。
「よしその通りにしよう。お前達は信頼が置ける、わしについて来るのだ。」
「自分、残る。ヤコブ、行く。ヤコブ、役に立つ。」とどもりのトルヴィドが言った。
そしてこの計画に従い、王は船に乗ってレグリンへ向かった。そしてそこでたくさんの家来を抱えることになった。そしてフレイヴィドとアルンヴィドはウッララケルに馬で向かい、彼らと共に王子ヤコブを連れて行ったが、彼らはその事を秘密にしていた。彼らは地主達が日中問わずシングを行っている場所へ向かった。そして彼らはその仲間に入ったのであるが、もはや民衆の心が王にないことを知ったのであった。事ははるかに悪い自体に進んでいたのであった。そして彼らはその地の首領達と会合を行った。
(01.09.08)
彼らはオーラヴ・エリクソン王を国から追い出すことで一致し、フレイヴィドとアルンヴィドがそのリーダーであった。そしてエムンドはこの計画を遂行した時にどうゆう結果がもたらされるかを考え理解した。その後に彼は兄弟達の下へ行き、話し合った。
「オーラヴ・エリクソン王の首を取った時、お前はどうするのだ?王がお前になにかしたのか?我ら奥スウェーデン人達は、我らのこの時代に古から続く王族をこの国から追い払おうという愚かな行いはしたくはないだろう。オーラヴ王には2人の王子がいる。その内の1人を王にすればよかろう。2人の王子は家柄が違う。一人は生まれがよいが、もう一人はヴェンドの女奴隷の子だ。」とフレイヴィドがエムンドに言った。
このことに同調した者達はヤコブを次期王に選出することに一致をした。この後にフレイヴィドとアルンヴィド兄弟はシングでヤコブを王に選出することを宣言したのであった。そしてその時10〜12才であった王子はアヌンドの名が与えられたのであった。この後、あれやこれやと執り行われ、オーラヴ王は生きている間は王の座を追われず、平和的に過ごすことを約束されることになった。今や王となったヤコブ王子改めアヌンド王も父王のように大きな領土を持ち、親衛隊も多く抱えることになったのだが、もし父王オーラヴが豪農達に不満を与えたならば、彼ら達と共に父王に向かっていかなくてはならないと取り決められた。そして全てのことが整えられた後に死者達はノルウェイ王オーラヴとの話し合いをするために北に向かった。ノルウェイ王オーラヴはこの知らせを聞いて、以前のようにスウェーデンと仲良くすることを約束した。そしてノルウェイ王オーラヴは義父のスウェーデン王と会うために出発し、シングが執り行われ、その平和を約束したのであった。賢者トルケルがヒシングという州の話をしだした。その州は時折、ノルウェイと行動を共にし、時折、ガウトランドとも行動を共にしていたと切り出した。そして王達はその州の所有はサイを両者がふり、より多い目を出したものが手に入れることを合意した。そしてスウェーデン王がまずサイを2つとって投げたところ、両方のサイは6の目を出したのであった。そしてノルウェイ王オーラヴがサイを投げようと2つのサイを手に入れて振っているとスウェーデン王は口を開いた。
「おぬしは投げる必要はない。我が神オーディンは我に勝利をもたらしたのだ。」
「我が主キリストの力を借りて6の目を2つ出すことはたわいもないことだ。」とノルウェイ王は切り替えした。
その後にノルウェイ王がサイを振ると、なんと2つとも6の目を出したのであった。そして勝負は持ち越され、再度スウェーデン王はサイを投げると、これまた6の目が2つ出た。その後ノルウェイ王がサイを投げると、これまた奇跡が起こり、2つのサイは6の目が出て、その上に1つのサイがかけ、そのかけらは1の目を出したのであった。そしてノルウェイ王のサイの目の合計は13になり、州を手に入れることになった。その後、すっかり丸め込まれたスウェーデン王とノルウェイ王は仲良く別れたのであった。
ノルウェイ王オーラヴはこのことの後に家来達を引き連れてヴィクに向かった。彼はツンスベルグに行き、しばらく滞在した後に北上し、秋にはとトロンヘイムに到着して冬を過ごした。オーラヴはハーラル美髪王が所有したノルウェイの領土を単独で所有し、平和裏にスウェーデン王が所有していた上述は土地は平和裏に手に入れたのだが、デンマーク王が所有していた場所は武力によって手に入れられ、他の土地と同様の統治が行われていた。その時、デンマークのクヌート王がイングランドとデンマークの両国を支配し、多くの時間をイングランドで過ごしていたのであった。クヌート王はデンマーク中に首領達を置いて統治させ、ノルウェイにはその支配権というものは及んでいなかった。
オークニー諸島はハーラル美髪王の時代に定住され、最初のヤールはエイステインの息子のシグルドで、彼にはメーレのヤールのラグンヴァルドという兄弟がいた。シグルドの後は息子のグソルムが1年間ヤールであった。その後はヤールのラグンヴァルドの息子のエイナルがヤールの領土を手に入れて長い間その場所を統治した。
(01.10.15)
ここから話はオークニー諸島に場面を移すのである。ハーラル美髪王の時代シグルドとう者がその島々のヤールとなって以来、ノルウェイ王とのいざこざが少なくない。「大きい」ヤールのシグルドはオーラヴ・トリュグヴァッソン前王に改宗のことで恨みがあった。彼はスコットランド王メルコム(マルコム・マックケネス1005年〜1034年)の娘と結婚し、トルフィンという息子をもうけた。それ以外の年長のヤールの子供達は
スマルリデ、ブルース、「曲がり口」エイナルである。オーラヴ・トリュグヴァッソンがスヴォルドで戦死したのを聞いてこれ幸いに、彼は数年後にアイルランドに向かい、その地を支配するために年長の息子達を置いたのである。トルフィンは母方祖父のスコットランド王のもとへ遣わせた。その旅でヤールのシグルドはブレインの戦(1014年4月23日のダブリン近郊のコロンタルフの有名な戦の北欧語の呼称)で命を落とした。父ヤールの死後、スマルリデ、ブルース、エイナルの3人で領土を3分割して納めた。ヤールの死がスコットランド王の耳に入り、王はトルフィンにカイスネスとスザーランドの地をヤールの称号と共に与え、家来も与えたのである。彼は心身ともに立派で武勇に優れてはいるものの、ブサイクで欲張りで狡賢い男と言われていた。
エイナルとブルースは正反対の正確であった。ブルースは穏やかで、賢明な者で、人を大切にした。エイナルは頑固で内気で不親切で欲張りであったが武には優れていた。スマルリデはブルースのような心の持ち主であった。年長の彼は短命で、藁の死を向かえた。その後にトルフィンがオークニー諸島での自身に割り当てられる領土を主張した。エイナルは父ヤールのシグルドが所有していたカイスネスとスザーランドを与え、エイナルはオークニー諸島の3分の1以上の分け前を要求したが、トルフィンと折り合いがつかなかった。そしてブルースが権利放棄することになり、エイナルが島々の3分の2を手に入れることになったのである。彼は力を付け、その夏にはヴァイキングに行き、たくさんの戦利品を手に入れた。それに従った農民達は精根尽きたのであるが、ヤールのエイナルはそんなこともお構いなし、ますますの重荷を課して苦しめた。その後に飢饉が起こったが、農民達はそれに大きな犠牲を払うことになった。一方、ブルースの領土では豊作で皆が幸福であった。
ラウパンダネスのサンドヴィクのロッセイ島(オークニー諸島最大の島)にアムンドという有力者がいた。その息子はトルケルで勇気有る者であった。アムンドは見識者で身分も高かった。ある春にヤールのエイナルが農民達を招集した。その場のあちこちで不平不満が現れ、アムンドにぶつくさとぶーたれたのである。
「ヤールはああゆうお方だ。我らの言葉に耳を貸すとは思われぬ。私がヤールとぶつかることは避けたいのだ。」
そうやって彼に断られた農民達は次にトルケルに相談した。彼らは執拗に食い下がったので、嫌々ながら彼は承諾したのである。次のヤールが招集したシングでトルケルは農民達に代わって演説をした。
「もう少し農民達を気遣ってもらえぬでしょうか?貴殿は私の話に同意すべきだ。」
農民達は拍手喝采、トルケルに感謝してのである。ヤールはヴァイキングに行き、その秋に戻ってきた。春が過ぎ、習慣に従いシングを開催し、農民達に招集をかけた。その時もトルケルは農民達に負担をかけぬようにエイナルに申し出た。するとヤールは怒涛のように怒りだし、収拾がつかぬ間にシングは閉会した。アムンドはこの事情をしるやいなやトルケルに逃げるように言った。彼はヤールのトルフィンのもとへ行き、彼に仕え、トルケルの養父と呼ばれるようになった。ヤールのエイナルのせいでオークニー諸島の者達は先祖伝来のオダルの地を捨てなくてはならぬものたちが少なくなかった。そのほどんどがトルフィンのもとへ逃れてきた。ヤールのトルフィンが成人すると、ヤールのエイナルにオークニー島々の3分の1の領土を要求した。もちろんエイナルは了承せず、トルフィンは派兵することになった。エイナルはそれを聞き知ると徴兵したものの、両者互いに戦なしに話し合いでトルフィンの要求通りに決着した。しかし結局、エイナルはブルースの領土を取り込んでエイナルが単独支配権を握ることになった。どちらか一方の長生きした方が最終的にその領土の所有者となるということで決着したかのように思えた。しかしブルースにはラグンヴァルドという息子がおり、エイナルには息子がいなかったので、不公平な取り決めであった。ヤールのトルフィンは領土を統治させるために家来を置き、自分はもっぱらケイスネスで過ごした。ヤールのエイナルは夏はアイルランド、スコットランド、ウェールズでヴァイキング行きを決行し、荒らし巻くって悪行三昧を行っていた。ある夏、アイルランドを襲撃した時に、アイルランドのコノフォゴル王とウルヴレクスフィヨルドで戦い、大敗をきし、多くの家来を失った。その夏が過ぎ、エイヴィンド・ウラルホルンという者がアイルランドがからノルウェイに向かった。しかし悪天候に見舞われ、あらがう波に難儀し、オスモンドウォールに停泊を余儀なくさせられていた。そしてこの事をしるやいなやエイナルは軍を引き連れ出帆し、エイヴィンドを捕らえて殺害した。エイヴィンドに従った家来達は罷免され、秋にオーラヴ王のいるノルウェイに向かった。彼らは王に主人の死を知らせた。王は多くを語らなかったが、その損害は大きなものであった。ヤールのトルフィンは養父トルケルを徴収のために島々に送り出した。エイナルはトルケルに非難をし、彼はすぐにケイスネスに向かった。
ヤールは困り果て、トルケルをオーラヴ王の下へ遣わせた。その早春に王はヤールのトルフィンにノルウェイに来るようにとの命を持たせて、1艘の船を派遣したのである。ヤールはその言葉に友情の下に従い、遅れることはなかった。
ノルウェイに到着するとヤールはとても快く向かえられ、夏を過ごしたのである。そして再び故郷に戻る時、王は彼に見事なロングシップを与えた。ヤールのトルフィンは秋には故郷に戻った。エイナルがこれを聞き知り、多くの兵を集め、船に乗り込ませ待機させた。ヤールのブルースはこれに折り合いをつけ、誓いでその約束を固めたのである。養父トルケルもヤールのエイナルに音便に事を運び、互いに祝宴を開き招待しあうということで折り合いをつけた。ヤールはまずサンドウィッチのトルケルを訊ね、酒がどんどん振る舞われたのにもかからわず、ヤールは不機嫌であった。ヤールの出発日にトルケルは開いての祝宴に向かおうとしていた。トルケルは偵察隊を送り出し、彼はは戻ってきて報告した。
「この先に3人の伏兵がおりました。間違いなく彼は背信行為を行うでしょう。」
トルケルは報告を受け、出発を遅らせた。屋内のいろりでは火が焚かれていた。トルケルが館内に入り、その後に東フィヨルド出身のアイスランド人のハルヴァルドがやってきた。彼は扉に鍵をかけてヤールに近づいた。
「準備は整ったのか?トルケルよ。」とヤールは言った。
「準備は整いました。」とトルケルが答えるやいなや、彼はヤールの頭を強打し、ヤールは床に崩れ落ちた。
彼はヤールの首に斧を振り下ろし、そしてベンチに引き吊り上げた。トルケルとその家来達は反対側の扉から外にでた。エイナルの家来達が館内でヤールの死に気付いたのだが、皆が気落ちしていたので誰も血讐の言葉を口にしなかった。トルケルはその者達にも信望があったという幸運もあった。彼はオーラヴ王の下に行き、王に誉められ、冬を王のもとで過ごしたのである。
ヤールのエイナルの死後、ヤールのブルースはエイナルの領土を手に入れた。トルフィンは彼と島々を当分することを望んだが、ブルースが3分の2を治めていた。翌春、トルフィンがブルースにその旨要求した。ブルースはトルフィンの母方祖父のスコットランドの後ろ盾もあって、この状態で対立する気にもなれなかった。ブルースはオーラヴ王のもとへ行き、10才の息子のラグンヴァルドをお供させた。王は彼を歓迎し、王にことの次第を相談した。あれやこれやで「オークニー諸島は伝来ノルウェイ王の持ち物で、ヤールは単に置かれているにすぎない。」とオーラヴ王にいいくるめられ、王の家来になり身の安全を保証された代わりに彼が先祖伝来所有してきたオダルの土地を王に献上する運びとなったのである。
ヤールのトルフィンは兄のブルースがオーラヴ王の助けを求めてノルウェイに行った事を聞き知った。しかし彼は以前にノルウェイ王オーラヴと友情を交わしており、問題ないと考えた。トルフィンもまたオーラヴのもとへ行ったが、上記のように話は終結しており、彼が到着した時には彼が思っても見ない方向にすすんでいた。彼はブルースが王に権利委譲したことを知った。
「私は王との間に友情があることを心得ております。しかし私は今やスコットランド王のヤールであり、貴殿に服従する気はございませぬ。」と彼は強い口調で言った。
それを聞いたオーラヴ王は、
「そうか、お前が我が家来とならぬのであれば、オークニー諸島に私の息のかかった者をおかなくてはならぬな。そしてお前はその領土を求めず、私に刃を向けぬと誓うのだ。」
ヤールはこの件について来夏までしばらく考えさせてくれと要求した。王はそれを了承した。養父トルケルはオーラヴ王のもとに留まることになり、ヤールのトルフィンには1人の密偵を送り出した。ヤールはこの時は自身の勝利を疑わなかった。しかし結局、彼はブルースのように王の家来になることに承諾したのである。王は彼の承諾を鵜呑みにせず、彼を疑ったのである。
オーラヴ王は熟考し、シングを行い、ヤールを召還した。
「私とオークニー諸島のヤール達とで取り決められたことを公言しよう。彼らは我が要求を受け、私の家来となり、領土の権利を譲渡した。ブルースには3分の1を、トルフィンには3分の2の封土を与えよう。だがエイナルが所有していたものは我が相談役であり親友であったエイヴィンド・ウラルホルンの殺害の代価として私のものだ。」と王が言った。
そしてそれら全てにヤール達は同意し、終結した。オーラヴ王は3名の借地権保持者にエイナルの死の多くの代償を課した。その3分の1は彼の罪のために放棄されたのであった。それからヤールのトルフィンは王に暇乞いをし、承諾を得ると準備を素早く行った。ヤールの準備が整い、彼が船で酒を飲んでいた時、トルケル・アルネソンが突然彼の前に姿を現し、ヤールの膝に頭を置いた。ヤールはこの行為の理由を聞いた。
「我らは王の判断に従い、誓いを立てた。立つのだ、トルケル。」
「私とブルースの事柄においては王に従いましょう。しかし主と私の間にある事柄についてはお主が決めるのだ。たとえ王が私の所有とオークニー諸島に住む権利を与えたとしても、ヤール、お前の許しなしに島にいることは適当ではないとお前が思っていることは承知している。たとえ王が許しても決して私は島には近づきませぬ。」とトルケルが言った。
「もしトルケル、お前が王ではなく私に従うのであれば、お前は私と共にオークニー諸島に行き、私のそばにいるのだ。私の承諾なしに私のもとを去ってはならぬ。我ら両者が生有る限り我が領土を守り、我に従うのだ。」と彼は言った。
「お主に従いましょう。命有る限り。」とトルケルが誓った。
彼らは出発し、再びオーラヴ王と会いまみえることはなかった。ヤールのブルースはその後も滞在し、彼の出発前に会合が行われた。
「ヤールよ。私は海の向こうにお前という信頼できる者を置けることを誇りに思う。お前の身を保証しよう。だがお前の息子のラグンヴァルドは私の下で奉公をさせるのだ。」と王が言った。
もちろんこれは人質というわけである。こうやってブルースは領土の3分の2を手に入れた代わりに大きな拘束を強いられたのである。オーラヴ王の下に留まったラグンヴァルドは容姿端麗で、絹のような金色の髪を持ち、背も高く、若く強く、知恵に長け、慎み深く、非の打ち所がなかった。この後、彼は色男にムッとするブサイクとまでいかないが男前とは決して言えないオーラヴに長く仕えることとなった。
トルフィンとブルースの兄弟はオークニー諸島に戻り、統治した。トルフィンはあいかわらずケイスネスかスコットランドにいたので、家来を置いた。ノルウェイ人やデーン人のオークニー諸島でのヴァイキング行為を行った。ブルースはトルフィンがオークニー諸島やシェトランド諸島に軍を配せず、そのくせ手に入れるものだけはきっちり手に入れていたので不平不満を言った。そうするとトルフィンが領土の鳥分を入れ替えて3分の2の権利を譲れば、軍を配して領土を護ると提案した。この申し出はすぐには認められなかったが、結局その通りとなったのである。その時期は丁度、クヌート王がノルウェイからオーラヴ王を追い出してノルウェイを手に入れたのと同じ時期だと言われている。トルフィンは有力者となり、スコットランドとアイルランドにも大きな領土を持ち、偉大な戦士の1人となったのである。彼は5才の時にヤールの領土を手に入れてから、60年以上もの間、統治をし、ハラルド・シグルソン(苛烈王)の治世の終わり頃に息を引き取ったと言われている(1064年死亡)。一方、ブルースはオーラヴ・ハラルソン(聖オーラヴ)の死後、しばらくしてクヌート北海大王の時代に亡くなったと言われている。
(02.03.26)
さてそろそろ当サガの主人公に話を戻すと、オーラヴ・ハラルソンノルウェイ王はスウェーデン王オーラヴと和解をしてその夏にトロンヘイムに向かった。その後、彼が玉座に5年間座っていた。その秋、冬とニダロスで過ごした。その時、王はどのようにこの国でキリスト教を押し進めていくか考えた。キリスト教は一度は北のハロガランドに達したものの、護られて居らず、ナウムスダーレと内トロンヘイムで厳守されていたのもわずかの間であった。「スカルド詩をまき散らす者」エイヴィンドの息子のハレクという者がいた。彼はハロガランドのティヨッタ島に住んでいた。彼は金持ちではないが、血筋はよく、勇敢であった。ティヨッタには数件の小規模な農場があった。ハレクはまずこじんまりした農場を手に入れて住んだのである。しかし数年の間に彼は以前にいた農民達を追い出し、大きな家を建てた。そして彼は豊かになった。ハレクはそうゆうことで今やその地の首領達の中で主要な地位にいると思っていた。彼の父方祖母のグンヒルドはヤールのハールヴダンとハーラル美髪王の娘のインゲビョルグの娘であった。ハレクは壮年であったが有力者で、フィン人の交易において独占権を保持していた。時として単独で権利を所有し、時として他者と共有した。彼はオーラヴ王のもとへ出向いたことはないが、使者は行き交い、上手くいっていた。オーラヴ王は翌夏に領土の最北端のかの地に向かおうと思ったのであるが、ハロガランド人立ちはこれについて顔を曇らせていたのである。
春になるとオーラヴ王は5艘の船と300(360)名の家来と共に出帆した。ナウマダーレ州に到着するとシングを招集し、キリスト教を強く後押しする宣言をしたのである。そして従わぬ者には罰を与えると取り決めたのである。こうして同時に王権も確たるものへとしていったのである。その後にハロガランド中をくまなく行き、ハレクは王のために祝宴を整えた。その宴はすばらしく、それからハレクはその州の首領になったのである。王は彼に歴代の王がしていたように、彼に借地権を与えたのである。
やや年老いた金持ちの農民のグランケルという者がいた。彼は若い頃、ヴァイキング行きで活躍し、武勇にすぐれ、優秀な戦士であった。その息子アスムンドも父に引けを取らぬ者であった。彼はノルウェイにおいて容姿、強さ、才能のある者の3指に入るといわれていた。後の2指は、いわずもがなアセルスタン王の養い子ハーコンとオーラヴ・トリュグヴァッソンである。グランケルはオーラヴ王を最高の祝宴でもてなした。グランケルはかずかすの名品を王に贈り、そして見送った。王はアスムンドに親衛隊に入るように言うと、彼はその言葉に従うことになった。オーラヴ王は夏のほとんどをハロガランドで過ごし、シングというシングに出席し、熱心に民衆を洗礼したのである。その当時「犬の」トーレはビャルケイ(トロムソのヒッネイ州の北部)に住んでいた。彼はその地の最高権力者で、その州のオーラヴ王の首領になった。多くの豪農の息子達は王の親衛隊に入ることとなった。夏の終わりに王は南下し、ニダロスに向けて出帆した。その冬に養父トルケルがヤールの「ゆがんだ口」エイナルの殺害後にオークニー諸島からやって来た。その秋にトロンヘイムでは飢饉が起こった。北に行くほどそれは酷くなる一方であった。しかし東方のオプランド等では豊作であった。トロンヘイムも古穀物を貯蔵していたので大した不足もなく過ごすことができたのである。
その秋にオーラヴ王の耳に内トロンヘイムの農民達が冬の供犠祭を行ったとの情報が舞い込んできた。そこでは古き神々がいまだ信奉され大いなる供犠が行われた。それは豊作祈願のために行われたのである。ハロガランドではキリスト教に改宗したために古き神々の怒りで飢饉が起こったと信じられていたからである。王は家来を内トロンヘイムに送り出し、適当と思われる者達を呼びつけた。その中には「卵の」エルヴィルがいた。彼は血筋も良く、有力者で農民達の代表であった。王は彼に農民達の背信行為について問いただした時、エルヴィルは答えた。
「わが地では結婚の宴や、友情のための宴以外は行われておりませぬ。酔っぱらいの戯れ言ではござりませぬか?」と堂々と王に言った。
こうして彼は農民達を擁護したが、王はそのしるしが必要だと応え、彼に信仰がまもられているという証人をその地から連れてくるように命じた。彼はその命を携え、帰路についた。
その後の冬に内トロンド人立ちはメーレンでシングを開催し、穏やかな冬を祈願して供犠祭を行うと取り決め、王に伝えた。王はその事実を知るやいなや家来を遣わし、農民達に招集をかけた。農民達はまたもやこの厄介事をエルヴィルに頼み、彼は王のもとへ出向いた。王は当然のように古の悪習の責任を追求した。
「確かに我らはユール祭を行いましたが、王の名の下に酒を飲み交わしたのです。この飢饉で農民達は十分に準備もできず、料理が残ったということはございません。閣下、メーレンでは祭はなによりの楽しみなのです。」とエルヴィルは言った。
王の口は重く、立腹は見て取れた。そしてゆっくりと口を開いた。
「このままで済むと思うな。」
彼らは王がいかほどに怒っているかを知り、故郷に帰ってそれを皆に伝えたのである。
オーラヴ王はイースター(1021年4月2日)を盛大に行い、同様に農民達、町人達にもそれを行うように命じた。その後に船団の準備を整えた。イースターの後に王はヴェルダーレに家来を遣わし、そこには家令のトラルドがいた。彼はハウグ(ヴェルダルセラとスティクレスタドの間の西ヴェルダーレ)の王の土地を所轄していた。王は彼にすぐに来るように命じ、トラルドはそれに従い、使者達と共に出発した。王は彼を部屋に呼びつけ、内トロンド人の悪習について事実かとうか訊ねた。
「キリスト教徒はいるものの、内トロンヘイムはほとんどが古の神々を信奉しております。昔の習慣の通り、収穫の供犠、冬至の供犠、夏至の供犠の3祭が行われています。夏至の供犠で夏を迎え、祭にはエイネルの民、スパルビャッゲルの民、ヴェルデレルの民、スネイネルの民がいます。供犠を行う担い手が12名がこの春にその任を受けるのです。祭の準備を行い、運ぶ手筈です。」とトラルドが応えた。
王は事の次第をしるやいなや、準備を整え、船団を派遣した。王は舵手、漕ぎ手、指揮官を指名した。王は5艘の船で300(360)名を引き連れ曳航した。良風に恵まれ予想を遥かに上回る早さでメーレンに到着したのである。その後に上陸し、館の回りを取り囲み、エルヴィルを捕らえた。たくさんの者達はその時、殺害された。祭のための品々は戦利品として没収された。そして王は民衆達を再び正しき信仰へ導き、教会を建てさせた。そうしてエルヴィルの補償もせず、ニダロスに戻っていった。
「首吊り台の」トルステインの娘のソーラと結婚したアルネ・アルモドソンという男がいた。その子供はカレヴ、フィン、トルベルグ、アムンド、コルビョルン、アルンビョルン、アルネ、テョッタのハレクと結婚したラグンヴァルドである。アルネは地主で身分も高く、オーラヴ王の友情を受けていた。カレヴ、フィンの息子達h亜オーラヴ王の親衛隊に身を置いていた。「卵の」エルヴィルの妻は若くて美人で血筋も良く金持ちであった。彼らには2人の幼い息子達がいた。カルヴ・アルネソンはエルヴィルの妻と王が結婚するように提案し、それによってエルヴィルの権利を守り、地主とさせ、内トロンドの管理を手に入れたのである。カルヴはいまや大首領となり、非常に頭の回る男であった。
オーラヴ王は7年間ノルウェイで過ごし、夏にオークニー諸島のトルフィンとブルースが訊ねてきた。その夏にオーラヴ王は北部南部の両メーレをくまなく行き、秋にラウムスダーレに行った。そこで上陸してオプランドに向かい、レスヤルに行き、そこでキリストを讃えるか、死や国外追放のどちらかの選択を迫ったのである。キリスト教を受け入れた者も王に人質として息子を差し出さなくてはならなかった。レスヤルのボラレに王は聖職者を置いた。この後にオルケダーレ、リャルダーレ、スタヴァブレッカに向かった。谷を抜けてオッタ川が曲がりくねり、その両側に美しいロアル州があった。
「あのような美しい地が焼かれるのは悲しいことだ。」と王が言った。
そして王は谷に下りて行き、その晩は岬ですごした。そこで5夜過ごし、シングを招集した。ここでも王は先の選択を迫ったのである。
ダーレのグドブランドという者がおり、ダーレの王のように振る舞っていたが、その位はヘルシル(軍区の首領)であった。スカルドのシグヴァットは権力と財力においてはエルリング・スキャルグソンと同じくらいであった。
グドブランドには息子が1人いた。オーラヴ王がロアルに来てキリスト教を強いているとの話を聞いた時、彼は戦の矢を放ち、フンドトロプに集まるように招集をかけた。レグルという水辺あたりに皆がやってきて、それは大群衆に膨れ上がった。
「オーラヴは我らの神々を凌駕する1人の神がいると唱える。我らはトール雷神の神殿を護り、トールがやつを打ちのめすと声高らかにここで言おう。」とグドブランドはシングで述べた。
そして大きな雄叫びが起こった。その後に北のブレイダ(セル州)の様子をうかがうために800(960)名の家来を選抜し、この軍勢の指揮官はグドブランドの18才になる息子であった。軍団がホヴというガルズに到着した。そこにオーラヴ王のキリスト教を強いるシングの決定から逃げてきた者が次々と集まってきた。しかしオーラヴ王とシグルド司教はロアルとヴァガに聖職者を配していた。彼らはウルゴレストを行き、ウサにやってきた。そこで彼らは大軍勢を目にした。ブレイダの農民達もその大軍勢に加わるべく準備を整えた。王は鎧を着け、出帆した。そして岸に着くと馬に乗り換え大軍勢に向かい、農民達にキリスト教を受け入れるように命じた。話し合いは折り合わず、雄叫びが起こり、盾を武器でうちならして戦意を示した。王軍が投槍を行うと、農民達は敗走し、そこに留まったのはわずかであった。そうしてグドブランドの息子は捕虜となったが、オーラヴ王は彼を助命し、そばに留めたのである。
「王が出向くとそなたの父に伝えるよい。」と王が言った。
そうして彼は家路につき、戦や様々な出来事を父に伝えた。父は難問に頭を悩ませることになった。グドブランドはその晩、夢を見た。畏怖の念を抱かせる立派な男が彼に会いに来て話しかけた。
「お前の息子は王に勝つことはできなかった。お前は王に刃向かうのであれば、それはよい結果をもたらしせぬ。お前の軍隊は散り散りになり、狼どもはお前の腸を引きずり出し、鴉どもはお前の死体を引きちぎるだろう。」とその男は語った。
グドブランドはこの夢を恐れ、ダーレの首領のトルドに相談を持ちかけた。
「実はな、わしも同じ夢を見たのじゃ。」と彼は言った。
その朝にシングを行い、グドブランドの息子に言った。
「王と折り合いを付ける。そのためにお前は12名の者達と共に行くのだ。」
王にそれが伝えられると、王はそれを受け入れ、シングを行うために向かった。その日は土砂降りであった。王は立ち上がり、レスヤルとロアルとヴァガの民衆にキリストを受け入れ、古の神々の神殿を破壊するように命じた。
「我らはキリストが誰か知りませぬ。しかし古の神々は我らのすぐそばにおる。我らはそれを肌で感じています。だが、どうでしょう、王の神キリストとやらはここにはいませんようですな。それはこの天候が示しておりまする。どうでしょう、閣下、明日はそのキリストとやらにお願いして晴天とは申しませぬ、せめて曇りにでもして頂けたら我らはそのキリストとやらを感じることができましょう。」とグドブランドが言った。
それから王は人質のグドブランドの息子を引き連れて仮住まいに戻っていった。王もその代わりとなる人質を農民達に差し出していたのである。その晩、王はグドブランドの息子に古の神々について訊ねた。
「トールは大きく、手に槌を持っているのですぐに判ります。トールの木像の内部はくり貫かれています。銀がふんだんに施された木像は神殿の外に出された時は台の上に鎮座します。それには4個のパンと肉が備えられます。」と言った。
その晩、王は祈りを行っていた。日が昇り、王は朝の祈祷を済ませ、食事を取った後にシングに向かった。天候はグドブランドが望んだようになっていた。それから司教が祈祷のケープをまとい、司教冠を被り、手に杖を携えて立っていた。彼は農民達に教えを行い、神のなせる技を語り、語りは見事なものであった。それから「大きな獣の胃の」トルドが応えた。
「角の生えたお前さんは羊の角みたいな杖を持ってよくおしゃべりした。しかし残念なことに神の印とやらはどうなったんだ?お前の神とやらにお天道様が燦々と輝くようにてもらわんことにはわしらは納得せんぞ。さぁ、わしらに従うか戦のどちらかを選ぶんだな。」と言った。
そして解散したのである。
フィヨルド出身の「強い」コルベインは王の親衛隊の一員であった。いつも腰に大剣を帯び、手には棍棒が握りしめられていた。王はコルベインに朝は隣にいるように命じ、その後に家来達に言った。
「夜に農民達の船という船に穴を開けるのだ。そして奴らの馬を遠くに連れて行くのだ。」
王はその夜は夜通し祈っていた。シングの日はやってきた。王が到着すると、数名の農民がいるだけであった。そしてそれからシングに来る農民達の軍勢が目には言ってきた。群衆は金銀が施された輝く人のような姿のものを運んでいた。もちろんそれはトールの木像である。農民達はそれを鎮座させ、その前で頭をたれてトールに挨拶をした。その後にシングの中央にトールの木像が置かれたのである。農民達が片側に席を取り、反対側には王の家来達が座った。
「閣下、キリストとやらは姿を現さぬようですな。今日は角の生えた男もいないようですな。しかしどうでしょう、我らの神であるトールはここにおりまする。キリストとやらはトールに恐れをなしたのでしょうかな。閣下、さあ古の神々を受け入れるのですな。」
農民達は怒号を上げた。その時、王はコルベインに耳打ちした。
「奴らが目を離した時にあの木像を棍棒で打ち壊すのだ。」
そうして王は群衆に向かって口を開いた。
「貴殿の話は終わったのですかな。貴殿はキリストが目に見えぬゆえ信じられぬという。主は自らの意志ですぐに参られる。お前達の神とやらは運ばれなくてはならんようだな。目が見えず、耳も聞こえず、不敏なものだな。ぼら、神は参られた。東を見よ、光かが焼く神が参られた。」
太陽が昇り、農民達は皆、太陽の方を見た。その隙をついてコルベインがトールの像を棍棒で力の限りたたきつけた。像は粉々に飛びちり、中からは猫ほどの大きさがあろうかという鼠、毒蛇、長虫が飛び出てきた。それに驚愕した農民達は我先に逃げ出した。ある者は船に飛び乗ったが、穴が開けられていたのでずぶずぶと無惨にも水の中に消えていったのである。そして馬を求めた者達は馬を見つけだすことができなかった。そして王は農民達に戻るように命じたのである。シングは再び開催され、王が立ち上がって演説を始めた。
「大変な大騒動だな。お前達は金銀をまとった者から鼠や毒蛇や長虫がうようよでてきたのを目にしたはずだ。飛び散った金銀は持ち帰って生活の足しにしろ。だが2度とそのようなものを奉るのではないぞ。キリストを受け入れるか、戦を行うか、どちらかを選べ。」と王が言った。
「閣下は我らの神々に冒涜を行ったのであるが、我らはキリストを選ぶ以外に道はないとみえる。」とグドブランドが言った。
そうして同意の下に洗礼が施されたのである。そこには数名の聖職者が置かれ、グドブランドはダーレに教会を建てたのである。
(02.03.27)
オーラヴ王はヘデマルクに向かい布教した。以前に王達を捕らえた時にきちんとしていなかったためにまだまだ不十分で布教の必要があったからである。この後にトーテ、ハデランド、リンゲリクにまで布教活動を行った。そしてこのラウマリク人達は旗揚げし、戦うためにニッティヤ川に向かった。ラウマリクの農民達は大損害を被り、キリスト教を受け入れた。その後も王は布教活動を熱心に行った。王は東のソレルに向かい、洗礼を施した。「黒の」オッタルという男が王を訪れ、王に従うと申し出た。その年の冬が訪れる前にスウェーデン王オーラヴが崩御し、アヌンド・オーラフソンが玉座についた。そしてオーラヴは冬の終わりにラウマリクに戻り、シングを招集した。王は前オプランド人達にそのシングへの出席を命じた。そして春になると船でツンスベルグに向かい、春はそこで過ごした。ツンスベルグはよそからの襲撃が絶えない場所であった。ヴィクでは作物はよく育ったが、はやり北部はまだ食糧が不足する自体に陥っていたのである。
春にオーラヴ王はヴィクから穀物やモルトや肉類の持ち出しを禁じた。夏はヴィクで過ごし、そして東の国境地帯に向かった。
「太鼓腹振り」エイナルは義兄弟ヤールのスヴェンが死んでからというもの、スウェーデン王のもとに身を置いていた。彼は今はスウェーデン王の家来となっていたが、王が代わった今、「大きな」オーラヴとの和解を望み、春には使者を派遣した。そしてエルヴに滞在中のオーラヴを彼は訪ね、話し合った。エイナルがトロンヘイムに戻り、全財産、ベルグリッドの持参金の土地を保持は薬草された。エイナルは北に向かい、王はヴィクに滞在し続け、秋から冬にかけてボルグで過ごした。
エルリング・スキャルグソンは土地をたくさん持ち、遠く東のエリンダンディネスまでその力が及んでいた。しかし以前の王達から受けていた借地権より今は少なくなっている。そこには有力者で家柄も良いアスラク・ファティヤルスカッリという者がおり、エルリングの身内であった。アスラクはオーラヴ王の共で、王からたくさんの借地権を受けており、エルリングに対抗するように命じられていたので南ホルダランドに住居を構えていた。アスラクはエルリングとの自州におけるごたごたを相談しに行った。王はエルリングを春に呼びつけた。
「お前のせいで土地を保持できないと苦情が出ている。」と王が咎めた。
「私めはアスケルを始め、何方とももめておりません。」と彼は答えた。
その後に問題解決したものの、彼は息子のスキャルグを人質として王に預けたのである。
シグルド・トレソンはビャルケイの「犬の」トーレの兄弟である。シグルドはエルリングのきょうだいのシグリッドが妻で、息子はアスビオルンと言った。アスビオルンは将来有望ですくすくと育った。シグルドはアムドのトロンデネスに住まい、大金持ちであった。彼は王には仕えていないが、兄弟達は借地権保有者であった。彼は州内で古き神々を信仰し、毎冬に3度の供犠祭を行った。彼は洗礼後も同じように続けていた。秋に仲間達と供犠祭を行い、冬にはユール供犠祭を行い、そしてイースターで多くの人々を集めた。アスビオルンの18才の時に、シグルドは床で息を引き取り、そして彼は財産を引き継いだ。彼も父のように3度の供犠祭を行ったのである。しかし寒くなるとどんどんと食糧事情は悪くなった。彼は供犠祭を行うために必要な食糧や酒の確保ができず、貯蔵品で代用した。しかし2年目はそうもいかず、シグルドは宴を躊躇したものの、アスビオルンは求めたのである。彼は秋に友人に会いに行き、食糧を購入して必死で手に入れた。その冬は彼が全ての祭を取り仕切ることになっていた。しかし次の春には誰も種を買い入れることができなかったので、種蒔きができなかった。1人2人とフスカール(家来)が彼のもとを去っていった。オーラヴ王の穀物などの北部への輸出を禁じた対策が重くのしかかっていた。アスビオルンは20人の家来を引き連れ交易船で南に向かった。カルムト島を少し過ぎた所に家令のトーレ・セルの管理する王のガルズのアグヴァルスネスという大きな館があった。トーレの家柄はよくないが、自身の力で今の地位にまで上り詰めた。彼は優秀な事業家で、演説に長け、風貌もよく、力持ちで強い首領であった。アスビオルンとその従者達はその晩はそこに停泊した。朝にトーレは家来達を引き連れてその船に向かった。彼はしっかりと装備された見事な商船の指揮官が誰か、その目的を訊ねた。
「北では不作続きで、たくさんの人々が飢えで死んだ。こちらの農場は立派だ。どうか食糧を売って下さらんか。」とアスビオルンが言った。
「それは大変な旅ですな。王は北の者達に食糧を売ってはならぬとの令を発しているので、これ以上進まれても貴殿は食糧を手に入れることはできないでしょう。戻られた方が賢明ではないのでしょうかな。」とトーレが答えた。
「このままではエルリングを迎えられぬ。」
「貴殿はエルリングとはどのぐらい濃い血の間柄なのですかな。」とトーレが訊ねた。
「我が母はエルリングのきょうだいなのだ。」
「ロガランド王の甥と知っていれば、用心はしませんでしたのに。またこちらへおいで下さい。」
その後にトーレは彼に旅の安全を祈ったのである。それから彼らは帰路につき、夕方にヤダルに到着した。アスビオルンは半分の家来を連れて船を下り、残り半分は船を見張っていた。アスビオルンが館に到着した時、エルリングは彼を歓迎した。エルリングは隣の席に彼を勧め、色々と話しかけた。アスビオルンは旅の困難さを語った。
「王の禁止令はかなりのものだな。友情だけではわが身を守るのは困難とみうけられる。」
「我が母の血筋は全て自由民だ。ソーラのエルリングは身内の中で最も身分が高い。だが今はどうだ。食べ物もままならず、奴隷以下だと皆が噂している。」とアスビオルンが言った。
エルリングはその事を声を立てて笑い飛ばし、酒を勧めた。
次の日、エルリングはアスビオルンに訊ねた。
「その穀物は誰から購入したのだ。」
「正当に手に入れたものなれば、購入者など大事ではない。」とアスビオルンがきっぱり言った。
「我が奴隷達は穀物を貯蔵していると思われる。奴隷の身分なれば法には縛られぬ。彼らから手に入れるがよい。」と彼は言った。
アスビオルンはこの申し出を受け、奴隷達から穀物、モルト等を購入して船に積み込んだ。そして出発の時にエルリングは彼にたくさんの贈り物を持たせた。アスビオルンは良風を受け、夕方にはカルムトスンドのアグヴァルスネスそばに船を留めて夜を過ごした。トーレは夜に60命の家来達を呼び寄せた。世が明けてすぐにアスビオルンを訊ねるために船に乗り込んだ。アスビオルンは彼を歓迎した。トーレはアスビオルンの船荷について訊ねた。
「穀物とモルトだ。エルリングは王にささやかな抵抗をしてくれた。」と彼は言った。
トーレはしばらく熱く語った。アスビオルンはエルリングの奴隷が穀物を所有していた事を言った。
「人目に付くとやっかいだ。陸路で行くか、もしくはこの船を下りていただこうか。」とトーレが言った。
アスビオルンはトーレと戦うほどの武力が自身にはないと判り、陸に上がった。トーレは船から荷物を降ろした。
「古い船を取ってこい。彼らに与えるのだ。それで家に帰れるだろう。」
それゆえに帆が取り払われ、陸に沿って北上し、冬にさしかかった頃に家に到着した。アスビオルンはその冬の祭事にまつわる事柄から免れた。トーレはアスビオルンと彼の母に連れてこれるだけの家来達と共にユールの宴にくるように言ったのであるが、アスビオルンはそれを受けずに家から離れなかった。トーレはアスビオルンが彼の言葉を軽んじたと重い、トーレはアスビオルンの旅を馬鹿にしたのである。この事がアスビオルンの耳に入り、彼も気を悪くした。彼は冬は家から離れず、どこの宴の招待も受けなかった。
アスビオルンは20漕手席のロングシップを保持していた。キャンドルマス(1023年2月2日)後に装備を整えて出帆した。彼は90名の武装した家来を引き連れ、陸に沿って南下した。彼らはカルムト外れにイースター(1023年4月18日)の5日後の夕方に到着した。そこは大きな島で、主な航路から外れていた。たくさんの住人がいたのだが海岸付近に点在して済んでいた。アスビオルンと家来達は人里離れた場所に到着したのである。彼らは天幕を張り終えた後にアスビオルンは島を探索してくるので船で待っていろと家来達に言った。アスビオルンは粗末な服、背の低い帽子を着け、手にはフォークを持っていた。服の下には剣を隠し持っていた。彼がアグヴァルスメスから見おろしていると、たくさんの人達がアグデルに向かって歩いているのを目にした。彼の目には奇妙に映った。彼は食事の用意をしている召使い達のもとへ行き、オーラヴ王が宴の接待を受けるためにここに来ている事を知ったのである。アスビオルンは館に入り、控えの間に入った時に2人の男とすれ違ったのだが、誰も彼のことを気にもとめなかった。館の扉は開けっ放しで、ソーレ・セルが高座のそばの食卓についているのを見た。日も暮れ始め、アスビオルンは人々がトーレにアスビオルンとの先の出会いについて語っているのを目にした。
「その時のアスビオルンの顔を見たかったな。さぞかし悔しがっていただろう。」
「彼は私が船と取り上げた時、我慢しておったが、帆を取り上げた時、涙を浮かべおったぞ