クニートリンガ・サガ?なにそれ?って方は多いかも知れません。ヴァイキングの本などでちょっと名前が上がるか上がらないか程度のものです。このサガを紹介しているのはひじょ〜に珍しいと思います。どれぐらい珍しいかというと「多摩川にアゴヒゲアザラシが出る」ぐらい珍しいです。いや、ビミョー・・・。
ノルウェイ王朝史といえば、はいその通りアイスランドの歴史家であり、詩人であり、法律家でもあるスノッリ・ストゥルソンが13世紀に記した「ヘイムスクリングラ」が有名です。これは聖オーラヴのサガにその3分の1を裂いている古期アイスランド語で記された王のサガです。このクニートリンガ・サガはそのデンマーク版というもので、デンマーク王の聖クヌートに重点を置いたサガです。ヘイムスクリングラとこのクニートリンガ・サガの大きな違いといえば、前者にはオーディンが支配する神代からの歴史(ユングリンガ・サガ)があるが、後者はその神代の歴史がないのである。デンマークの神代の歴史といえばオーディンの息子であるスキョルドが支配する歴史である「スキョルドゥンガ・サガ」になります。
このクニートリンガ・サガは誰に記されたかというと、13世紀中頃にアイスランド人のオーラヴ・ソールダルソンであろうとされています。彼は詩人でもあり、アルシングの法の語り部(法律家)を1248〜1250年と1252年を務め、文法家であり、教師でもあった。彼は文学一家の生まれである。彼のおじはなんとやっぱりオチかというような感じで、前述のスノッリ・ストゥルソンである。そして彼の兄弟といえばÍslendinga saga、Hákonar saga Hákonarsonar、2つの断片以外には現存しないMagnúss saga Lagabœtis、現存する最古のLandnámabókの作者であるスチュッラ・ソールダルソン(1214〜1284年)である。文学家である彼ら3人はよき友であり、著名な詩人であり、アルシングの法の語り部であった。そしてこのクニートリンガ・サガはヘイムスクリングラを下敷きにしていると思われ、オーラヴはデンマーク宮廷に出入りするその時では唯一のアイスランドの作家であったとされている。こういった理由から彼がこのサガの著書であろうとされているのである。
そんなこんなビミョーなサガですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
(2003.01.16)