注:かなり昔に作ったもので、かなりいい加減に作っているので、固有名詞などかなりいい加減なカタカナ表記になっているのでご注意ください・・・。固有名詞は一応は古アイスランド語のテキストから拾い出しはしていますが、カタカナ表記は・・・。信じないように・・・。

ラグナル・ロズブロークのサガ
(ラグナル・ロドブロクのサガ)

物語は「ヴォルスンガ・サガ(ヴォルスング・サガ)」から続く。興味ある方、和書で優れたものがたくさんありますので、購入して読みましょう〜(私のサイトでは紹介しません・・・から)。

ヘイミルはリムダーレでシグルドとブリュンヒルドの死を知った。彼は彼らの娘のアースラウグを託され、養育していた。アースラウグはその時、3冬年であった。ヘイミルはすぐに敵どもが幼き彼女を探し、殺害し、一族を根絶やしにするであろうと考えたのであった。彼はこのことを深く思い悩み、自らの財や領土の統治も手につかないほどであった。
そして彼はアースラウグが中に入ることができるほどの大型の竪琴を作った。彼はその中に彼女を入れ、そして金銀財宝もその中に隠し、それを大事に抱えてそこから北部地方にむけてのあてどもない旅に出る準備をした。この竪琴はからくり細工で、ヘイミルは使い方が判っているので接合部分でふたを開けたりはめたりすることが出来たが、他の者にはできないような作りをしていた。
彼は人の目に触れぬように人気のない場所を選び、水際を進んだのであった。彼は水辺に竪琴を置き、少女を取り出して体を洗った。そして彼はリーク葱を手にとると、彼女に食べさせた。このハーブの力で人は長生きできると信じられていた。そして彼はこれ以外の食べ物を口にはしなかった。少女がぐずりだすと、彼は竪琴の中に少女を入れた。するとすぐにまた彼女は静かになったのであった。ヘイミルはこうやっていつも少女を静かにさせる技を心得ていたのであった。彼はまた少女と一緒にたくさんの高価な服と黄金を竪琴の中に隠していたのであった。
彼はノルウェイに入り、スパンガルヒースという小さな農場に到着するまで旅を続けた。その農場にはアーキという農夫が住んでいた。その妻はグリーマと言った。彼らは2人きりでそこで暮らしていた。
ある日、農夫は森に行き、妻は家にいた。そこへヘイミルがやって来た。彼女は彼を迎え入れ、彼が誰かと尋ねた。ヘイミルは貧しき乞食であると答え、彼女に身を寄せさせてくれないかと頼んだ。彼女はここを訪れる人はほとんど居らず、彼にとって必要であるとしてもその要求を受けることはできないと言った。
日も落ち、ヘイミルは囲炉裏に火をともしてはくれないだろうかと頼んだ。そしてその後に彼女は彼の寝床へと案内した。彼女は蝋燭に火をともした時、ヘイミルは竪琴を彼の傍らの椅子の上に置いたのであった。農夫の妻はとてもおしゃべりで、彼女は何度となく竪琴をちらちらと見た。彼女は竪琴から高価な服の縁飾りが出ているのを見つけたからである。そしてヘイミルがいろりの炎で体が暖めていた時、彼女は彼が着ているぼろぼろの服の袂から黄金の環が覗くのを目にした。ヘイミルは十分に体を温めると、彼は夕食を取った。その後、彼女はその晩、ヘイミルが寝る寝床へと彼を案内した。彼女は彼に家の中より屋外で休む方がいいと言った。
「夫にまだ言ってないからさ。夫が家に帰ってきたらあんたの話をするさ。」と農夫の妻は言った。
ヘイミルは彼女が最良を思うことをしてくれればいいと彼女に伝えたのであった。
彼ら2人は一緒に家を出た。そしてヘイミルは竪琴も一緒に持っていった。農夫の妻は大麦貯蔵小屋に彼を連れて行き、彼にこの中で泊まるように言った。この後、彼女は戻り、ヘイミルは寝るために横になった。
夜も更けてアーキが家に戻ってきた。グリーマは家の用事をほとんど済ませていなかった。彼は疲れて家に戻ったのに、妻は家事を十分にしていないため怒った。しかし彼女は夫をなだめて言った。
「まぁそう怒らないで。こんなことはこれから始まる長い私たちの幸せにくらべるとちっぽけなことだよ。」と彼女は言った。
「どうゆう事だ?」と彼は聞き返した。
「一人の男がね、宿を求めて来たんだよ。わたしゃねあの男は大金持ちだと思うのさ。どうやらあの男は数年の間、旅をしているようで疲れきっている。でも若い頃はきっととても強い勇士だったに違いないね。わたしゃあんな男を今まで見たことはないさね。でも今は疲れ切って泥のように眠っているがね。」と彼女は言った。
「我が家を訪ねてきた者を裏切るというのはワシにはいいようには思えん。」と農夫は妻を非難した。
「軽く考えない方がいいよ、これはあんたにとって重要なことなんだよ。あんたは2つに1つを選ぶことしかできないんだよ。一つはあんたがあの男を殺害すること。もう一つは私があの男を夫としてあんたを追い出すこと。一つ言い忘れていたよ。あの男は夕暮れに私に迫ってきたんだよ。あの男は私に愛の言葉をささやいたね。さぁどうするさね。そうだね、あんたが私の言う通りにしてくれないなら私はあの男を夫にしてあんたを追い出したいもんだね。」と妻は言い出した。
農夫は妻の言うがままになり、彼女は夫をはやし立てた。農夫はついに斧を手にとると砥石で刃を研ぎ、妻についてヘイミルが寝ている場所にと向かった。貯蔵小屋からはヘイミルのいびきが漏れていた。
「しっかりと殺すんだよ。そして直ぐに逃げるんだよ。だってあんたはあの男が断末魔を上げて叫ぶのにも耐えられんだろうし、掴み掛かられてもどうしようもできんだろうしね。」と妻は言った。
彼女は小屋に入るとすぐに竪琴を手にとり、急いで外に逃げ出した。農夫はヘイミルが寝ているところに行き、彼に斧を振り下ろした。それは深々とヘイミルに沈み、斧は農夫の手から離れた。すぐに農夫は逃げ去った。ヘイミルは怪我で目を覚ました。しかし傷は深く、彼の命もわずかであった。彼は耳がつんざかれるような声を上げてもがき苦しみ、そしてそれで建物がばらばらに炸裂したのであった。これは上から下にと炸裂し、恐らく地震が起こったのであろう。これがヘイミルの死である。
農夫は妻のもとへ行き、彼女に男を殺害したと伝えた。
「なんということだ。どうなっても知らんぞ。彼は実にすばらしい者だった。しかし彼は今やヘル(冥府)に迎え入れられたと思うが。」と夫は言った。
「なに気にもむことはないさね。あんたのやったことに感謝だよ。これで金銀財宝は我々のもんだよ。さぁ、お宝を拝見しようじゃないか。」と妻は言った。
彼らはそして炉辺に行った。妻は竪琴を持ってゆき、ふたを開けようとした。しかし巧みに作られていたために農夫の妻は壊して中を開けることしかできなかった。こうやって竪琴を壊すと農夫の妻は今まで見たことがないような少女を見つけたのであった。そして同時に竪琴の中から莫大な金銀財宝を見つけ出したのであった。
「なんたることだ。わしはこのことを民会で報告する。おまえを信用した男が受けるにはむご過ぎる運命だ。われらの手の中に落ちた、この罪も無い子供の運命も不憫だ。」と農夫は自分の行いを悔やんだ。
「あんたは民会にこのことを報告することなんざできやしまいよ。お互いに非難し合ったって仕方ないだろ。」と妻は言い返した。
彼らは少女の出生を少女に尋ねた。しかし少女は言葉をまるで知らないかのように口を閉ざしたままであった。
「ほらみろ、わしが言った通りになっただろう。わしらの運命もこれまでだ。なんということをしてしまったんだ。わしらはこの子をなんと呼んだらいいんだ。どうすればいいんだ。」と農夫は思い悩んだ。
「簡単なことさ。母の名前を取ってクラカと呼ぼうじゃないか。」とグリーマが言った。
「彼女になにをしてやったらいいんだろうかね。」と農夫が言った。
「彼女にとって最高のことをしてあげようよ。今からこの子は私たちの娘さ。2人でこの子を大切に育てるんだ。」と妻が言った。
「誰も信じやせんさ。この子はわしらとは比べ物にならんぐらい美しい。わしら2人は醜い姿だ。わしらがこんな立派なお子を受けるには器が小さすぎるのじゃ。わしらは2人とも姿形は醜い。」と夫は言った。
「おまえさんはわかっていないんだよ。私には考えがある。この子の髪の毛を剃って、タールやそれ以外の汚物を塗りつけて、また生えるまでそのままにしておくんだ。この子には長いフードを身に着けさせ、綺麗な着物は着せないのさ。そして私たちのような風貌にするのさ。周りには私が若かった頃、美女だったと噂を流しておけば丸く収まるよ。この子にはとても厳しいことになるだろうけどね。」と妻は言った。
アーキとグリーマは少女が一言も発さなかったので、少女は口が利けないと思った。こうして妻が考えたように事は運ばれた、アースラウグは極貧の中で育てられることになったのである。


ガウトランドに豊かで権力のあるヘッラウズというヤールがいた。彼には妻と娘がいた。娘の名前はソーラといい、とても美しく、礼儀正しく、女性が身に付けた方がいいと当時思われた事柄の全の教養を身につけていた。彼女はあまりにも美しく、皆の心を穏やかにできなかったので彼女には「城壁の雄鹿」というあだ名があった。ヤールは娘をとても大切にした。彼はヤールの屋敷から遠くない場所に娘のために木で作った柵で取り囲んだ東屋を建てた。ヤールは娘を楽しませるために毎日贈り物をした。
ある日、ヤールは小さな蛇を娘に贈った。蛇の姿は綺麗で、彼女も蛇がかわいいと思った。彼女は蛇をチェストの中に入れ、蛇がとぐろを巻くために黄金を与えた。
蛇はどんどんと大きくなり、それに従って蛇の下にあった黄金はどんどんと増えたのである。蛇はどんどん大きくなり、ついにはチェスト一杯になり、溢れ出した。そして蛇は部屋を埋め尽くし、ついには東屋の外に出てその周りをぐるりと取り囲み、頭の前に尻尾がくるように丸くなった。そして巨大蛇は誰も手がつけられなくなり、あえて東屋の中に入ろうとする者はいなくなった。蛇には毎食事ごとに1頭の牛が与えられた。
ヤールはこのことに悩んで一つの誓いを立てた。
「巨大蛇を倒した者を娘の婿としよう。そして持参金として蛇が守る黄金を全て与えようではないか。」
この話はあっという間に広がった。しかし誰一人としてあえてこの龍には挑もうとはしなかった。


その頃、シグルド・リングという男がデンマークを支配していた。彼は強き王であった。彼はブラーヴェッルの戦でハラルド・ヒルデタンを倒して北欧中で名声を得ていた。シグルドにはラグナルという息子がいた。彼は立派に成長し、精悍な顔つきで、頭が切れ、友人には友情厚く、敵には厳しい男であった。彼が成長した時、彼は戦のための兵と船を召集し、彼に同等する者がいないような立派な戦士になったのであった。彼はヘッラウズのヤールの誓いを耳にした。しかし彼はその話にはたいした興味も抱かず、まるで知らないかのように振舞っていた。
彼は立派な衣装を作らせた。それらは毛羽立った腰布と毛羽立った毛皮のマントであった。それらが出来上がると、彼はピッチ(松ヤニ、タール)でぐつぐつと煮立てさせた。この後に彼はそれらを取り出させて、しまって置いた。(←これがあだ名ロズブローク「毛むくじゃらの(半)ズボン」、もしくは「毛羽立ち(半)ズボン」に由来するのである。由来を書いていないことをつっこまれたので入れてみた。でも北欧マニアにはデフォでしょう・・・たぶん)
ある夏の日のこと、彼はガウトランドに家来達を連れて向かい、彼らはヤールの屋敷からそう遠くない人目につかない入り江に留まった。ラグナルはそこで夜を過ごし、次の日の早朝に起きると、既述の細工を施した高価な衣装を身に着けた。彼は手に槍を取り、独りで船を下りて、砂浜に降り立った。そこで彼は砂浜を転がった。彼が出発する前に、彼は槍の穂から穂先を取った。それから彼は朝早くヤールの館の門に向かった。彼は東屋に歩いて近づき、龍のいる木製の柵の中に入っていった。彼は槍で龍を突き刺した。そしてすぐに彼は槍を引き抜いた。そして再度、突き刺したのである。この攻撃で槍は龍の背に突き刺さったのである。龍はとっさにもがき、その動きがあまりに速かったので穂先が槍の先から離れて龍の中に残された。これが龍がもがき暴れたので東屋全体が揺れたのであった。
ラグナルは立ち去るためにくるりと背を向けた。すると龍の傷口から血しぶきがあがり、彼の両肩の間に降り注いだ。しかし彼は全くの無傷であった。特殊な細工を施した衣装が彼を守ったのである。東屋にいた者たちは大きな音がしたので目を覚まし、すぐに外に飛び出た。ソーラは逞しい男が立ち去るのを目にした。彼女は彼に名前を尋ねた。彼は立ち止まってこんな歌を歌い上げた。

我15歳の時に、輝く乙女、
我は我が人生を危険にさらし、この龍を殺害せり。
どんな不幸が降りかかろうとも、
とぐろを巻きよじれる蛇の攻撃では我は死せず。

そして彼は立ち去り、彼女にこれ以上何も語りはしなかった。槍の穂先は龍の傷の中に残されたままであった。しかし彼は槍の柄は持ち去ったのである。彼女はこの詩を耳にした時、彼女はその歌から彼の年齢とその使命を知り得たのである。彼女は彼のことがとても気にかかったのである。しかし彼女は彼がその年齢にしては大変体躯が立派であったので人かトロルか判断できなかったのである。その大きさはまさにトロルのものであった。
彼女は東屋に戻って再び眠りに落ちた。そしてその朝、人々が龍の死を目の当たりにし、そこに何かが残っているのを見つけた。ヤールはそれを取り上げた。それはあまりに大きくて人間が扱うには大きすぎるものであった。ヤールは龍を殺害した者について何かわからないかと周りに訊ねた。しかし龍を殺害した者が人間かトロルか判らないままであった。彼は龍退治した者をどうやって探し出すかを友人や娘に尋ねた。そしてそれは名声と富みを得るために必ずその者は名乗りを上げると思われたので、たやすいことであろうと皆が考えたのである。ヤールの娘はシングに人々を集めるように父に言った。
「心当たりのある者は槍の柄を持ってくるようにとお触れを出せばいいのです。この穂先と柄がぴったりと合えばその人です。名づけて逆シンデレラ作戦よ。」とソーラは言った。
これはとてもいい考えに思われた。ヤールはシングを招集したのである。その日がやってきた。彼はたくさんの首領達とそこで出会った。そこにはまたたくさんの民衆が集まっていた。


ラグナルは召集されたシングに船で向かった。そしてほとんど全ての家来達を連れて上陸した。彼らは他の者達からやや離れた場所に行き、ラグナルはいつも以上にたくさんの者達が集まっているのを見た。それからヤールは立ち上がり、民衆に静かにするように言った。彼は皆が集まってくれたことに感謝し、民衆に今までの事柄を説明した。
「蛇はもはやいまい。この勇気ある行いを行った者は傷の中に残されていた穂先に合う槍の柄を持っているはずである。このシングに参加している者たちで、心当たりのある者は持ってきた柄を見せて証明して欲しい。身分の高い者、身分の卑しい者のどちらも問わない。」とヤールは言った。
そして演説が終るとシングに柄を持ってきた者達の前に槍の穂を持って向かった。しかし誰の柄もぴったりとは合わなかった。
ついに彼らはラグナルの前まで来て、彼に槍の穂を見せた。ラグナルは槍の柄を持っていると告げて出した。すると槍の穂と槍の柄はぴったりと符合したのであった。そして人々は彼が「龍殺し」であるとわかったのである。この偉業から彼は北欧中で広く名が知られるようになったのである。
ラグナルはヤールの娘のソーラと結婚させて欲しいと言った。父のヤールは同意し、彼の領土内で喜びのもと婚礼の大宴が整えられたのである。この婚礼の宴でラグナルはソーラと結婚し、この後に彼は最愛の妻を連れて自らの王国に戻ったのである。彼らは2人の息子を授かった。長男はエイリークで次男はアグナルで、彼らは共に立派な体躯で、見目形も美しかった。彼らは他の男達よりずっと強く、彼らはとても手先が器用であった。
ある時、ソーラが死に至る病に陥った。そして彼女はついには亡くなったのである。ラグナルはとても落胆し、王国に身を置くことをよしとはしなかった。彼は彼と息子達に代わって国を統治するための者達を選び、彼らに任せ、以前行っていたように戦いに出ることを決心したのであった。彼は戦に向かい、いつも勝利を手中に収めたのである。


ある夏の日のこと彼はノルウェイに向けて帆を揚げた。ノルウェイには彼の親族と友人がたくさんいたからで、彼は彼らと会いたいと望んだのである。夕方に向かって、彼とその船はスパンガルヒースの農場からそう遠くない小さな停泊所に停泊した。彼らはそこで一晩停泊したのであった。朝になると料理番がパンを焼くために岸に下りた。彼らはそこからそう遠くないところに農場があることに気がついた。彼らはそこでかまどを借りる方がいい料理を作れるだろうと考え、農場に向かった。彼らは小さな農家に到着し、そこに誰かいないかどうか訊ねた。彼らは一人の女性を見つけ、名前と農場の主婦かどうか訊ねた。
「確かにここの主婦だよ。名前はグリーマ。あんたたちはどこから来たんだい?」
彼らはラグナル・ロズブロークの船の者で、料理を作るためにここに来たと言った。
「どうかね、わしらと一緒に料理を作ってはくれんかね。」と料理番達は彼女に訊ねた。
グリーマは年老いて指が思うように動かないと言った。
「でも生活には事欠かないさ。そうさね、私の娘に手伝わせよう。名前はクラカ。もう少しすると家に戻るだろうよ。」と彼女は言った。
この時、クラカは朝に家畜を連れて外に出ていた。彼女は大きくて強そうな船が停泊し、上陸しているのを目にした。すると直ぐに彼女は体を洗った。グリーマは彼女にこうすることを禁じていた。彼女はクラカの美しい姿を誰にも見せたくはなかったからである。クラカは大変な美女であった。彼女の髪は長く地面につくほどの長さで、彼女の体を埋め尽くすほど豊かで、まるで絹のようであった。
クラカは家に戻った。料理番は火を起していた。彼女は見たこともない者達が家にいることに気がついた。彼女は彼らを見て、同時に料理番らも彼女を目にした。
「この美女はお前の娘か?」と料理番が訊ねた。
「そうだよ。この子は私の子だよ。正真正銘のね。」とグリーマが言った。
「うそつけ。お前とは似ても似つかないぞ。お前は醜いぞ。だがどうだ、この少女の美しさは。」と彼らは言った。
「よくお考えよ。私は昔は綺麗だったんだよ。この農場での暮らしで容貌が変わったのさ。」とグリーマは言い返した。
彼らは彼女に仕事を手伝ってくれるように言った。
「それで私は何をしたらいいの?」とクラカが言った。
彼らは彼女にパン生地を準備して欲しいと言い、彼らはそしてパンを焼くつもりであると言った。彼女は自分の仕事に取り掛かり、とても手際が良かった。しかし彼らは彼女に見とれ手元がおろそかになっていた。彼らが仕事を終えて船に戻った。そして彼らは食事の準備を整えた。それを口にした者達は皆、こんなまずいものは食べたことがないと口々に不平を述べたのである。彼らは罰を受けるべきだとも言ったのである。
ラグナルは料理番達になぜこんなまずいものを作ったのかと問いただした。彼らは美女に見とれて手元が疎かになったと説明した。彼らの話だと絶世の美女であるということであった。ラグナルはその美女とソーラのどちらが美しいかと彼らに尋ねた。彼らはソーラに劣らず美しいと答えた。
「それが正しいかどうか人をやるぞ。もしお前達が言ったことが嘘で、お前達が自らの仕事を疎かにしたと判れば、ただでは済まさぬぞ。」とラグナルは言った。
するとすぐに彼は家来をその美しい少女を見つけるために送り出したのだが、その日、強い向かい風が彼らに叩き付けたので彼らは出発を遅らせた。ラグナルは使者達い言った。
「もしうら若き乙女が彼らが説明したほどに美しければ、私は彼女に会いに行こう。我が望みは彼女をが私のものになることだ。彼女は裸でも服を身につけてもいけない。空腹でも食事を取ってもいけない。彼女は一人では来てはいけないが、誰も彼女に介添えしてはいけない。」とラグナルは難題を出したのである。
彼らは農場に到着し、彼女をまじまじと見た。かのじょはとても美しく、こんな美女は彼らは目にしたことがなかった。すぐに彼らはラグナル王の伝言を伝えた。そして彼女に出された難題も伝えたのである。クラカは王の言葉に考えをめぐらし、彼に会いに行く準備をしようとした。しかしグリーマは不可能な話であると言い、王は知力に長けていないと言ったのである。
「いいえ王は私がそれに答えるであろうと考えて言ったのだと思うわ。でも今日は行くことはできない。でも明日の朝早くに船に向かいます。」とクラカは言った。
それから使者達はラグナル王のもとに戻り、王に事の次第を伝えた。その晩、彼女は農場の家にいた。しかし朝早くにクラカは年老いた農夫に王のもとにいかなくてはならないと伝えた。
「でも着替えなくてはならないの。漁の網でぐるぐる巻きにして下さい。そして髪を垂らしてください。そうすれば裸ではないでしょ?そしてリーク葱を食べるの。それはほとんど食料とはいえないもの。犬を連れてゆくの。そうすれば一人ではないでしょ。でも誰も私に同伴していないでしょ。」とクラカは言った。
農夫は彼女の話を聞いて、彼女はあふれんばかりの知恵で一杯であると悟ったのである。


クラカは船に向かう準備を整えた。彼女の髪が黄金のようにきらきら輝いたのでとても美しく写った。ラグナルは彼女に向かって話し掛けた。彼女が誰であるか、誰を探しているのかを尋ねた。彼女はその答を詩で返した。
それから王は彼女に会うために家来を出した。彼女を船に案内させたのである。しかし彼女は彼女と彼女の付き添いの犬の身の安全が保証されぬ限り彼らとは行かないと言った。彼女は王の船に案内された。そして彼女が船の前部に入った時、王は彼女に手を差し出した。すると犬が王に噛み付いたのである。彼の家来が踊り出て、犬を殺害し、首のあたりに弓を引き、これが犬の最後となった。彼らは彼女に安全を約束したのだが、これは仕方のないことだと理解された。
ラグナルは後部船倉部の彼の横に彼女を座らせ、彼女と話をした。彼は彼女に喜びを見出し、愉快にしていた。王は彼女を誉め、共に連れ帰りたいとの詩を歌った。彼女は再び、それについての意に従いたいとの詩を歌って答えた。
彼は彼女に絶大な喜びを見出し、彼女を連れて出発すると告げた。彼女はそれはできないでしょうと告げた。しかし彼は彼女に一晩、船で過ごすように言った。彼女は旅から戻る前に通り過ぎることはないだろうといった。
「でもこのひと時は貴殿の単なる気まぐれで、貴殿のお考えが変わらないでしょうか。」と彼女は言った。
ラグナルは財宝番を呼び寄せ、衣装を持ってくるように言った。それら全ては金糸で縫われており、これはソーラのもので、彼にもたらされたものである。ラグナルはクラカに差し出して歌を歌った。その詩の内容とはこの衣は今は亡き妻の形見で、今はクラカに似合うものだというものであった。クラカもその詩に返す詩を歌った。それは今の彼女の境遇を映し出している詩で、これらの美しい衣は自らに相応しくはなく、ぼろ切れがお似合いであるというものであった。そして彼女は詩の中で海の岸に家畜を放牧しているいつもの彼女の情景を語ったのであった。
「だから私はこの衣を手にはできません。農夫と生活を共にする限りこんな綺麗な衣装を身にはまとえません。貴殿は袖を通した方がいいとはいうけれど。私は家に戻らなくてはなりません。もし貴殿が私を連れ出したいというのであれば、後で家来達を遣わしてくれませんか。」と彼女はラグナルに言った。
ラグナルは彼女を連れ帰るという意志は変わらないと伝え、それから彼女は家路についたのであった。
そしてラグナルと家来達は良風が吹くと計画を遂行すべく動き出したのであった。王が戻ろうとした時、彼はクラカが訪ねてくる前にいた停泊所へと戻っていった。そしてこの晩、彼は伝言を家来に託し、彼女を迎えに行かせるために送り出した。しかしクラカは朝がくるまで出発はしないと言った。
クラカは次の日の朝早く目を覚ますと、農夫と妻のいる寝床へ行った。そして彼女は彼らに目を覚ましているかどうか訊ねた。彼らは目を覚ましていると言い、彼女がなぜ話に来たのかを聞いた。彼女は引きとめようともここを立ち去るつもりであると伝えた。
「私は実は判っているんです。我が養父のヘイミルを殺害したのは誰かを。でも恨んではいません、私はあなた方と長く時を共にしましたから。でも私は行きたいんです。私達はここでお別れした方がいいのです。」と彼女は夫婦に言ったのであった。
そして彼女は出発し、ラグナルの船に向かった。彼女は快く王の船に迎え入れられたのであった。良風が吹いていた。その夜、家来達が寝床の準備を整えると、ラグナルはクラカと共に寝たいと言った。彼女はそれはできないと言った。
「私の望みは閣下の王国でまず婚礼を挙げることです。これは私の名誉と身の上を約束するでしょうから。二人にとって最良になるでしょうから。」と彼女は答えた。
王は彼女の訴えを受け、彼らはよい旅を過ごしたのであった。
ラグナルが国に戻ってきた後に彼は王の帰還と婚礼を祝して大いに酒が酌み交わさる大宴を準備させた。初夜、彼らは床を共にしたのであった。ラグナルは彼女を妻として扱いたいと言ったが、彼女はそっとしていて欲しいと言った。無理強いをすると、悪い方向に向かうであろうと言った。ラグナルは彼女の言葉に耳を疑い、農夫とその妻は先見の目がなかったと言った。ラグナルはいつまでそうするつもりだと彼女に問うと、彼女はそれに対して詩で答えた。その詩とは三晩一緒にいるが、神々の許し無しに一緒になってはならない。そうしないと生まれてくる息子が骨がない姿で生まれて、永遠の罰を受けるであろうというものであった。しかし彼女が言ったにもかかわらず、ラグナルはこの言葉を真剣に受け止めず、自らの思いを遂げたのであった。


時は流れ、彼らは幸せな結婚生活を送っていた。クラカは自分が妊娠したと判った。彼女は子供を産み、その男の子には水が振りかけれれ、イーヴァルという名前がつけられた。しかし赤ん坊には骨がなかったのである。少年の骨があるべきところには筋のようなものがあるだけであった。しかし少年はすくすくと育ち、匹敵する者がいないほど大きく育った。彼は容姿端麗で、誰にも負けない程に頭が良かった。
ラグナルとクラカには彼以外にも子供が生まれた。次男はビョルンで、三男はフヴィートセルク、四男はラグンヴァルドであった。彼らは皆、勇敢で強かった。すぐに彼らは力を付け、全ての技を取得したのであった。そして彼らが行くところはどこででも、イーヴァルは杖を手にしていた。彼はそれがないと歩けなかったからである。
この時、ラグナルの先の妻の息子達のエイリークとアグナルもまた立派な男に成長していた。彼らに匹敵する者は見たいことがないと言われる程に成長していた。彼らは毎夏、軍船を引き出し、ヴァイキング行きに出かけていた。
そんな日々が流れ、ある日、イーヴァルは兄弟達と話し合い、彼らに一体いつになったら名声を得るために外に出るのかと訊ねた。兄弟は彼の意見に同意した。
「我が望みは軍船と兵を要求することだ。そして富と名声を得るために出発するのだ。」とイーヴァルが言った。
そして兄弟達は同意し、ラグナルに戦利品を勝ち取るための軍船と兵を要求した。ラグナルは彼らの訴えに従い、軍勢を準備した。彼らはそして国を出発したのであった。
彼らは常勝であった。そして彼らはたくさんの従者と財宝を手に入れたのである。そしてイーヴァルはより強い敵と一戦を交えることを欲したのである。彼らは話し合った。イーヴァルは強敵の住むウィトビィという地があると言った。
「今まで多くの者が彼らに臨んだ。しかし誰として勝利を得た者はいない。」と付け加えた。
かつてラグナルもそこへ挑んだが、目的を成就することなく立ち去ったことがあった。
「兵は屈強で凶暴だ。そして他にも問題があるんだろうな。」と兄弟達は口々に言った。
イーヴァルはその地の戦士の数はとても多い上に、強力な神殿が立っていると言った。再び反旗を翻さぬ程に全兵力を投じてそこを破壊しなくてはならないと彼は言った。兄弟達はイーヴァルに攻撃するか止めるかどちらかをすぐに選ぶように言った。彼はさらなる勇気、名声を欲して、さらなる高みに臨むことを兄弟達に伝えたのであった。


彼らはそこから出発し、その地に到着すると彼らは上陸する準備を整えた。船を見張るための人員が必要であると思われた。そして末っ子のラグンヴァルドは未熟であったので、兄弟達は彼に残って船を見張るように言った。そして兄弟達が襲撃に出る前にイーヴァルが最後の忠告をした。
「ここの要塞では二頭の牛が飼われている。そしてこの牛の唸り声と妖魔気質には誰一人として耐えた者はいない。お前達は傷つかぬように最善を尽くすのだ。」とイーヴァルが兄弟達を鼓舞したのである。
彼らは軍隊を布陣に敷いた。そして彼らが町に近づいた時、その町の住人達は彼らに気付いた。住人達はすぐに彼らが力の頼みとする家畜を放ったのである。牛達は咆哮をあげ、凶暴なまでに突撃してきた。イーヴァルはこれを目にすると、兵に弓で攻撃するように命じた。彼はこれらの巨獣に武器を投じ、二頭共に殺害したのである。こうして戦いが終結し、ほとんどの町の住人は逃げ去ったのであった。
船にいたラグンヴァルドは家来達に話し掛け、兄弟達が楽しんでいる輪に入りたいと言った。
「兄上達は手柄を独り占めしたいんだ。何で俺がここにいなくちゃいけないんだ。さあ戦に向かうのだ。」と少年は言った。
その場にいた者達は彼の意見に従ったのであった。彼らが戦場に到着した時、ラグンヴァルドは戦に激しく参加したのであった。しかし終には彼は地面に倒れたのである。しかし兄弟達は町に進入し、戦が再び始まったのである。ついに要塞の住人達は敗走に転じたのだが、兄弟達はその後を追ったのであった。そして彼らが待ちに戻って来た時、ビョルンは戦を称える詩を歌い上げた。
彼らが町に戻って来た時、兄弟達は全ての家財を分捕ると町に火をつけたのであった。要塞はついに崩れ落ちた。そして彼らは燃え盛る要塞を後にして、出帆したのであった。
その当時、スヴェア人の国(スウェーデン)にはエイステインという王が君臨していた。彼には妃とインゲボルグという娘がいた。彼女は絶世の美女で、見る者皆幸せにするほどの美貌であった。エイステイン王は頭がよく、財産は多く所有していたのだが、性格は悪かった。彼はウプサラに玉座を構えていた。彼は神々への大供犠者で、ウプサラはこの当時の北欧でさ最大の供犠を行っていたのである。
その地の民衆はシビリヤという牝牛に絶大なる信望を寄せていた。力でこの牝牛にかなう者はいなかったので皆が信仰を寄せていたのである。それゆえに敵の軍勢が立ちはだかった時、王はこの牝牛を自軍の最前線においた。この巨獣が咆哮したのを聞いた敵は正気を失い、互いに攻撃し合い、注意を払わなくなるのである。これゆえにスヴェアの民は戦に悩まされることがなかった。
多くの王達と家来達はエイステインの友人で、ラグナルとの間にも友情があったのである。彼らは毎夏に互いの国を訪れ、互いに宴会(ヴェイスラ)を接待し合うという中であった。今はラグナル王がエイステイン王を訪ねる番であった。彼はウプサラに行き、彼と家来達は快く迎え入れられたのである。この宴の最初の晩にエイステイン王は娘にラグナルの杯にワインを注がせるように言いつけた。ラグナルの家来達はラグナルがそうするようにエイステイン王に頼んだとまことしやかにささやきあったのであった。ここには妻である農夫の娘のクーラカがいなかった。ラグナルの家来達は王をひやかし、王がこの乙女に求婚するまでにはそう長い時間は要されなかったのである。
宴がお開きになるとラグナルは家路につき、その旅は順調なものであった。町からしばらく行ったところにある森に差し掛かった。彼らは森の開墾地に入っていった。ここでラグナルは家来達に立ち止まらせ、話を聞くように命じた。彼はスウェーデンでの宴の事、彼がエイステイン王の娘と婚約したということについて他言しないようにと命じたのである。漏らした者は命がないとも忠告をした。彼は国に戻り、家来達は帰郷を喜んだ。大いに酒が酌み交わされた。
クーラカはラグナル王のそばへ行った。しかし王は玉座に座り彼女と過ごした時間はそうは長くはなかった。彼女は王の膝に座り、王の首に手を回し、彼に旅の話をしてくれるようにせがんだのであった。しかし彼は彼女に何も語らなかった。夜も更けて、人々は酔っ払い、寝床についた。ラグナルとクーラカも寝床に行った。彼女は再び王に話をせがんだが、王はやはりなにも言わなかった。彼女は王にたくさん話し掛けたのだが、王は旅に疲れ眠気がすると言った。
「私はもっとお話をするつもりなの。例えあなたが何も話さなくても。」と彼女は言った。
「何を話すつもりなんだ。」と王が訪ねた。
「ある乙女が王から求婚されたというお話です。しかもその王にはすでに妃がいるにもかかわらず。」と彼女は言った。
「誰がそんなことを言ったんだ」と彼は問いただした。
「あなたの家来達は命と身体を案じて何も私には語りませんでした。」と彼女は答えた。
「あなたのそばにあった木に止まっていた三羽の小鳥に心当たりはございませんか。小鳥達が私に教えてくれたのです。婚約は解消してくださいませ。今こそ本当の事を話す時です。実は私は農夫の娘ではなく王の娘なのです。父は類稀なる立派な勇士でした。母はとても美しく、とても賢い方でした。彼女の名前は世界の終焉の時までその名が永続するのです。」と彼女は言った。
それから彼はもしスパンガルヒースの貧しい農夫の娘でないのであれば、父の名を挙げよと言った。彼女は「ファーヴニル殺しの」シグルドとブドリの娘のブリュンヒルドの娘であると言った。
「とてもありえん話だな。その伝説の二人の娘がスパンガルヒースの貧しき農家の娘のクーラカだとは聞いたことがないぞ。」
「父シグルドと母ブリュンヒルドは岩の上で邂逅しました。その時、私が宿ったのです。そして母は私を産み、名を与えました。私はアースラウグと名づけられました。」
そしてそれから彼女はその後の話を語りだした。どのように逃れ、どのようにしてヘイミルが連れ出して農夫と出会ったかを。
「アースラウグの人生は驚嘆に値するな。」とラグナルは驚いて言った。
そして彼女は再び話を続けた。
「今、私のお腹には新しい魂が宿っております。この子は間違いなく男の子です。そしてこの子にはあるしるしがあります。この子の眼には蛇が宿っているのです。そしてもしこのことが本当であれば、あなたはスヴェアの王の娘を貰い受けにスウェーデンに行かぬと約束してはくれませんか。もしこれが嘘であったなら、あなたは私をどう扱っても構いません。この子の名前は私の父の名を取ってシグルドと名づけたいのです。」と彼女は言った。
そして出産の日となった。彼女は男の子を産み落とし、産婆が彼女に子供を見せた。彼女は産婆達に子供をラグナル王のもとへ連れてゆくように言った。子供は館に運ばれ、ラグナル王の衣装で包まれた。王が子供を見た時、なにかお言葉をと産婆達が言った。すると王はこの子の有望なる将来を見通し、オーディンの子孫で、戦いで勇を馳せる「蛇眼(目の中の蛇)」の英雄になるだろうと称えて詠った。
それから王は指からリングを外して手にすると、それを名前の贈り物として赤子に与えようとした。王が指輪を子供に置こうと手を伸ばすと、赤子は背を向け、指輪はその小さな背中に触れたのである。ラグナルはこの意味を理解した。赤子はラグナルの指輪を軽んじたのである。そして王は再びこれについての詩を詠った。

輝かしきはその眼、
ブリュンヒルドの娘の子の心なり。
ブドリの子孫は策略ではなく
大いなる戦で煌く黄金を手に入れるだろう。

そして再び続けた。

このような蛇は見たことがない、
シグルドの眼を除いては。
獅子の心の少年の眼には蛇がいる。
このしるしにより彼は名を馳せるだろう。

それから彼は産婆達に赤子を女館に連れてゆくように言った。そしてラグナル王のスウェーデンへの旅が終ったのである。
今やアースラウグの一族は有名になった。人々は彼女が「ファーヴニル殺しの」シグルドとブリュンヒルドの娘であると知ったのである。


そしてラグナル王がスウェーデンに行き、ウプサラの宴に行くと約束した日がきた。しかし彼は行かなかった。エイステイン王はこれを大いなる侮辱と考え、彼らの友情は終ったのであった。ラグナル王の息子達のエイリークとアグナルはこれを知り、話し合いを行った。彼らはできるだけ多くの軍隊を集め、スウェーデンにヴァイキング行きに出ることを決めたのであった。彼らは大軍を召集し、十分であると思った時に彼らは船を水に浮かべたのである。
しかしアグナルの船では事件があった。帆の横木のそばに立っていた一人の男がそれが打ち付けてきたために即死したのである。彼らはこれを「血染めの横木」と名づけた。彼らは行き先に不安を感じたが、それは旅を止めるものにはならなかった。彼らの軍勢はスウェーデンに向かう準備が整うと、できるだけ早くスウェーデンに向かった。そしてすぐにエイステインの王国に上陸して襲撃を行ったのである。しかしその地の民衆はこれに気付きウプサラのエイステイン王にこのことを報告した。
王は国中から軍隊を集め、彼は強大な軍隊を集結させた。王は森に軍隊を移した。そしてそこで野営させた。王はシビリヤ牝牛を連れてゆき、彼らは幸運を祈って牝牛に生贄を捧げた。そしてエイステイン王は待機している軍隊に向かって言った。
「ラグナルの息子どもがこの森に向かっている。頭を使った戦をしようではないか。兵の3分の1は彼らをまず攻撃する。そしてやつらは手ごわいので我らの武力をうわまるであろう。その後に我が軍は牝牛を先頭にして全兵力を持って立ち向かうのだ。この巨獣の咆哮にはやつらも正気を保つことはできぬ。我らは勝利するだろう。」
ラグナル王の息子達の軍隊と対峙するとエイステイン王軍は打ち合わせ通りに動いた。そしてエイステイン王軍はこの段階では数で劣っていたのだが、この後、作戦通りに牝牛と残りの軍が合流した。この後に全軍は森を出て牝牛が放たれた。牝牛は王軍の前で驚愕する咆哮をあげた。この大きな騒音で牝牛の前にいた敵軍は見方同士で相打ちをしたのである。この日、この妖魔が多くの死人を出した。ラグナルの息子達は強い戦士であったが、彼らはこの妖魔の力と大勢の敵は実に手ごわかった。彼らは屈強に抵抗し、男らしく、華々しく戦った。エイリークとアグナルは最前線で勇敢に戦った。
ついにアグナルが倒れた。エイリークはこれを目にすると、最大の力を持って戦った。しかし彼はどうすることもできず、圧倒的な兵力を持って捕らわれの身となったのである。エイステイン王は彼に戦いを放棄し、折り合いをつけるように言った。それに付け加えて王の娘と結婚するように言ったのである。これに対してエイリークは兄弟を殺害した者と折り合いをつけなければ、その娘を妻ともしないし、自らの命を落とそうとも母は悲しまないと詩で返したのである。
そして彼は兄弟たちに従った家来達がここから平和裏に立ち去るであろうと言った。
「しかしお前達はができるだけ多くの槍を手に取り、大地に突き刺すのだ。俺はその上に体を乗せ掛けて、ここに命を置いて行く。」と言った。
エイステイン王はそれが両者にとって最悪のことになることを理解した上で彼が命じたようにするように言った。そして槍の準備が整った。エイリークは詩を詠い槍に近づいた。彼は腕からリングを外し、停戦した家来達に向かって投げた。彼はアースラウグに家来達を遣わし、最後の詩を伝えるように言った。この後に彼は槍の上に体を押し付けたのである。この時、彼は飛び交う鴉を頭上に見た。この後に彼は華々しく散ったのであった。
彼の伝言を伝える使者達は急いでラグナル王のもとへと馳せた。この時、彼は王達の会合に出発しており、彼のその他の兄弟達はヴァイキング行きから戻ってきてはいなかった。使者達はアースラウグの高座に近づくまでに三日が要されたのであった。彼らは妃に謁見し、彼女は彼らを歓迎したのであった。彼女は膝にリネンをかけており、彼女の髪は櫛をいれるためにほどかれていた。彼女は見覚えのない使者達が誰かを訊ねたのである。一人が彼らはエイリーク、アグナルのラグナルの息子達の使者であると伝えた。そして彼らは先の妃のソーラの息子達が戦死したことを詩で語ったのであった。それから彼女はそれがどのようであったかを訊ね、エイリークは妃にリングを届けるように言ったと伝えたのである。彼らは妃が涙を流すのを目にしたのである。彼女の涙はまるで血のように赤く、霰ほどの硬さであった。後にも先にも彼女がこんな涙を流したのを見たものはいないのである。彼女はラグナルもしくは彼の息子達が帰宅するまで血讐については何も語ることはできなかった。
「あなた方はそれまで滞在してください。彼らの死は我が子の死と同じです。私は彼らの血讐を望みます。」と彼女は言った。
そして使者達はここに留まることとなったのである。
イーヴァルと彼の兄弟がラグナル王より前に帰宅した。アースラウグはすぐに彼らのもとへ行った。シグルドはその時、3歳であった。少年は母の傍らにいた。彼女が兄弟達の館に入った時、彼らは彼女を迎え入れ、互いに話をした。彼らは彼女に息子のラグンヴァルドの死とそれ以外の話を伝えた。彼女はラグンヴァルドの死を悼んで詩を詠った。彼はオーディンに召されたという詩であった。有望な息子を失った事を大変悲しんだのである。そして兄弟達は彼女にどんな話かと彼女に訊ねた。
「私が最強の戦士と考える継子のエイリークとアグナルが殺されました。あなた達がこれに胸を痛めなくても不思議ではないけれど、血讐をするのです。これは私の願いです。血讐をするのであれば、私はどんな手助けも惜しみません。」と彼女は言った。
「俺はエイステイン王と戦うためにスウェーデンには決していかない。あそこには妖魔がいる。」とイーヴァルが言った。
彼女は激しく彼らに迫ったが、イーヴァルは拒否したのであった。そして彼女はなおもしつこく復讐するように詩で詠って迫った。
「何にもならないよ。そう次から次へと歌っても。どんなに危険なことか判っているんですか。」とイーヴァルが言った。
「私にはあなたが渋る理由がわかりません。」と彼女は言った。
イーヴァルはスウェーデンには大いなる信仰があることを伝えた。
「それにだ、王自体が悪人なんだよ。おまけに金持ちときた。」
「彼らが生贄を捧げるものって何なの?」
「牝牛だよ。シビリヤという名のね。その妖力は大変なもので、その咆哮を聞けば正気を失うんだ。王に近づくことさえ出来ない。」
「覚えていなさい。あなたは偉業をなした者と言われることなく、その器ではないということを。」
そして彼女はもはやこれまでと考え、彼女は去ろうとした。その時、傍らにいた「蛇眼の」シグルドが口を開いた。
「お母さん、兄上達を説き伏せるかどうか判らないけど僕には3つの考えがある。」
「いってごらんなさい。」と母が言った。

三晩の間に、兵を集めろ、
もしこの望みが母上を悲しませるものだとしても。
ウプサラのエイステインはもはや統治でいないだろう
(もし我らの剣が勝れば)、奴は我らに補償を差し出そうとも。

この詩が歌われた時、兄弟達の考えは多少変わったのであった。
「あなたの宣言は明大よ。どれぐらいの兵が必要なのかは私には判りません。でも実行しましょう。復讐が私の望みですもの。あなたの好きなようになさい。」と彼女は言った。
するとビョルンが、自らの眼の中には蛇はいなくとも義兄弟の仇を討つといったのであった。そしてフヴィートセルクもまたすぐに復讐に向かおうと言ったのであった。フヴィートセルクはこの時、氷が張っていたので、まず氷を砕くことからしなくてはならないと言った。それからイーヴァルもまた復讐を誓ったのであった。
「そしてまず我らは船と兵を整えなくてはならぬ。勝利のために物惜しみしてはならぬぞ。」
その後、アースラウグはそこを後にしたのであった。


シグルドには彼の変わりに船と兵の準備をした養父がいた。それは迅速に行われ、シグルドは三晩の間に必要な兵をかき集めた。そして彼にはよく準備の整えられた5隻の船があった。
五晩が過ぎた。フヴィートセルクとビョルンは14隻の船を準備した。イーヴァルは単独で10隻準備し、アースラウグはさらに10隻準備していた。それは七番目の晩までのことであった。それから彼らは集結し、互いにどれぐらい集めたかを報告しあった。イーヴァルは陸路で騎馬兵の一行を送り出したと言った。アースラウグはそれを聞くと、自らもまた大軍隊を送り出すと言った。
「ぼやぼやしているひまはない。さあ出発だ。」とイーヴァルが高らかに宣言したのであった。
アースラウグは彼らに彼女もまた共に行くと言った。
「兄弟達の復讐をこの目で確かめるのです。」と彼女は言った。
「心配無用です。母上は乗船なさるな。しかしもし母上が望むのであれば、陸路の軍団を率いてください。」とイーヴァルが言った。
彼女はそうすると言った。そして彼女はそれから名前を変え、自らをランダリーンと呼んだのであった。
今や全軍は出発した。イーヴァルは事前に落ち合う場所を伝えた。両軍は出発し、打ち合わせどおりに落ち合った。彼らが行ったエイステイン王の国はどこででも彼らは襲撃したのであった。彼らはあらゆるものに火をつけ、人々を殺害し、通り道にいた全ての生き物を殺戮したのであった。


彼らの襲撃から命からがら逃げ出せた者がエイステイン王にこれらの話を報告した。王は全土に御触れを出し、戦える者全てをかき集めた。
「シビリヤを連れてくるのだ。我らの神を。牝牛を最前線に置け。」と王が言った。
そのように行われ、シビリヤが放たれた。イーヴァルは牝牛に攻撃し、その咆哮を聞いた。彼は全軍に雄叫びと武器を打ち鳴らす騒音でその咆哮をかき消すように命じた。彼はできるだけ前に出た。
「牝牛が我らに向かってくる。俺をやつにめがけて投げろ。俺の命がなくなるか、俺がやつの命取りになるのかのどちらかだ。大木をもってこい。それで弓と矢を作るのだ。」とイーヴァルが命じた。
その後に彼らは作るように命じられた強い弓と大きな矢を運び込んだ。それからイーヴァルは軍に最善を尽くすように命じ、軍団は激しく前に出た。イーヴァルは最前線にいた。シビリヤが咆哮をあげた時、大きな音がわき起こったので彼らには聞こえてしまった。彼らは互いに攻撃しあった。この怪奇が起こっている間、イーヴァルのもとに運んできた者たちは彼がこの弓をまるで弱いニレの枝かの如くに引いたのを見た。彼らの目には矢が弓を越えてぐいと後方にまで引かれるかのように思われた。それから弦は今まで彼らが耳にしたことがないほどの大きな音を立ててしなり、弓が飛んでいったのであった。その矢はまるで強固なクロスボーから飛び出た矢のような速さであった。それはすぐにシビリヤの両目に突き刺さった。牝牛は倒れたのだが、その後牝牛は頭を前に向けたのであった。牝牛の激情はそれにも増して激しいものとなったのである。牝牛は彼らを攻め立てた、そしてイーヴァルは家来達に自らの肉体を牝牛に向かって投げるように命じた。家来達がイーヴァルを抱えて投げようとした時、家来対はまるで小さな子供を投げているような感覚を覚えたのであった。
イーヴァルはシビリヤの背中に落ちるとすぐに彼の体重はまるで大石が落ちてきたような重さであった。それで牝牛の全ての骨は粉砕されて、牝牛は殺害されたのであった。恐るべしは子泣きじじい。
それから彼は家来達にできるだけ彼を早く引き上げるように命じた。今や彼の声ははっきりと聞こえたため、全軍は彼は近くで叫んでいるように感じたのであったが、実際は彼は遠くにいたのであった。そして彼らは彼の話に細心の注意を払って耳を傾けた。
「牝牛は死んだ。今や恐れるものはない。」と家来達に激を飛ばしたのであった。
両軍は兵を陣に敷かせ、激しく激突した。そしてスヴェアの民はこんなに厳しい戦いは経験したことがないと口々にした。二人の兄弟のフヴィートセルクとビョルンは大胆に前に出て、前に立ちはだかる敵をどんどんと倒していった。エイステイン王軍の兵の多くは戦死したのだが、数名の者達は逃げ出したのであった。この戦の終わりはエイステイン王が殺害され、兄弟達が勝利を収めるというものであった。彼らは残されたスヴェアの民に平和を与えた。
「俺はもうこれ以上戦う気はない。もう王がいないんだからな。むしろ我らに逆らうより強い敵を見つけに行きたいのだ。」とイーヴァルが言った。
しかしランダリーンは軍隊の一部を連れて国に戻ったのであった。


彼らは南の国々に襲撃に行くことを同意した。そして「蛇眼の」シグルドは兄弟達と今後全ての襲撃に行くことになった。こうして彼らは彼らが向かった全ての大きな町を包囲攻撃し、どの町一つとして彼らに逆らうことは出来なかったのである。
彼らは大きな城壁の町のことを知った。そこはよく守備され、強固な作りであった。そしてイーヴァルはそこへ向かうと言った。彼はその町の名前とその支配者について話した。王の名はヴィヴィルで、城は彼のもので彼にちなんでヴィヴィルブルグといった。兄弟達はその国を襲撃し、ヴィヴィルブルグに彼らが到着するまでに全ての城を攻略したのであった。この王はこの時、城にはいなかった。そして彼の家来達の多くも彼に従って不在であった。彼らは城壁の前の平地に天幕を張った。そして彼らは到着した日には大人しくしており、城壁の町人達と話しをしたのであった。彼らはすぐに要塞を明け渡して彼らと折り合いをつけるか、激戦の末に命乞いをするかのどちらかを選べと言った。彼らはすぐにこの要塞は決して攻略されないし、明け渡す気もないと答えた。
その晩が過ぎ、次の日、彼らは要塞を攻略しようとしたのだが、出来なかったのである。彼らは半月間、要塞の前に居座り、毎日彼らは様々な案を練って攻略を考えていたのであった。しかし何度やっても上手くいかなかったのである。そして彼らは立ち去る決定を下したのであった。城壁の町の者達は彼らが立ち去るようであると見て取り、城壁に向かい、城壁に高価な織物を広げた。これら全ての高価な布は城壁で目にすることができ、彼らが所有する黄金や宝石といったより高価な財宝がそれらの上に置かれていた。それから城壁の町の者達の一人が口を開いた。
「ラグナルの息子どもとその家来達は勇敢な戦士だが、他の者達以上に自らの目標には近づけないようだな。」
この後、彼らは戦の雄叫びをあげた。そして盾を打ち鳴らし、最高に高揚したのであった。イーヴァルがこれを聞いた時、うかつにも驚いてしまったので、彼はこれを悔しがった。そしてそれゆえ彼は動くことができなかった。彼らは彼の事態が好転するか、彼の破滅になるかのどちらかになるまで待機せざるを得なかった。彼は夜になるまで一日中そこにおり、一言も口にしなかった。それから彼は家来達にビョルン、フヴィートセルク、シグルドに来て、彼とこの軍の賢者達全てと話し合いをするために来るようにと伝えるように命じた。大首領達全てが一箇所に集まった時、イーヴァルは彼らに今までのやり方以上に勝利を収めることができそうなあらゆる計画を考えるように彼らに言った。彼ら皆、勝利をもたらす案を練るには知力が足りないと答えたのであった。
「今こそ、今まででそうであったように、イーヴァル、貴殿の策が必要なのだ。」と彼らは言った。
「今までしたことがない案を1つ考えついた。ここからそう遠くないところに大きな森がある。夜になったら、気付かれないようにこの天幕から立ち去るのだ。そしてやつらにはここにまだいると思わせて、そこへ行く。我らが森に到着すると、皆で木材をまとめる。そして城壁のありとあらゆる方向から近づき、木に火をつけるのだ。激しい火災が起こるだろう。それで城壁の石灰セメントを溶解させて城壁の壁を破壊し、それから弩を持ち込む。どれぐらいやつらの城壁が強いか試してやろう。」と彼は答えた。
この案が遂行された。彼らは森に向かい、イーヴァルがいいというまで森に留まっていた。それから彼らは予定通りに城壁に戻った。そして彼らは木の大きな束に火を投じ、激しく燃え盛った炎に壁は耐えられず、石灰セメントが溶け出したのである。それから兄弟達は弩を城壁に向け、ひびから城壁を大きく破壊したのであった。すぐに激しい戦となった。そして彼らが剣を交えたところでは、城壁の町の者達は次々と殺害されたのであった。そしてある者達は逃げ出したのであった。この終わりは城壁内にいた全ての男が殺害され、全財産が持ち運ばれ、彼らが立ち去るまでに城は燃え落ちたのであった。


この後、彼らはルーナという城壁の町に到着するまでに進んだ。彼らは南の国の全ての要塞と城のほとんど破壊して名を轟かし、その名は若い者達までも知るようになったのであった。彼らは大きく、よく守備され、有名で、豊かなローマに到達するまで彼らの戦意は消えなかった。しかし彼らはそれがどれほどの距離にあるか全くもって知らなかった。彼らは多くの軍勢を抱えていたので、彼らは食料を補給することができなかった。彼らはしばらくルーナブルグ内に留まっていたが、この旅について話し合いを行った。
彼らのいたところに古ぼけて友好的な一人の男が訪ねて来た。彼らがその男に何者かと訊ねたところ、彼は物乞いであると言った。そして全人生を通して国をさまよい歩いていると言った。
「それから俺たちが知りたい情報をたくさん話せ。」
「お前さん達が知りたがっている国については何も知らんので、何も話すことはないぞ。」と古ぼけた老人が答えた。
「ここからローマがどれぐらいの距離か訊ねているんだ。」
「わしはお前さん達にその距離が判るしるしを見せよう。お前さん達はわしが履いている古い鉄の靴が見えるかい。ほれもう一組壊れたものはわしの背中にある。わしが出発した時、わしの背中にある今は壊れた靴をつけていたんじゃ。両方とも新品だったんじゃよ。出発してからずっと履いているんじゃ。」と老人が言った。(実はこのじ〜さんはキリスト、という読みができるとのこと。それは面白い!恐るべしは神の力。)
老人がこれを言った時、彼らはローマに行く計画を断念した。彼らは軍隊を引き上げ、以前に決して手に入れなかった多くの城を攻略した。そしてこのしるしは今日でも見ることができるのである。
息子達が海外で活躍していた時、ラグナルは王国におり、彼は息子達、妻のランダリーンがどこにいるか知った。彼はあらゆる者達に息子達の話を聞いたが、彼らの活躍は匹敵する者がいないだろうと誰もが称したのであった。彼は本当にそんなに褒め称えられる者が他にいないかと考えたのである。彼は自らが彼らの負けぬほどの永続する名声をどれぐらい上げれるかどうかと思い巡らした。彼は策を練った。彼は数名の船大工を呼び出し、彼らに木を切り出して2隻の大きな商船を作るように命じた。北欧ではこれほどまでに大きな船がかつて造られたことはなかった。そこには王国の莫大な武器が積み込まれ、このことから民衆は王が外国にヴァイキング行きに出発するのであろうと考えた。この噂は国々へ広まり至るところで語られ、人々と国々を統治する王は国に留まることができないのではないのであろうかと心配をしたのである。彼ら全てはラグナルが襲撃するかどうかさぐるために国に見張りを置いたのであった。
ある時、ランダリーンはラグナルに旅にでるのかどうかを訊ねた。彼は彼女に2隻を超えない船団でイングランドに向かおうと思っていると言った。
「あなたの此度の旅は懸命なものではございません。もっと小型の船で、もっと多くの船で向かう方がよろしいと思います。」と彼女は答えた。
「たくさんの船団を率いて国を征服してもちっとも名誉にはならぬ。たった2隻の船でイングランドのような国を征服できた者はおらぬ。しかし私は成し遂げるのだ。」と彼は言った。
「でも私が考えるような軍船を造ってもかかる費用は同じです。あなたもお分かりだと思いますが、イングランドに船で向かうのは大変です。あなたは岸を覆い尽くすような兵を連れて行くのでしょうが、きっと兵はかの国の支配者は彼らを襲うでしょう。大きな商船よりは軍船で港に入る方がはるかにいいことです。」と彼女は答えた。
するとラグナルは勝利し、多くの王の首を取り、兵にたくさんの黄金を与えるのだという詩を詠った。
彼は船の準備を整えさせ、徴兵された。それゆえに船は重装備であった。この計画についてはけんけんがくがくと人々の口に上ったのであった。彼はまた腰抜けどもをあざ笑うかのような勝利を確信した詩を詠ったのであった。
船の準備が整い、良風が吹くとラグナルは乗船を命じた。彼は準備を整え、彼の妻は船にまで付き従った。彼は妻のもとから離れる前に彼女は貰ったシフトドレスのお返しをしたいと言った。そして彼女は灰色のシフトドレスを彼に差出し、これは髪で編んだもので、継ぎ目も折り返しもないもので、どんな刃も通さず負傷することがなく、神の加護のあるものだと詩で詠って伝えた。
彼は受け取り、出発した。
ラグナルはイングランドに舳先を向けた。彼は激しい風を受け、両船ともイングランドの海岸で座礁した。しかし彼の家来達全ては服と武器を身に帯びて上陸し、彼が向かった村、要塞、城は攻略されたのであった。
イングランドを統治する王はエッラといった。彼はラグナルが国から出たという話を聞いた。そして彼の軍隊が上陸したかどうかを探らせるために家来達を派遣したのであった。これらの者達はエッラ王のもとに戻り、彼に戦の話を報告した。するとすぐに彼は全土に召集を送り出し、盾を持ち、馬に乗れる者達、戦う勇気のある全てを呼び出した。彼は莫大な兵を集めた。それからエッラ王と彼の家来達は戦の準備をした。
「もし我らがこの戦に勝利し、ラグナルがいることが判れば、お前達は彼に武器を向けてはならぬ。彼の息子の報復が免れぬからだ。」と王は家来達に言った。
ラグナルも戦の準備を整え、彼はランダリーンが別れ際に渡した服を身につけた。そして手にはソーラの館の龍を倒した槍を持っていた。そして彼は兜を除いては武具を着けなかった。両軍が激突した。ラグナルの兵の数は圧倒的に負けていた。戦は激しく、たくさんの兵が戦死した。ラグナルが敵に向かっていくと、敵は皆闘争心が失せていった。その日彼は最前線で攻め立て、そして彼は周りの敵を打ち倒し、盾、鎧、兜をばっさばっさと切り倒した。彼の一撃はあまりに強くて何者も耐えうることができなかった。しかし彼らは彼を攻撃したり、矢を撃ったりしたのだが、あらゆる武器は決して彼を傷つけることはできなかったのであった。彼はエッラ王の兵をたくさん殺害した。この戦の終わりは、ラグナルの軍勢の全てが打ち負かされることであった。そして彼は盾の上に乗せられて運ばれ、捕らえられた。それから彼らは彼に何者か尋ねたが、彼は沈黙を守り、何も答えなかった。
「もし何者かを言わなければ、この者は人生の内で最大の試練を受けるだろう。彼を蛇の穴に投げ入れろ。そしてその中に長い間閉じ込めておけ。しかし彼が自らがラグナルだと言えば、すぐに出すのだ。」とエッラ王が言った。
彼は連れて行かれ、長い間穴の中に入れて置かれたが、どの蛇も彼を攻撃しなかった。
「こやつはとても強い男だ。今日、こやつに武器は噛み付かなかった。そして今、蛇も彼に喰いつかん。」と人々は言った。
それからエッラ王が家来達にラグナルの一番上に来ていた服を脱がせるように言った。これが行われ、すぐに蛇は彼に巻きついた。それからラグナルが言った。
「若い豚がぶうぶういうだろう。もしやつらが年老いた豚が苦しんでいるのを知ればな。」と彼は言った。
しかし彼はこれを言ったのだが、ラグナルかそれ以外の王であるかは明らかに知ることはできなかった。
それから彼は詩を詠った。

多くの者達のもとへ我は辛い梱を持ち込んだ、
そして51の戦を我は戦った。
我が死は蛇からもたらされるとは思いもよらなかった、
しかし運命はしばしば我らの考えとは異なる。

そして再び言った。

我が若き者達はもし我が運命を知れば唸るだろう。
(我が命が血を流すかのように苦痛がある。)
猛烈に蛇の牙が国を攻撃する
獣の中で我はすぐに死ぬだろう。

これで彼は人生をあきらめ、そして彼は連れ出された。エッラ王はここで死んだのがラグナルであるとうすうす気付いていた。彼はあれやこれやと考えをめぐらし、ラグナルの息子達がこれを知った時、どうなるかと考えた。彼は船の準備をさせ、人員を配することを決定した。そして一人の慎重で屈強な者に任せ、彼にイーヴァルと彼の兄弟達に父の死を知らせるように命じた。しかしこの旅は多くの者達の目には有意義なものではないと映り、これに従事しようとする者はほとんどいなかった。それから王が言った。
「この話に動揺した兄弟達には細心に注意を払え。」
彼は旅の準備を整えた。そしてその後、彼らは出発し、彼らの旅は首尾よくいった。
ラグナルの息子達はこの時、南の王国を荒らしていた。そして彼らは北に向きを変え、ラグナルが統治する王国を訪ねようとしていた。彼らはラグナルの襲撃の結果を知らなかったのだが、それをとても知りたいと思っていた。彼らは南から国の向こうに旅に出て、民衆の耳に彼らの到来が入ったところはどこででも、彼らは自らの城砦を破壊し、家財道具ともども逃げ出した。それゆえに兄弟達は家来達のための食料を見つけるのが困難であった。ある朝、「鉄面の」ビョルンが起きて、詩を詠った。それは城砦から毎日、鴉が飛んできて、ギャアギャア鳴き、砂の道上に南に飛んでおり、彼らの戦いで戦死した敵を餌にしているというものであった。そして再び詩を詠った。それはローマの領土に向かい、食料をほとんどとれず、自らの剣でたくさんの敵を倒し、鷲が殺害された者達の上で鳴き叫んでいるというものであった。


エッラ王の使者達が到着する前に彼らはデンマークに到着した。そして彼らはすぐに家来達と共に屋敷に行った。使者達と彼らの一行はラグナルの息子達が宴を行っているところへムあっ他。彼らは宴が行われていた屋敷に入り、イーヴァルのいる高座に近づいた。「蛇眼の」シグルドとフヴィートセルクは将棋を興じていた。しかし「鉄面」ビョルンは館の床で槍の穂を砥いでいた。使者達はイーヴァルの前に行った時、彼らは挨拶をした。彼は彼らの挨拶を受け、彼らに用向きを聞き、彼らの話を聞いた。彼らは自らは英国人で、エッラ王がラグナル王の死の知らせを伝えるために遣わせたと言った。この言葉にフヴィートセルクとシグルドは駒を落とし、話にじっくりと耳を傾けた。ビョルンは床の中ほどに立っており、槍の柄にもたれかかっていた。しかしイーヴァルは彼らに父の死について注意深く訊ねた。彼らはラグナルがイギリスに到着してから命を落とすまで全てを語った。そして話が要点に達すると、彼は言った。
「私の若者はうなる。」
ビョルンは槍の柄をあまりに激しく掴んだので手にしっかりとあざが残った。使者達が話し終えると、真っ二つに彼はそれを折ったのであった。フヴィートセルクは駒を持ち、彼は動いて、彼はそれをきつく握り締めたのでそれぞれの爪から血が噴出した。「蛇眼の」シグルドはナイフを握り締め、話が続いている間、詰めを切っていた。そして彼はあまりに話に耳を傾けていたのでナイフが骨に深々と突き刺さるまで気がつかなかった。そして彼は微塵もたじろがなかったのであった。
しかしイーヴァルは注意深く話について訊ねた。顔だけが赤くなったり青くなったりと交互に色が変わった。そして出だしは彼は青ざめ、彼の皮膚の全ては怒りに打ち震えた。
フヴィートセルクはエッラ王の使者達を殺害してすぐに復讐すべきだと言った。
「それはだめだ。彼らは安全に出てもらう。」とイーヴァルが言った。
そして使者達は使命を終えて、館を出て船に向かった。彼らは良風を受けて、海に出た。そして彼らはエッラ王のもとに到着し、報告するまで順風満帆であった。エッラ王がこれを聞いた時、彼は言った。
「我らはイーヴァルやそれ以外の者達に注意しなければならない。彼らは皆、獅子の心をもっている。しかし我らは彼らについて考えておかねばならぬ。」
そして彼は国中に見張りを置いて注意を払った。
しかし使者達が兄弟達のもとを去った時、彼らはどのように父ラグナルの復讐を遂げるかを話し合った。
「予言どおりにラグナルに降りかかったので、俺はかかわらぬし、兵も与えぬ。初めから悪運は見えていた。彼はエッラ王と口論しなかった。そして頑固者が我を押し通すと、悪いことが起こるものだ。もしエッラ王が補償するのであれば、受け取ろう。」とイーヴァルが言った。
兄弟達はこれを聞いて非常に激怒した。そして彼らは屈辱には耐えられぬといった。
「たくさんの者達が言うだろうよ。もし父の仇を取らねば、我らの手は膝の上に置いておくしかできんのかよと。我らは世界中の至る所で略奪を行い、たくさんの無実の者達を殺害した。デンマーク中の船の準備を整えるんだ。多くの兵を集めて、エッラ王に向かっていくんだ。」
しかしイーヴァルは彼自身が所有する一隻を除いて彼が指揮する全船を残すだろうと言った。そして彼がこの事件に興味を抱いていないと周りに知られると、兄弟達は遥かに少ない兵しか手に入れられなかったのだがそれでもなお彼らは出発した。
彼らはエッラ王が警戒するイングランドに到着すると、王はすぐに警笛を鳴らさせ、彼に従う者達が全て招集されたのであった。このようにして彼はその数が計り知れないほどの大兵力をかき集め、彼は兄弟達に向けたのであった。イーヴァルは会戦の時、その場にはいなかった。その戦いはラグナルの息子達の敗走で幕を閉じ、エッラ王が勝利した。彼が軍勢を追いかけている間、イーヴァルは帰郷する意図はないと言った。
「エッラ王が俺に栄誉を示そうが示めさまいが挑戦するつもりだ。立ち去るよりは賠償を受け取る方がいいに決まっている。」とイーヴァルは言った。
「俺は協力する気はないね。俺は俺の意志で動く。だが我らは決して父の死への補償なぞは受けとらぬ。」とフヴィートセルクが言った。
イーヴァルはここで彼らと別れなくてはならぬと言い、そして彼らに共同統治して王国を統治するように言った。
「しかしお前達は俺が求める動産をよこすんだ。」
彼がこれを言った後、彼は別れを告げ、エッラ王のもとへ足を向けた。彼が追うの前に現れた時、彼はうやうやしく挨拶して名乗りをあげた。
「俺は和解のためにここに来た。今は俺は貴殿とは立場が違う。俺は家来や自らの命を失うよりは貴殿から賠償を受ける名誉を得たい。」とイーヴァルは言った。
「お前を信じぬ方が得策だという者がいる。お前は裏切り行為をする時、見事に話すそうだな。お前やお前の兄弟達から国を守るのは困難だろうな。」とエッラ王が言った。
「俺が貴殿に要求することはほんのささいな事だ。もし貴殿が認めるのであれば、決して貴殿には刃を向けぬと誓おう。」とイーヴァルが言った。
それから王が彼が望む賠償を訊ねた。
「そうだな。牛の原皮の大きさだけの土地が欲しい。そこに要塞を築くつもりだ。それ以上の要求はない。どうだこれを認めぬというのであれば、貴殿はケツの穴の小さい奴と言われるぞ。」とイーヴァルが言った。
「それがどんな災いになるのか判らぬ。だがお前が我が国を脅かさず、兄弟達も反旗を翻さないというのであれば、認めよう。」と王が言った。


彼らの間でこれが同意され、イーヴァルは決して王を脅かさない事を誓い、その見返りに牛の原皮で覆える広さの土地を手に入れることになった。
それからイーヴァルは年老いた雄牛の原皮を手に取ると、柔らかくして大いに引っ張った。これを彼は原皮を銀面(皮の表皮)と床(肉に近い部分)に分け、できるだけ細く切り裂き、彼は引き延ばした。それが終わると、それは誰もが想像もつかぬほどの驚愕すべき長さになった。彼はそれを野原に引き延ばし、大きな城塞ができるに価する広さの土地を囲った。そして外側に彼は強固な壁のための基礎部のために印を付けたのであった。それから彼はたくさんの大工を呼び寄せ、野原にたくさんの館を建造させ、巨大な城塞が立ち上がり、それは最大で最も名が知れることになるロンドン城塞と名付けられたのであった。(はいはい、そこ、ロンドンは先史時代からあって、ローマの領でロンダリウムと名づけられて、と、博学なあなた、つっこまい、つっこまない。誰がなんと言ってもイーヴァルがロンドンを作った〜とヴァイキングファンなら言っておきましょう。こてんぱんにされてもお助けできませんが(をい)。
彼がこの城塞を建て、全ての自らの動産を使い果たした。彼は気前が良く、困難な事に対して適切な助言を行う賢者であった。こうして彼は皆から信頼を勝ち得たのであった。そして彼にはたくさんの友人ができた。彼はこの国の統治でエッラ王に絶大な援助をし、王は彼に支援し、彼は何不自由なく暮らしていた。
イーヴァルは目的を達し、平穏に過ごしていた。彼は兄弟達に金銀を要求した。使者達が兄弟達を訪ね、用件を伝えた時、彼らは暗雲が立ちこめていることに気が付かなかった。兄弟達はイーヴァルが以前のそれではないと判った。彼らはイーヴァルに要求されただけの財宝を送った。そしてこれがイーヴァルのもとに到着した時、彼はこの国の最も強い者達に与えた。こうしてエッラ王の家来達をも取り込んだ。彼らは皆イングランドで戦いが勃発すれば彼に従うと約束したのであった。
イーヴァルがこうして多くの心を掴んだ時、彼は兄弟達に全土から船と兵をかき集めるように伝えるために使者を送り出した。そしてこれが伝えられた時、彼らはすぐに勝利が得られるに違いないと考えたのであった。彼らは全デンマークとガウトランド、彼らの力が及ぶ所から兵を集めた。彼らは数えれないほどの兵を集めた。
それから彼らはイングランドに向けて帆を揚げ、昼も夜も航海した。これがエッラ王に報告された時、彼は兵を集めたのだが、人々の心がイーヴァルに向いていたためにわずかな兵しか集めることができなかった。そしてイーヴァルがエッラ王に謁見し、彼に誓いを守るように命じた。
「俺は兄弟達の行動まで管理できんよ。だがあいつらとどうにかして会って、進軍をやめるように言ってみよう。」とイーヴァルは答えた。
イーヴァルは兄弟達を訪れ、最善を尽くして進むように言った。そしてできる限り早く戦うように言った。
「王はお前達よりずっと少ない兵しか集めることができていない。」と彼は言った。
彼らはイーヴァルに言われるまでもなく進むと答え、彼らの意図は以前と同じであると言った。その後にイーヴァルはエッラ王に会いに行った。王に兄弟達はあまりに激しくて彼の言葉に耳を貸さなかったと言った。
「だがやつらが貴殿に向かって雄叫びをあげた時、俺は貴殿とあいつらとの平和の架け橋になろう。今は貴殿との誓いを成就する時だ。だが俺の家来は待機させ、出陣はさせぬ。」と彼は言った。
この後すぐにエッラ王と彼の民衆は兄弟達の軍隊と対峙し、驚くべき早さで接近した。それからイーヴァルが言った。
「閣下、今がその時、閣下の兵を出すのです。」
両軍が出会った時、激しい戦が起こり、ラグナルの息子達はエッラ王の陣を激しく攻撃した。エッラ王軍はばたばたと倒れていった。そして闘争は激しくて長かった。戦の終わりの時、エッラ王と彼の兵は逃走に転じたが、王は捕らえられた。イーヴァルはこの時そばにいた。そして彼は彼らに王の殺害を提案した。
「こやつが我が父に死を与えた事を思い出す時だ。熟練木工職人、できるだけ深くこやつの背を割り、鷲の処刑をし、鷲をその血で染めるのだ。」
これを実行するために呼ばれた1人の男はイーヴァルが命じたようにした。エッラ王は苦痛に苦しんだ。彼はこの後に息絶え、兄弟達は父の仇を打ったと思った。イーヴァルは彼らが以前に共に所有していた王国を彼らに譲り渡し、自らはイングランドを統治すると言った。


この後、フヴィートセルクとビョルンとシグルドは故郷の王国に戻ったが、イーヴァルはイングランドに残って、統治した。この時から彼らはそれぞれの道を行き、兵と共にすることもめっきりと減り、様々な異なる国々を襲撃した。彼らの母のランダリーンはこの時、年老いていた。ある時、彼女の息子のフヴィートセルクがロシア圏内のいくつかで戦を行っていた。強力な兵が彼に攻めてきたので、彼はあらがうことができず、捕らえられた。彼は戦死者達の頭蓋骨の薪の上で焼かれることになった。そして彼は命を落としたのであった。ランダリーンがこれを知った時、彼女は詩をうたった。

私の息子の1人は東で殺害された、
フヴィートセルク、彼は決して敵に背を向けなかった。
彼は殺害者の頭の上で焼かれた。
彼が絶命する前、この死を彼が選んだのだ。

そして再びうたった。

たくさんの頭蓋骨の上に彼は場所を得た、
そして炎が彼の死を歌うように命じられた。
戦士を寝かせるのどんなよい寝床だろうか。
王は彼を打ち負かせた。彼は名声をもって逝った。

「蛇眼の」シグルドからは大家系が生まれることになる。彼の娘はノルウェイの最初の単独王になるハラルド美髪王の母であるラグンヒルドである。イーヴァルは病床で死ぬまでイングランドを統治した。彼は最後の病床についた時、彼は戦の危険に最もさらされている土地に彼を埋葬するように民衆に言った。彼は上陸して勝利を得ようとする敵への守護神になろうとしたのである。彼が死んだ時、彼らは言いつけ通りに行い、彼は埋葬塚に埋葬された。そしてシグルドの息子のハラルドがイングランドに来て、イーヴァルが眠る場所にやって来たと言われている。そしてこの襲撃で彼は命を落とした。そして私生児ウィリアム(ノルマンディー公ウィリアム征服王)が上陸して、この地に来た時、彼はイーヴァルの塚を破壊して暴いたのであった。彼は全く朽ちていなかった。まぁ、聖人にはよくある話やね。彼は大きな薪を組み上げ、イーヴァルを荼毘に伏した。この後、彼は国を荒らして、征服したのであった。
多くの者達は「鉄面」ビョルンから由来するのである。その1人はホヴダストランドのホヴディに住むトルドである。彼は大首領であった。
全てのラグナルの息子達が死んだ時、彼らに従った軍勢は至る所に拡散した。そしてラグナルの息子達に従った彼らの誰1人として他の王にその価値を見いださなかった。その内の2名は国中の至る所を旅をして、彼らが望む王を探しに出た。しかし彼らは共に旅をしなかった。


ある国の王には2人の息子がいた。王は病死し、2人の息子達は父のために葬儀の宴を行いたいと望んだ。彼らは続く3度の冬の間にこれを聞いた全ての者達を宴に招待した。これは至る所で噂になった。3度の冬の間に、彼らは宴の準備をした。宴前の夏に、約束がなされ、かつてない程のたくさんの者達が集った。たくさんの大きな大広間が準備され、外にはさくさんの天幕が張られた。
初日の夜も更けた頃、1人の男が大広間に入ってきた。彼は他の者よりずっと背が高かった。そして彼の衣装からその身分の高さが伺えた。彼が大広間に入ってきて兄弟の前に来て彼らに挨拶した時、彼らに座る場所を求めた。彼らは喜んで見知らぬ者を受け入れ、彼に上部の長椅子に座るように言った。彼は2人分の場所を要求した。彼が座った時、他の者達のように彼に酒が運ばれた。しかしあまりに大きく一飲みで飲み干せない角杯であった。
二人目の男がこの宴に入ってきた。彼は最初の者より大きかった。彼は最初の者のような広い帽子を被っており、若い王達の玉座の前に来て、挨拶をし、座る場所を求めた。彼らはさらに上の長椅子に座るように言った。彼はその場所に行った。そして見慣れぬ者達があまりに大きかったので、彼らのために5人が立ち上がって場所を開けなければならなかった。最初に入ってきた者はあまり酒を飲まなかった。しかし二人目の男はあまりに早く飲んだので、彼は数本の角杯からエールを一気に口の流し込んだ。それでもなお彼を酔わすものには思われなかった。むしろ彼は長椅子に座っている彼の仲間達に不服を感じたのか、彼らにくるりと背を向けた。最初に入ってきた男は彼に遊びに参加するように言った。
「どれ俺が先にやってやろう。」と彼は言った。
彼は手で相手を押しのけ、この詩を歌った。

汝に命ず、汝がやった行いを我らに話せ、
汝は鴉を殺害でたらふく喰わせたか。
それ以上に汝は館で座って飲み食いした
平野で戦の鳥をもてなす以上にな。

外側に座っていた者は返歌を求められたように思われたので、彼は詩を返した。

静まれ、屋敷にしがみついた汝。
汝の行いのどれも我を打ち負かさぬ。
汝は決して狼どもに餌も酒も与えぬ
お前を悩ますのは一体なんだ。

最初に来た者は答えた。

波を越え強固な船は出帆した、
輝くチェーンメールの下で我らの肉体は流血した。
狼の口は我らが殺害せり戦士達に口を開けた、
我らは黄金を勝ち得た、そして鷲に餌を喰らわせた。

それから2番目に来た者が言った。

流れる海の上、波の軍馬、
我らの船が押し出された時に汝はどこに行ったのだ。
我らが舳先を陸に向けた時、
我は汝の姿をほとんど見なかった。

再び、最初の者が言った。

かの日にどちらが優れた者かと
我らがここで口論するのは適当ではない。
我は上陸した時に船首のそばに立った
汝は航行する時に帆柱のそばに立った。

2番目の男が答えた。

我ら両者はラグナルとビョルンと共に戦った。
我らはひるむことのない英雄だ。
ブルガール帝国の戦で我は脇を負傷した。
同志よ、長椅子のこっちにこい。

こうして彼らは互いに誰かをついに認識しあった。そして共に宴に興じたのであった。


デーン人であると言われたオグムンドという男がいた。ある時、彼は5隻の船で出発し、ムナルヴァルグの港のサムセイで碇を降ろした。彼の料理人達が岸に料理の準備をするために降り、その他の者達は森へ入っていった。彼らはそこで木製の古代の男を見つけた。それは40エレの高さで、苔で覆われていた。彼らは全てのその特徴を見て取ることができた。そして彼らはこの大きな木像に捧げたのは誰かといぶかしんだ。すると木像の男が語りだした。

海の王の息子達が船を進水し
この道を来てからしばらくだ、
海の道を越えての航海だ。
わしはそれ依頼ここに暮らしている。

猛き戦士達、ロズブロークの息子達、
その時、海際にわしを立てた。
この岸のわしに彼らは捧げたのだ
敵どもの死をわしに祈ったのだ。

わしにこのいばらの傍らに立つように言った、
苔は育った、この岸がもつ間は。
肉も服もわしに与えられぬ
わしを冷たい雨の打撃が打ちつける。

これは彼らにはとても不思議な事に思われた。そして彼らは後にこれについて人々に語り継いだのであった。

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