Velents þáttr smiðs

57章・Velent nemr smíðar hjá Mími.

すでにお話済みのヴィルキヌス王と人魚(魚女)の子供のショーランド(シェラン島)の巨人のヴァディの話に移る。彼は父が与えた館で暮らしていた。彼は戦士ではなかった。そして父に与えられた境遇でのほほんと暮らしていた。
 ヴァディにはヴェレント(Velent)という息子がいた。彼が9才になると、父は息子が何かすることを望んでいた。彼はフンランドの一人の鍛冶屋のことを耳にした。鍛冶屋の名前はミーメ(Mímir)といった。そして彼は最高の職人であった。ヴァディは息子を連れて旅にでて、ミーメに息子に鉄鍛冶を教えるようにと頼んだ。この後巨人のヴァディは館のあるショーランドに戻った。
 この時、シグルズはミーメのもとにおり、奉公に支障をきたし、彼らに暴力をふるったりしていた。巨人のヴァディは息子のヴェレントがシグルズによっていじめられていると知った。彼は息子に伝言を送ったので彼はショーランドに来た。ヴェレントは3年間フンランドで過ごし、彼は12歳になっていた。彼は1年間修行を積み、今や最高の職人になっていた。

58章・Velent fær ársvist með dvergum tveim.

ショーランドにいるヴァディは2人のドワーフがカッラヴァ(Kallava)という山に住んでいることを知った。これらのドワーフは人間とドワーフの中で最も鉄工に優れていた。彼らは鉄で剣、チェーンメール、兜などありとあらゆる類の物を作り出した。彼らはまた金銀の宝飾にも長け、あらゆる宝飾品の細工にも長けていた。彼らは望んだものはどうやって作るかを知っていたのである。
 ヴァディは息子とともに館を出て、グレナスンド(Grænasund)にやってきた。そしてそこには海峡を渡る船が見当たらなかった。彼らはしばらく待ったが、その後、ヴァディは息子を持ち上げると型に乗せて、海峡を歩いて渡った。水深は9エレ(約4m30cm)であった彼らが山に到着するまでこの後のことは語られていない。巨人のヴァディはドワーフ達を見つけ、彼らに話し掛けた。彼は息子のヴェレントを紹介し、1年間修行を積ませたいと伝え、望むだけの黄金を与えようと言った。すると2人のドワーフは少年を預かり、技術を教え込むと了承し、その見返りに1マルクの黄金が欲しいと言った。巨人のヴァディは承諾し、すぐに彼らの手に黄金を渡した。1年間という契約がなされ、それがまっとうされることになる。

59章・Vaði ræðr Velent til annars árs.

ヴァディはショーランドに戻り、ヴェレントはそこに留まり鍛冶の腕を磨いた。彼は目にしたものは何でも作り上げるまでの腕前になった。彼はよく奉公したので、契約期間が切れてもドワーフ達は彼を離そうとはしなかった。彼らはヴァディにもう1年間(tólf Mánaða)、彼をとどめておきたいと頼んだ。ヴェレントを去らせるよりは、彼らは1マルクの黄金を手放す方がいいと思った。そして彼らは彼が今まで学んだようにもう1年たくさんの技術をもっと学ばせたかった。ヴァディはこの選択を受け入れた。しかしドワーフ達は言ったことを後悔し、彼らは巨人のヴァディに、もし彼が決められた日に息子を迎えにこなかったら、彼らは息子の首をちょんぎると言ったのであった。こうやって話し合いがついて、巨人は帰路につくことになった。
 巨人のヴァディは息子を呼んで、彼に山の外(ドワーフは土中に住んでいる)までついてくるように言った。そして彼はそうした。彼らは長い間話し合った。巨人のヴァディは剣を手にして茂みにぶすりと押し込んで隠した。それから彼はヴェレントに話し掛けた。もし彼が約束の日に迎えに来ることができなくなって、ドワーフ達がヴェレントを殺害しようもんなら、この隠した剣で身を守れと言った。  こうして親子は別れた。ヴァディは館に戻り、ヴェレントはドワーフのいる山に戻った。そして1年間みっちりと腕を磨いた。彼が卒業する時、彼はドワーフ達並の腕前となっていた。彼の奉公はドワーフ達にとってもいいものであり、ドワーフ達がねたむほどになっていた。こんな状況下でヴェレントは腕を楽しんで磨くこともできなかったのである。

60章・Dauði Vaða risa.

12ヶ月経ったので巨人のヴァディは息子をすぐに引き取りに行こうと思った。彼は館を出て、一日中足を止めず、約束の日の3日前に到着したのであった。山は入る隙間がなく、入ることができなかった。彼は山にもたれかかり、入り口が開くのを待つことにした。
 彼は旅の疲れが出て、深い眠りについてしまった。彼はお人よしであった。彼は大鼾をかいて寝ていた。それから土砂降りの雨が降った。この時、大地震が起き、水で地すべりが起きた。土砂、木々ありとあらゆるものが流れてきた。こうして巨人のヴァディは生き埋めになり、命を落としたのであった。

61章・Velent drepr dvergana ok lætr berast á haf út.

約束の日がやってきた。ドワーフ達は山の入り口を開けて巨人のヴァディを探した。ヴェレントは父を探した。彼は山腹沿いに歩き、地すべりが起きているのを目の当たりにした。そして彼は地すべりで父親が亡くなったと思ったのであった。そして彼は助けがこないと思い、父との約束を思い出した。彼は父が剣を隠した茂みに向かった。茂みの木々は大きく育っていた。ヴェレントは自身の境遇が厳しいものであると理解し、どう生き延びようかと思案した。
 彼は周りに目をやり、剣の柄が地面から顔を出しているのを目にした。ヴェレントはそこへ行き、剣を引っこ抜いた。そして剣をじっとみて、これからどうしようかとひとりごちたのであった。
 彼はドワーフ達が山に立って見回しているのを目にした。ヴェレントは山をのぼてゆき、上着の折り返しに剣を隠していた。彼はドワーフ達に向かってゆき、決定的な一撃を行い、2人を殺害したのである。彼は運べるぐらいの大きな荷物を手にとって北のデンマークに向かった。
 ヴェレントは3日間全速力で進み、ヴィサラ(Visara)という大河にたどり着き、そこでしばらく足止めをくらった。ここは海にそう遠く離れていない場所であった。彼はここで野宿をした。彼は河の土手に行き、大きな木が生えているのを見た。彼はそれを切り倒した。それから切り裂いて、内側をくりぬいた。彼は道具と宝物を別々に積み込んだ。そして分厚い方に食料と共を乗せて乗り込み、ふたをしめて水が入り込まないようにした。彼は木をくりぬいて作った窓にガラス(gler)をはめ込んだ。このガラスは自由に取り外しができるものであった。ガラスをはめ込んでいる間は木がまるで一本の木のように水が入り込まなかったのであった。
 こうしてヴェレントを入れた木は水にぷかぷかと浮いていた。そして木は海に漂い流れ、そこから大洋に出て、岸に打ち上げられるまで8日間漂ったのであった。

62章・Velent kom til Niðungs konungs.

ニズング(Niðungr)という王がいた。彼はショーズ(Þjóði)というユトランドの地域を治めていた。ある日、王の家来が海にいって、網で王の食卓に並べる魚を獲っていた。彼らが網が重くて、岸にまで引っ張ってゆかねばならなかった。彼らは大きな木が網に入ってたので驚いたのであった。彼らは陸まで引き上げた。彼らはこの木の種類がなんであるかを考えた。彼らは木が見事に彫刻され、宝箱であろうと思ったのであった。というのはその造りが見事で、あまりにも重かったからであった。家来達は王にこれを見に来るようにと伝えに行った。
 王が来て、これを目の当たりにした時、王は家来達に中に入っているものが見たいと言った。それから彼らは幹を打ち付け、ヴェレントが外で何が起こっているか分かった時、彼は叫んで、彼らの手を止めるように言った。彼らが声を聞いた時、木の中に邪鬼がいると思った。彼らは恐れおののいて逃げていった。
 ヴェレントは幹を開けて、王の前に出た。そして彼は王に自身が人間であり、トロル(troll)ではないと伝え、命と身の回りの者の安全を願った。王は突拍子もない状況であったが彼が容姿もよく、妖魔ではないと理解した。彼は保護を約束した。それからヴェレントは道具と宝を手にとると、それらを木の幹と共に地面に埋めた。王の騎士の一人がそれを見ていた。その者の名はレギン(Reginn)といった。

63章・Velent smíðar konungi kníf.

ヴェレントはニズング王のもとですごしていた。彼は礼儀正しかった。彼の仕事は王の食事時に使われる王の3本のナイフの世話係であった。彼がここで1年間いた時、彼は海に行って、ナイフを洗うことをしていた。
 王所有の最高のナイフを彼は手を滑らせて海中に落としてしまった。その海は深く、拾うことはできなあかった。ヴェレントは戻った。そして王がナイフを落としたことを悪く思うであろうと思った。
 それから彼は自らの境遇を嘆き、自らは家柄がいいのにもかかわらず、いまはちっぽけな存在であると嘆いた。こんなちっぽけな仕事さえ失敗してしまう自分を嘆いた。
 ニズング王に仕える一人の鍛冶屋がいた。彼はアミリアス(Amilias)と言った。彼は鉄で製作できるものはなんでも王のために作った。ヴェレントはアミリアス鍛冶職人のところへ行ったが、彼は食事のために席をはずしていた。ヴェレントは鍛冶場にすわり、ナイフを作った。この後、彼は3つのうねのある鋲を作り、鉄床にをれをおいた。人並みはずれた技を駆使した。ヴェレントはアミリアスが戻るまでに鍛冶仕事を終わらせた。

64章・Veðmál Velents ok Amilias smiðs.

ヴェレントは王のもとに戻り、王の食卓の前に立ち、何もなかったかのように仕事をした。王は前に置かれたナイフを手にとり、できのいいパンの一塊を手にとった。そしてナイフの切れ味に驚き、ヴェレントにこのナイフは誰の手によるものかと尋ねた。ヴェレントはアミリアス以外にそんなことができるものはいないと言った。アミリアスはそれを聞くと否定もせずに自身が作ったといい、自分以外にいるはずもないと言った。これに対して王はこんなナイフは今まで手にしたことがないといった。そして再びヴェレントに向かって言った。
「本当にお前が作ったんじゃないんだな?」と王が言った。
「怒らないと約束してもらえるのであれば、私は真実を申し上げましょう。」とヴェレントは答えた。 そして彼はナイフを無くした事、その代わりに作ったことを明らかにした。
 アミリアスは黙ってはおられず、自身はこれ以上の作品を作り出すことは無理であるが、ヴェレントより腕が劣っているとは認めたくないので、自らの腕がヴェレント以上であると証明したいと申し出た。これに対してヴェレントは自分は何でも長けているというわけではないが、テストするというのであれば鍛冶仕事だけは一生懸命にすると言った。
「アミリアスが一部つくり、他を自分が作ってどちらが優れているか確かめよう。」とヴェレントが言った。
「よし賭けよう。」とアミリアスが答えた。
「でも僕はお金をたくさん持っていないけどアミリアスが思う物を賭けよう。」とヴェレントが言った。
「お金がないというのであれば首を賭ければいい。勝者が敗者の首を落とすというのでどうだ。」
「好きなものをかけるがいいさ。そして好きなものを作ればいい。じゃぁはじめようか。」とヴェレントが言った。
「ではお前は一振りの最良の剣を作れ。そして私は兜とチェーンメールのセットを作る。もしお前の剣で私が作った武具を傷付けたらお前の価値だ。しかし傷をつけることができなければお前の命はないものと思え。」
「じゃあそうしよう。二言はないね。」
「保証人を立てなきゃな。」とアミリアスが言った。 王の臣下の最高の勇敢な2名の騎士がアミリアスの技術を証明するために同意した。そしてアミリアスはヴェレントの保証人を誰にするかを訊ねた。そしてヴェレントの請負人になる者などこの国にはいないと言った。
 すると王がヴェレントは腕のいい鍛冶屋であると言った。そして木の幹に施した腕前を語り、そして彼が保証人など必要としないと言った。こうしてニズング王がヴェレントの保証人になり、2名の騎士がアミリアスの保証人になることが握手でもって締めくくられたのである。
 同日、アミリアスは全ての弟子を連れて鍛冶場に行き、準備をして1年間続けた。しかしヴェレントは毎日王の食卓の仕事で働き、何もなかったかのように1年が過ぎたのであった。

65章・Horfin smíðatól Velents.

ある日、王はヴェレントに賭けに勝てるかどうか、いつやりたいかを訊ねた。すると彼は仕事ができる鍛冶小屋を準備してもらえれば望みどおりにすると言った。この要求が受け入れられ、鍛冶屋小屋が建てられ、ヴェレントはそこに道具とお金を隠した。
 木の幹が壊されて開けられて道具とお金が持ち去られていた。彼は気を悪くし、誰が道具を隠していた時、そこにいたのかを思い出したのだが、彼にはその者の名を知らなかった。ヴェレントは王に事の次第を話した。これは王は気分を害し、王は彼にやった張本人に心当たりがあるかどうかを訊ねた。
 彼は王に誰かは分かっているが、名前はわからないと答えた。王は集会(シング)を命じ、王国の伝言が伝えることができた全ての者達を召集した。この命令はユトランドの全ての家々に伝えられ、それを聞いた者は奇妙な話であると感じたのであった。そして何が起こっているか想像もつかなかった。集会が執り行われ、ヴェレントは皆の前に立ち、道具と黄金と財宝を盗った者を探した。ヴェレントはその者やそのような者を見つけることができず、それを王に報告した。
 王はこれを悪く思い、ヴェレントにこんなに努力をしてやったのに見つけられないことに気を悪くしていると言い、王国の者が全ているのにもかかわらず、見つけられないことを悪く思い、ヴェレントに愚か者と言った。
 王と民衆は集会を解散した。皆がヴェレントを悪者であると感じていた。彼は黄金と道具を失い、王の怒りを手にいれたのであった。

66章・Velent gerir líkneskju af Regin ok Fær tól sín.

しばらくしてヴェレントは犯人にとても似ている者の像を作った。それは頭の高さのものであった。ヴェレントは王の館に行き、王が用足しに行っている時に角に像を置いた。それからヴェレントは他の召使達と共に仕事に戻ったのであった。
 王と全ての家来達が外出し、ヴェレントが王の前にろうそくを持ってきた。王はあかりの方を見て、像に話し掛けた。
「おおこれは我が親友のレギンではないか。そこでぽつねんと何をしておる。お前は私がスウェーデンに行くように言付けたではなかったか?」
「このものは傲慢で答えることはありません。なぜなら私が記憶を元にして作った像ですから。この者が私の道具と金銭を持ち去ったのです。」とヴェレントが言った。
王がまさかこんなことで発見するとは思わなかったと言い、彼はスウェーデンに徴税のために出ていると言った。そしてヴェレントがいい祖Y九人で頭の良い者であると誉めた。そしてすぐに道具と金銭を取り戻そうと言った。そして馬鹿とののしったことに報いると言った。
 それからレギンは故国に戻り、王は彼に召還命令を出した。王は彼にヴェレントの道具と金銭を盗ったかどうかを訊ねた。すると彼はそれと認めた。ヴェレントは道具と金銭を取り戻し、彼は王の奉公に毎日ついて、こうして4ヶ月が流れたのであった。

67章・Velent smíðar sverðit Mímung.

時は流れ、王はヴェレントに鍛冶の賭けについて訊ねた。彼はすぐにでもできると答えた。王は準備は整えてあるのですぐに仕事に取り掛かるように言った。
 ヴェレントは鍛冶小屋(smiðja)に行き、7日間で剣を作った。7日目に王はやって来た時、ヴェレントはすでに剣を研ぎ上げていた。ヴェレントは川に王と一緒に行った。ヴェレントは足にはさまっていたフェルトのかけらを取り上げると川に投げ入れた。川の流れはそれを流していった。彼は剣の刃を水に突き刺した。そしてフェルトは刃に向かって流れていった。するとどうだろうかフェルトは刃によって真っ二つに分けられたのであった。
 王は見事な剣であると誉め、そばで見たいと言った。するとヴェレントはこれは最良の剣でなはいと言い、もっといい剣に仕上げると言った。王は嬉々として館に戻ったのであった。
 ヴェレントは鍛冶小屋に戻り、剣を粉砕して塵にした。それからやすりくずを手にとって、それと肉を混ぜた。彼は一羽の鶏を連れてくると、3日間えさの代わりに鶏に与えた。それから彼は鳥の糞を取って、炉に投げ、鉄から不純物を燃やし出しだ。それから彼はそれから剣を作り、前のより小さなものが出来上がった。
 剣が仕上がると、王はヴェレントを訪ね、すぐにそれを見た。王はよりすばらしい宝剣を手にしたいを言った。するとヴェレントはこれは名剣であるが、以前と大差ないと言った。そして彼らは川に行き、は2フィート厚のフェルトを投げ入れ、剣をさした。この剣は以前のように2つに切り裂いた。王はこんな名剣は見たことがないと誉めた。ヴェレントは以前のものより2倍のよさであると言った。これは王を喜ばせて、王は嬉々として館に戻ったのであった。
 ヴェレントは鍛冶小屋に戻り、またもや剣を粉砕した。3週間が流れ、ヴェレントは一振りの剣を作り上げ、輝くばかりに磨き上げ、黄金でしるしをつけ、すばらしい柄の彫刻を施した。
 そして王がヴェレントを訪ねて剣を手にした。剣はほどよい大きさで、手になじむものであった。彼らは川に行き、ヴェレントは3フィート四方のフェルトを手にしていた。彼それを投げ入れると、剣を突き刺した。するとフェルトは刃に向かって漂い、フェルトは水が別れるがごとくに裂かれたのであった。ニズング王はこれぞまさしく宝剣と誉め、これで戦いたいと言った。するとヴェレントはこれはまさしく王のために作り上げたもので、早速、吊り革と鞘を作り、王に贈呈すると言った。
 王は喜んで館に戻った。ヴェレントは鍛冶小屋に戻り、炉の前に座った。そしてその名剣と同じような2本目を剣を作った。ヴェレントはその名剣をふいごの下に隠してつぶやいた。 「ミムング(Mímungr)、こにしまっておこう。いざって時のために。」

68章・Velent vinnr veðmálit.

ヴェレントは鍛冶小屋を閉めて、約束の日まで王の食事の奉公を毎日勤めていた。その日、早朝にアミリアスは鎧を着込んで、広場へ行き、見せびらかしていた。誰もがこんなすばらしいものを見たことがないと誉めた。それは2重になっており、すばらしく鍛えられていた。昼食頃、彼はチェーンメールを身に付けた。それは2重で大きくて長いものであった。彼は王の食卓へ向かった。このようなすばらしい武具はこれまでなかったかのようなチェーンメールであった。
 アミリアスは上機嫌で、まあたららしい武具に得意げであった。アミリアスが王の食卓に到着した頃、彼は兜を頭に被った。それはすばらしく磨きあげられ、大きくて分厚いものであった。この武具は王を大変喜ばせた。王が空腹を満たした頃、食卓が片付けられた。アミリアスは外に置かれていたいすのある広っぱに出て行き、そこに座った。それから王はヴェレントと従者を連れて行った。アミリアスは賭けをはじめようと言った。
 ヴェレントは鍛冶小屋へ行き、剣のミムングを手にすると王のもとへ戻ってきた。ヴェレントは剣を引き抜き、アミリアスが座っている椅子の背後に立った。そして兜に向かって刃を向けた。そしてアミリアスに準備がいいかどうか訊ねた。アミリアスは全身全霊を込めて打ち込めと言った。ヴェレントの一撃は激しく、兜から頭、チェーンメール、ベルトとばっくりと真っ二つになったのであった。これが今まで豪語していた者の末路であった。
 王はヴェレントに剣を譲るように頼み、彼ははそれを持ち去った。ヴェレントは鍛冶小屋に戻りこれを鞘に入れて、それから全部お渡しすると言った。王は大喜びであった。ヴェレントは鍛冶小屋に行き、ミムングを放り投げて下に隠し、用意してあったもう一本の剣を鞘に収めるとそれを王に献上した。王はこれがヴェレントが試練に使用したものだと信じ、彼は世界の宝剣を手にいれたと喜んでいた。こうしてまたしばらく時は過ぎ去るのであった。

69章・Velent verðr frægr af smíðum sínum.

ニズング王は王国におり、今や名を馳せる鍛冶職人のヴェレントもそばにいた。ヴェレントはヴェーリング達はヴァランズ(Völund)と言っていた。彼は金銀やあらゆる材料からあらゆる類の財宝を作り出した。ヴェレントは北世界で有名であったので、ヴェレントの右にでる腕前のものはいないとまで賞された。ヴェレントはニズング王の最高の栄誉を受けていたのであった彼はその栄誉と人々の賞賛に満足していた。

70章・Velent sækir sigrsteininn ok vegr dróttsetann.

ある日のこと、ニズング王が食卓につき、王の前にやってきて、王に王国に大軍団が進軍しており、すでい大損害を出していると報告した。ニズング王は軍隊を招集し、軍隊は彼らが気づくまで5日間の間、進軍した。
 天幕が立った頃のある夕方に、勝利の石(sigrsteinn)を忘れて来ていると王は気づいた。王がこの石を持っている時は勝利が舞い込んできたのであった。この石は自然の産物なのかどうかは伝えられていない。王は石た手元にないことを悪く思った。彼は賢者や親友に相談し、次の日の夜明けまでに石を取ってくることができれば、娘と国の半分を与えようと言った。多くの者達がこの任務に就きたいと思ったのだが、夜も過ぎたこんな時間ではとうてい無理な話であった。王は誰も任務につくものがいないと分かるとヴェレントを呼び出した。そして彼にこの命に従うように頼んだ。するとヴェレントはそれを承諾した。
 ヴェレントは名馬スケッミング(Skemmingr)にまたがった。この馬は既述の馬名人の老スティダの牧場で生産されたものであった。この名馬は飛ぶ鳥がごとく足が速く、何につけても優れていたのであった。ヴェレントは5日間進軍した道を一日中走り抜けた。彼は真夜中に城に到着し、勝利の石を手に取ると日の出までに王の天幕にと戻っていった。ヴェレントは名馬スケッミングを駆けさせ、王の天幕から7名の家来達が出てきて馬に水を与えた。
 その指揮官は王の家老であった。彼らはヴェレントを暖かく迎えた。家令(dróttsetinn)がヴェレントにきっと君なら成し遂げるであろうと思っていたと言った。ヴェレントは石を見せて、使命を果たしたと伝えた。
「その石を譲ってくれないか。私が取ってきたことにする。なに見返りは金銀で十分にやるさ。」と家令がいった。
さすがにこれにはヴェレントはこの話を納得できずに反論した。すると家令は彼が王の娘を本当に娶れると思い込んでいることを馬鹿にした。そして彼を単なる鍛冶屋で身分が低く、自分は身分が高いと罵った。そして納得がいかないのであれば剣でもって納得させろと言った。
 それから彼らは彼に打ちかかり、ヴェレントはミムングを抜いた。そして家令を攻撃して兜を被った頭を真っ二つに引き裂いたのであった。そうしてこの男は絶命して、残りの6名の家来はそそくさと逃げ去ったのであった。

71章・Niðungr konungr gerir Velent útlægan.

ヴェレントは王に石を引き渡した。それから彼は王に今までの出来事、家令を殺害したことを報告した。王は家令は最もできのいい可愛がっていた家来であったのでそのことを歓迎しなかった。そしてヴェレントに国外追放を命じたのであった。もし国に留まるというのであれば、最悪の盗賊並の扱いで死ぬであろうと付け加えた。
 ヴェレントはすぐに王のそばを離れ、なぜこんなことを言うのかと、約束違反ではないのかと訊ねた。ヴェレントは王から屈辱を受けて出発した。同じ日、王とその軍隊が襲撃者を剣を交えた。そしてニズング王は勝利して、侵入者を追い出し、国を平定した。彼は賞賛のもとで国に戻り、誰もヴェレントの消息を知らなかった。しかしニズング王は王国の館で過ごしていたのであった。

72章・Konungr lætr skera hásinar Velents.

ヴェレントうは不幸であった。彼は王の怒りを買い、追放者となった。彼は復讐を思い立った。彼はこっそりと見られることなく王の宮廷へ入り、台所へ行き、彼は自分が調理師であると言った。そして彼は他の調理師達に混ざって料理をした。そして王と娘に食事が用意されたのである。彼女はナイフを取って、前にある皿の食べ物の一切れに突き刺した。食べ物に異物が混入しているかのようにナイフが変化した。ナイフの握りはすぐにその兆候を映し出した。娘は毒が食べ物に混入されているとわかり、父に伝えた。王は激怒し、当番を呼び戻した。彼はその者がヴェレントであると判った。王はヴェレントに覚悟するように言った。それからヴェレントは王の前に座らされた。王は彼のふくらはぎから足の甲まで、そこから下アキレス腱からかかとの骨までの両足の腱を切らせた。こうして彼の両足は不具となったのであった。ヴェレントは王の宮廷内で最下位の扱いをされるようになったのであった。
 ある時、ヴェレントは王に自分の奉公の受けるべき報酬の代わりにこんなしうちをうけて、望まざるとも王のもとを離れられないと言った。すると王は確かに報酬の方が罰よりも上回っていると言い、彼に金銀を好きなだけ与えると言った。王は鍛冶小屋を建てて、ヴェレントをそこに連れて行った。そうしてヴェレントは毎日そこにいて、金銀や鋳造できるものからあらゆるものを王のために作ったのであった。

73章・Velent drepr konungssyni.

ニズング王には3人の息子と一人娘の4人の子供がいた。ある日、王の次男と三男がヴェレントの鍛冶小屋に弓を持ってゆき、彼に矢を造るように頼んだ。しかしヴェレントは時間がないと断った。そしてヴェレントは子供達にたとえ貴殿らが王の子であろうとも王の意思がなければ何も造らないと言った。しかしもし自分のちょっとした要求を受け入れるのであれば、造っても良いと言った。子供達は要求がなんであるかを訊ねた。ヴェレントは子供達に新しい雪が降った後に鍛冶小屋にまた来るように言った。そうして少年達はそれを気にとめることもなく冬を過ごした。同じ夜、雪が降り、翌朝に王の息子達は太陽が昇る前に家事小屋にやって来た。そしてそこで彼らはヴェレントを待った。
 ヴェレントはすぐにやって来た。彼はすぐに扉を堅く閉め、彼らを殺害するとふいごの下に深い墓穴を掘った。この日の遅く、子供達がいなくなり、その消息を誰も知らなかった。王は子供達が森に鳥獣狩りか魚釣りに出かけたと思った。彼らは食事の時間まで探したのだが、なにもみつけることはできなかった。
 彼らはヴェレントのところへ行き、少年達がきたかどうかを訊ねた。ヴェレントは彼らはやってきたが、また出て行ったと答えた。彼らは弓と矢を持っており、おそらく森に出たのであろうと答えた。
 それから彼らは戻り、彼らは幼年たちの家路に就く跡を探した。誰もヴェレントを疑っていなかったのであった。
 何日も何日も王は息子達を探したのだが、発見はできなかった。彼らはもはや探すのをあきらめ、王は彼らが森に入って獣に怪我をさせられた、もしくは海で何かがあったのであろうと考えた。彼らは何も見つけ出せなかった。しかしヴェレントは自らに受けた仕打ちを根に持っていた。そして彼は復讐を企んでいた。
 それからヴェレントは少年達を取り出し、骨から肉を殺ぎ落とした。この後に彼は頭蓋骨を取ると、金銀で2つの大きなゴブレットを作り上げた。肩の骨と腰の骨でエールの柄杓を作り、金銀で飾った。彼はいくつかの骨でナイフ、フルート、鍵、王の食卓の燭台を作った。彼はそれぞれの骨で王の食卓に使うものを作った。それらはこのようなものでできているとは思わないようなすばらしい財産になったのであった。そしてこれらの宝が仕上げられ、王は宴で最も華々しい者になったのである。

74章・Velent bætti hringinn konungsdóttur.

王の娘(konungsdóttir)と侍女(fylgismær)が庭に出てたある日、彼女は最高の黄金の環(bezta gullhring)が壊れた。彼女は両親に打ち明けれず、侍女に相談した。すると侍女はヴェレントならすぐに修理できるでしょうと言った。彼女達はこれが最良の考えであると思い、侍女はヴェレントの鍛冶小屋に行き、この旨を伝えた。するとヴェレントは王の命なしには何もできないと答えた。侍女は王はこのことを悪くは思わないであろうと言い、ヴェレントならすぐに修理できるであろうと言った。そして修理してくれたら王は報酬を渡すであろうと言った。ヴェレントは侍女の言葉には従えず、王女をここに連れてくるように言った。侍女は王女のところへ行き、その旨を伝えた。王の娘はヴェレントのところへ行った。往生は鍛冶小屋に入り、彼に直すように頼んだ。彼は他にまず鍛冶仕事があるといった。彼は扉を固く閉じ、王女と床を共にした。こうして彼は別れる前に環を修理し、壊れる以前のものよりもすばらしいものになったのであった。彼らはしばらく2人ともこのことを秘密にしていた。

75章・Frá Agli, Bróður Velents, ok skotfimi hans.

ヴェレントが弟のエギッル(Egill)に伝言を送ったので、彼がニズング王の家臣に加わった。エギッルは容姿がよかった。彼は他のものより抜きん出ていた。彼は弓矢がとてもうまく扱えた。王は彼を暖かく迎えて、エギッルは長らく留まることになった。
 王はエギッルの腕試しを望んだ。彼はエギッルの3歳になる息子を連れてきて、頭にりんごを乗せた。王はエギッルに子供を傷つけることなく、頭から両側のどちらにも落ちないように射ぬけと命じた。彼に許されたのはたった1発であった。
 エギッルは3本の滑らかな羽がついた矢を手にとると、そのうちの1本を弦につけて引き、りんごのど真ん中を貫いた。矢はりんごの半分をもぎ取り、同時に地面にそれらが落っこちたのであった。この有名な射抜きは長く語られることになり、王はこれを光栄に思っていた。エギッルは一番の有名人になり、このことにより彼はルーン・エギッル(Ölrúnar-Egil)と呼ばれるようになった。  ニズング王はエギッルになぜ1本しか必要ではないのに3本の矢を取ったのかと聞いた。エギッルはをれはもし仕損じて息子を射抜けば、残りの2本で王を射ち殺すつもりであったと正直に答えた。王はこの言葉を快く重く受け止め、皆もこれをいい言葉だと思っていた。

76章・Velent ræðir við konungsdóttur.

万が一王に知られれば自らの命はないものになるが、ヴェレントはこうやって復讐を成し遂げた。ヴェレントは弟のエギッルを呼び、彼に王女を連れてくるように言いつけ、そのようにした。彼らは会って話をした。ヴェレントは彼女以外の妻は望まなかった。彼女もまたヴェレント以外には望まなかった。ヴェレントは彼女に最後の逢引の時、おそらく彼女が妊娠しており、男の子であれば喜ばしいと言った。そして子供にヴェレントのことを話すようにと言った。そして彼は息子のために武具を作り、それを水は入り、風が出て行く場所に隠しておくと伝えた。それは冷めた炉であった。こうして彼らは別れたのであった。

77章・Velent gerir sér fjaðrham.

ヴェレントが空飛ぶ道具(flygill)を作るために弟のエギッルに大小かまわずできるだけ羽毛を集めるよう言った。エギッルは森へ行き、ありとあらゆる羽毛を集め、ヴェレントに持っていった。ヴェレントは翼のあるハゲワシ(gripr)、もしくはダチョウ(strúz)といった類の翼を作り上げて、飛翔衣(fjaðrhamr)を作り上げた。出来上がるとヴェレントはエギッルにこれを着けて飛べるかどうか確かめさせようとした。エギッルはヴェレントに飛び方を訊ね、ヴェレントは風に乗り、着陸は風を受けろと言った。エギッルは翼をつけて、鳥のように軽やかに空に舞った。しかし着陸しようとした時、彼は頭を下に向けてしまいぶつけて脳震盪を起こした。ヴェレントは弟のエギッルに飛翔の道具の具合を聞いた。エギッルはこれはいいものでどこまででも飛べると答えた。
 それからヴェレントはエギッルの手助けで飛翔の道具を身につけ、屋根に上がり、空を舞って、着陸の仕方はうそを教えたと言った。それはエギッルがこれをもって逃げないようにわざとそう言ったのだと付け加えた。そしてエギッルに本当のことを教えようと言い、彼は飛んで故郷に戻り、それからニズング王に話をするつもりであると言った。そしてもしヴェレントが王が望まぬ返答をしたのであれば、王がエギッルにヴェレントの左の腕を狙って射ぬかせるであろうと言った。彼はその場所には王の息子達で満たされた袋が縛り付けてあるといった。そしてエギッルにそれを撃つように言ったのであった。

78章・Velent flýgr til Sjólands til búa sinna.

ヴェレントは王の城の最も高い塔(hæsta turn)に向かって飛んでいた。王は館に向かい、多くの家来達がそれについて行っていた。王がヴェレントを見つけ、彼にお前は鳥かと訊ねた。ヴェレントは今は自らは鳥であり、人でもあると言い、逃げるつもりであると答えた。そして二度と自分にはかまわないようにと付け加えた。
「陛下の目前に大いなる災いと敵意があるゆえ、王国の半分と王女を譲り渡すように要求する。陛下は殺人の咎で私を国外追放した。閣下は私の奉公に仇を持って償った。これはしっかりと我が心に刻まれている。私は閣下の2人の息子を殺害した。閣下の杯がその証拠だ。食器類の類もみなそうである。そしてその上に閣下に忌まわしきことを行っている。王女は妊娠している。」
ニズング王はエギッルにヴェレントを射抜いて殺害するように命じた。そしてそうするよことによりエギッルの命は保証すると付け加えた。エギッルは矢を引いてヴェレントの左腕を打ち抜いた。血しぶきが飛び、大地を赤く染めた。王と全ての者達は彼が死んだと口々に言ったのであった。
 ヴェレントはシェーランドの故郷に戻り、父のヴァディが所有した農場に留まった。ニズング王は病死し、彼の息子が王国を引き継いだ。彼の名前はオトヴィン(Otvin)といい、彼は信望を集めていた。彼もまた姉妹に優しかった。

79章・Velant sættist við Otvin ok fær konungsdóttur.

時は流れ、王女は男の子を生んだ。彼はヴィズガ(Viðga)と名付けられた。ヴェレントはこの知らせをシェーランドで聞き、ユトランドのオトヴィン王に休戦と和解を申し出て伝言を出した。王はヴェレントとの話し合いを望み、休戦を受けた。ヴェレントはユトランドに行き、暖かく迎え入れられた。オトヴィン王は彼に姉妹を与え、彼の望むままに過ごすように申し出た。ヴェレントはむしろ故郷に帰ることを望んだ。そして彼は王にとって信頼できるものになろうと言った。オトヴィン王は彼の望むままにさせ、友情を約束した。ヴェレントは妻と3歳になる息子のヴィズガとシェーランドの故郷に戻った。王は彼らに財宝とお金を与え、友情をもって別れた。ヴェレントは長い間シェーランドで暮らし、腕のよさとその作品で世界の北半分で名をとどろかせることになったのであった。

(03.04.15)


サガトップに戻る / シズレクのサガのトップに戻る / 次へ